1. 先に結論
| 論点 | この記事で言えること |
|---|---|
| どのくらいの人がなる? | 80歳までに約30%。発症率は50歳未満2.66〜2.83/千人年に対し、50歳以上は5.45〜8.48 |
| いつまでに受診? | 🚨 皮疹が出てから72時間以内が最も適した治療開始時期 |
| 市販の塗り薬は? | 消炎鎮痛の外用薬は推奨度D(行わないよう勧められる) |
| いちばん怖いことは? | 帯状疱疹後神経痛——皮膚が治った後も痛みが残る |
| ワクチンは? | 推奨度A(強く勧められる)。2025年度から定期接種に |
| 誰が公費で受けられる? | 65歳の方。加えて2029年度までの5年間だけ、70・75・80・85・90・95・100歳になる方 |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
ひとつは「発疹が出たら、その日のうちに」。週末だから、様子を見てから——と待つ理由のない病気です。
もうひとつは「対象になる年度を逃さないでください」。5年間の経過措置は、節目の年齢に当たる年度が一度きりです。
2. 帯状疱疹とは——子どもの頃のウイルスが、体に残っています
厚生労働省の説明が簡潔なので、そのまま引用します。
帯状疱疹は、過去に水痘(水ぼうそう)にかかった時に体の中に潜伏した水痘帯状疱疹ウイルスが再活性化することにより、神経に沿って、典型的には体の左右どちらかに帯状に、時に痛みを伴う水疱(水ぶくれ)が出現する病気です。
——厚生労働省「帯状疱疹ワクチン」
ポイントは3つです。
- 新しくもらう病気ではありません。子どもの頃にかかった水ぼうそうのウイルスが、神経のなかにずっと潜んでいます
- 片側だけに出ます。神経に沿って再活性化するので、体の左右どちらかに帯状に出るのが典型的です
- 痛みが先に来ることがあります。発疹が出る直前から、長ければ1週間ほど前から痛むことがあります(前駆痛)
つまり、誰の体のなかにも「もと」があるということです。水ぼうそうにかかったことがあれば、可能性は誰にでもあります。
3. 誰がなるのか——50歳が分かれ目
診療ガイドライン2025が挙げている日本の数字です。
50歳を境に、およそ2倍。これが、ワクチンの対象が50歳以上に設定されている理由でもあります。
なぜ年齢とともに増えるのか。ウイルスを抑え込んでいる免疫の力(細胞性免疫)が、加齢とともに落ちるからだと考えられています。疲労やストレス、ほかの病気や治療で免疫が落ちたときにも起こりやすくなります。
一度なれば安心、ではありません。ガイドラインは再発の危険性を1〜6%、日本の報告では6.41%としています。
ただし単純ヘルペス(口唇ヘルペスなど)のように何度も繰り返すことは通常ありません。帯状疱疹にかかるとウイルスに対する免疫が増強されるためです。
4. 【重要】72時間という目安
この病気でいちばん実際的に大事なのが、この数字です。
抗ウイルス薬の作用機序は、ウイルスの合成阻害であり、ウイルスDNA合成が盛んな発症早期に最も効果を発揮するので、皮疹出現後72時間(3日)以内が最も適した投与開始時期である。
——帯状疱疹診療ガイドライン2025(CQ9)
そして治療そのものの評価は、推奨度A(行うよう強く勧められる)です。
早く始めると何が変わるのか。ガイドラインが挙げているのは次の5つです。
- ウイルス排出期間の短縮
- 新しい皮疹の形成停止
- 皮膚病変の治癒促進
- 疼痛の軽減
- 急性期の生活の質の改善
添付文書上も「皮疹出現後5日以内に開始することが望ましい」とされ、免疫機能が正常な方では7日間の投与が原則です。
週末をまたがないでください。
金曜の夜に発疹に気づいて、月曜まで待つ——それだけで72時間を使い切ってしまいます。
片側に、帯状に、痛みを伴う発疹。この3つが揃ったら、その日のうちに受診してください。皮膚科でも、内科でも構いません。
5. 治療を、推奨度で並べる
ガイドライン2025は、25の臨床疑問すべてにA〜Dの推奨度をつけています。定義はこうです。
| 推奨度 | 意味 |
|---|---|
| A | 行うよう強く勧められる |
| B | 行うよう勧められる |
| C1 | 行うことを考慮してよいが、十分な根拠がない |
| C2 | 根拠がないので勧められない |
| D | 行わないよう勧められる |
この図で気づいていただきたいのは、Aに入っているのが「抗ウイルス薬の飲み薬・点滴」と「ワクチン」の2つだけだということです。痛みへの対処の多くはC1——やってもよいが、確かな根拠までは揃っていないという位置づけです。
だからこそ、72時間以内にウイルスを抑えることの価値が相対的に大きくなります。
6. 【意外】市販の痛み止めの塗り薬は「推奨度D」
ここは知らない方が多いところです。
CQ12 非ステロイド性抗炎症外用薬は急性期帯状疱疹の皮膚病変および疼痛に有効か?
推奨度:D
無効を示すエビデンスがあること、接触皮膚炎の危険性があることより、非ステロイド性抗炎症外用薬は帯状疱疹の皮疹部には使用しないことを強く推奨する。
D は、このガイドラインでいちばん強い否定です。
理由は2つ挙げられています。
- 効かない——二重盲検クロスオーバー試験で、痛みの消失期間はむしろ延びる傾向が見られ、偽薬との有意差はありませんでした
- かぶれる危険がある——接触皮膚炎を起こす可能性があります。すでに傷んでいる皮膚に、さらに負担をかけることになります
痛いところに塗る、というのはごく自然な発想です。責められることではありません。ただ帯状疱疹に関しては、痛みには飲み薬——ガイドラインは「NSAIDs外用薬ではなく、NSAIDsやアセトアミノフェンの全身投与が用いられる」としています。
抗ウイルス薬の「塗り薬」も同じです。CQ11は推奨度C2(根拠がないので勧められない)。効くのは飲み薬と点滴です。
市販薬で様子を見るのではなく、受診して処方を受けてください。ここは頭部白癬の記事と同じ構図で、「塗って済ませられない病気」があるということです。
7. いちばん怖いのは、痛みが残ること
帯状疱疹で最も避けたい結末が、帯状疱疹後神経痛(PHN)です。
合併症の一つに皮膚の症状が治った後にも痛みが残る「帯状疱疹後神経痛」があり、日常生活に支障をきたすこともあります。
——厚生労働省
発疹は治る。見た目はきれいになる。それなのに痛みだけが続く。これが本当につらい合併症です。
ガイドライン2025は、この帯状疱疹後神経痛の治療についてはあえて臨床疑問を設けず、日本ペインクリニック学会の指針に委ねています。それだけ専門的な領域だということでもあります。
だから、この記事でお伝えできるのは予防の話です。
- 急性期に早く治療を始めること——ガイドラインは早期の抗ウイルス薬投与が「疼痛の軽減」に有効としています
- ワクチンを打っておくこと——後述しますが、ワクチンは帯状疱疹そのものだけでなく、帯状疱疹後神経痛にも予防効果が示されています
8. 🚨 顔に出たときは、急いでください
帯状疱疹は出る場所によって、危険度が変わります。とくに顔は要注意です。
| 出る場所 | 注意すること |
|---|---|
| 🚨 額・目のまわり (三叉神経第1枝) | 眼の合併症に注意。皮疹が鼻背部・鼻尖部に及ぶと、結膜炎・角膜炎・ぶどう膜炎などを高率に生じる(Hutchinson徴候)。眼科の受診が必要 |
| 🚨 耳のまわり | Hunt症候群——耳介の帯状疱疹、顔面神経麻痺、内耳障害(めまい・難聴・耳鳴り)の三主徴。顔面神経麻痺が出たら、早急に耳鼻咽喉科へ |
| 下腹部・陰部 (仙髄領域) | 尿が出にくい・便秘といった症状が出ることがあります |
| 広い範囲に散らばる | 神経の支配領域を超えて発疹が出る場合は汎発疹といい、ウイルスが血流に乗っている状態です |
Hunt症候群について、ガイドラインは重要なことを書いています。
三主徴が揃うのは58%である。耳介の帯状疱疹は、19%が顔面神経麻痺に先行し、34%が後発する。
〔…〕後遺症を軽減するには、抗ウイルス薬とステロイドを中心とした治療を早期に行うことが重要である。
三つ揃わないことのほうが多い——つまり「耳に発疹があるだけ」の段階で受診する意味があります。そして顔面神経麻痺は、発疹より後から出ることがある(34%)。
このほか、中枢神経の合併症として無菌性髄膜炎、脳炎、脊髄炎が挙げられています。目の問題については目の健康の記事もあわせてご覧ください。
9. 皮膚に何も出ていないのに痛い、という場合
「片側だけ痛むけれど、発疹はない。帯状疱疹では?」——よくある不安です。
CQ2 片側の痛みのみで帯状疱疹の診断は可能か?
推奨度:C2
片側性の痛みのみで帯状疱疹を診断することは難しく、発疹がない場合は帯状疱疹とする根拠はない。慎重な経過観察を推奨する。
理由が具体的です。ガイドラインは、片側の痛みは「筋肉痛、神経痛、偏頭痛、胆嚢炎、狭心症や心筋梗塞、骨関節や軟部組織の外傷や疲労」など、帯状疱疹以外の多くのありふれた病気でも生じるとしています。
そして実際のデータがあります。帯状疱疹を思わせる急性の片側の痛みで受診した57人を28日間追った研究では、実際に帯状疱疹を発症したのは2人だけでした。
ただし「違う」とも言い切れません。
帯状疱疹には前駆痛があり、皮疹が出る直前から、長ければ1週間ほど前から感じられることがあります。その段階で受診すると発疹がなく、後日出てくる可能性もあります。
だから答えは、決めつけずに経過を見てもらうこと、そして発疹が出たらすぐに受診することです。「あのとき痛かった」と伝えられるよう、覚えておいてください。
なお、発症の予測についても記述があります。血液の抗体価(VZV抗体価)は推奨度C2で、「帯状疱疹の発症や重症化と相関せず、発症を予見する方法として推奨しない」とされています。血液検査で「帯状疱疹になりやすいか」は分かりません。
10. 【核心】2025年から定期接種になりました
ここが、この記事をいま書いている理由です。
厚生労働省の記述をそのまま引用します。
2025年度から、65歳の方などへの帯状疱疹ワクチンの予防接種が、予防接種法に基づく定期接種の対象になりました。
定期接種の対象者
・65歳を迎える方
・60〜64歳で対象となる方(※1)
・2025年度から2029年度までの5年間の経過措置として、その年度内に70、75、80、85、90、95、100歳(※2)となる方も対象となります。
※1:ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方
※2:100歳以上の方については、2025年度に限り全員対象となります。
ご家族の年齢を、一度数えてみてください。
5年間の経過措置は、節目の年齢に当たる年度が一度きりです。逃すと、次の節目は5年後——そのときには経過措置が終わっているかもしれません。
自己負担額は自治体によって異なります。お住まいの市区町村の広報や、健康づくり担当の窓口でご確認ください。円形脱毛症の記事でご紹介したウィッグ助成と同じで、制度はあるのに知られていないことが多い領域です。
11. 2種類のワクチン——どちらを選ぶか
まず、ワクチンそのものの評価から。
CQ22 帯状疱疹ワクチンは帯状疱疹の予防に有効か?
推奨度:A
帯状疱疹ワクチンには生ワクチン、サブユニットワクチンの2種類があるが、両者とも大規模臨床試験での予防効果に関し、強いエビデンスが存在する。帯状疱疹の予防にワクチン接種を強く推奨する。ただし、生ワクチンには接種不適当者がいること、サブユニットワクチンでは副反応の発現率が高いことに注意が必要である。
そのうえで、2種類はかなり性質が違います。厚生労働省の資料から整理します。
| 生ワクチン | 組換えワクチン | |
|---|---|---|
| 接種方法 | 皮下に1回 | 2か月以上あけて筋肉内に2回 |
| 1年後の効果 | 6割程度 | 9割以上 |
| 5年後の効果 | 4割程度 | 9割程度 |
| 10年後の効果 | — | 7割程度 |
| 帯状疱疹後神経痛への効果 (接種後3年時点) | 6割程度 | 9割以上 |
| 主な副反応 | 発赤30%以上、かゆみ・熱感・腫れ・痛み・硬結10%以上 | 接種部位の痛み70%以上、発赤・筋肉痛・疲労30%以上 |
| 免疫が低下している方 | 接種できません | 接種できます |
整理すると、こういう選択になります。
- 効果の高さと持続を取るなら組換えワクチン。ただし2回の接種が必要で、副反応も多めです
- 1回で済ませたい、副反応を抑えたいなら生ワクチン。ただし効果は低めで、免疫が低下している方は受けられません
ガイドラインが挙げている組換えワクチンの臨床試験(ZOE-50/ZOE-70)では、70歳以上のプール解析(計16,596例)で帯状疱疹への有効率91.3%、帯状疱疹後神経痛への有効率88.8%。副反応の持続期間の中央値は3.0日で、重篤な副反応の発現率は偽薬群と差がなかったと報告されています。
副反応の「多さ」の意味。組換えワクチンで接種部位が痛む方は70%以上と、たしかに高い数字です。ただし持続期間の中央値は3日。数日つらいのと、帯状疱疹後神経痛が何か月も続くのとを、天秤にかける話になります。
どちらを選ぶかは、年齢・持病・通院のしやすさ・費用によって変わります。医師と相談して決めてください。厚生労働省も「医師とも相談の上、接種するワクチンをご検討ください」としています。
なお自治体や医療機関によって取り扱うワクチンが異なる場合があるとも書かれています。事前の確認をおすすめします。
12. 受けられない方・注意が必要な方
厚生労働省の記載から、要点をまとめます。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 接種を受けられない方 | 接種液の成分でアナフィラキシーを起こしたことがある方/予防接種が不適当な状態と医師が判断する方 |
| 治ってから受ける | 発熱している/重篤な急性疾患にかかっている |
| 🚨 生ワクキンの場合の追加条件 | 病気や治療によって免疫の低下している方は接種できません |
| 事前に相談が必要な方 | 心臓血管系・腎臓・肝臓・血液の基礎疾患がある方/過去に予防接種後2日以内に発熱や全身の発疹などのアレルギー症状が出た方/けいれんを起こしたことがある方/免疫不全と診断されている方、近親者に先天性免疫不全症の方がいる方 |
| 生ワクチン希望時 | 輸血やガンマグロブリンの注射を受けた方は治療後3か月以上、大量ガンマグロブリン療法を受けた方は6か月以上あけて接種 |
| 組換えワクチン希望時 | 血小板減少症や凝固障害がある方、抗凝固療法を受けている方は注意が必要 |
頻度は不明とされていますが、重い副反応として、生ワクチンではアナフィラキシー・血小板減少性紫斑病・無菌性髄膜炎、組換えワクチンではショック・アナフィラキシー・ギラン・バレー症候群が挙げられています。
血液をサラサラにする薬を飲んでいる方は、必ず申し出てください。組換えワクチンは筋肉注射なので、ここが関係します。
13. 人にうつるのか、という疑問
よく聞かれる質問です。整理しておきます。
帯状疱疹は、子どもの頃のウイルスが自分の体のなかで再活性化する病気です。だから「帯状疱疹が人にうつって帯状疱疹になる」ということはありません。
ただし水疱の中にはウイルスがいます。水ぼうそうにかかったことがない人(とくに乳幼児)や、ワクチンを受けていない人に接触すると、水ぼうそうとしてうつる可能性があります。
ですから、発疹がかさぶたになるまでの間は、
- 水ぼうそうにかかっていない赤ちゃんや小さな子どもとの濃厚な接触を避ける
- 妊娠中の方で水ぼうそうにかかったことがない方との接触を避ける
- 免疫が低下している方との接触に気をつける
- 患部を清潔に保ち、覆っておく
——といった配慮をしてください。詳しくは主治医にご確認ください。
14. 🚨 受診の目安と、上手なかかり方
今日のうちに受診してほしいとき
| サイン | 理由 |
|---|---|
| 🚨 体の片側に、帯状に、痛みを伴う発疹 | 典型的な帯状疱疹。72時間以内が勝負です |
| 🚨 額・目のまわり・鼻すじに発疹 | 眼の合併症の危険。眼科の受診も必要になります |
| 🚨 耳のまわりに発疹/顔が動かしにくい/めまい・難聴・耳鳴り | Hunt症候群の可能性。早急に耳鼻咽喉科へ |
| 🚨 広い範囲に発疹が散らばっている | 汎発疹。ウイルスが血流に乗っている状態です |
| 尿が出にくい・便が出ない(下腹部の発疹に伴って) | 仙髄領域の帯状疱疹による症状のことがあります |
| 皮膚が治った後も痛みが続く | 帯状疱疹後神経痛。我慢せず相談を |
| 持病や治療で免疫が下がっている | 重症化しやすく、入院が必要になることもあります |
診察で伝えること
- 発疹が出たのはいつか——これが最重要です。「昨日の朝」など、できるだけ具体的に
- その前に痛みがあったか(前駆痛)
- 飲んでいる薬(免疫を抑える薬、血液をサラサラにする薬は特に)
- 持病(腎臓の機能は薬の量に関わります)
- 妊娠中・授乳中かどうか
- 家に赤ちゃんや妊娠中の方がいるか
聞いてよい質問
- 「目や耳の合併症は大丈夫ですか」
- 「痛みが残らないようにするために、何ができますか」
- 「家族にうつさないために、何に気をつければいいですか」
- (治った後)「ワクチンは受けたほうがいいですか。私は定期接種の対象ですか」
最後に、2つだけ。
ひとつ目。発疹が出たら、その日のうちに。72時間という数字は、あとから取り返せません。
ふたつ目。ご家族の年齢を数えてみてください。今年度、あるいは来年度に65歳・70歳・75歳・80歳・85歳・90歳・95歳になる方はいませんか。その方は公費で受けられる対象かもしれません。そしてこの5年の経過措置を逃すと、その機会はもう来ません。
この記事を、ご家族に見せていただければと思います。
15. よくある質問
帯状疱疹のワクチンは、誰が公費で受けられますか?
2025年度から、帯状疱疹ワクチンが予防接種法にもとづく定期接種の対象になりました。厚生労働省によると対象は、65歳を迎える方、そして60〜64歳でヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障害があり日常生活がほとんど不可能な方です。
さらに重要なのが経過措置で、2025年度から2029年度までの5年間に限り、その年度内に70、75、80、85、90、95、100歳となる方も対象になります。100歳以上の方は2025年度に限り全員が対象です。
つまり、いま68歳の方は2年後に70歳になる年度が対象年度であり、そこを逃すと次は公費の機会がありません。この経過措置は5年で終わるため、ご自身やご家族の年齢が節目に当たる年度を確認しておく価値があります。自己負担額は自治体によって異なりますので、お住まいの市区町村にご確認ください。
2種類のワクチンは、どちらを選べばよいですか?
生ワクチンと組換えワクチンの2種類があり、性質がかなり違います。厚生労働省の資料によると、予防効果は接種後1年時点で生ワクチンが6割程度、組換えワクチンが9割以上。接種後5年時点では生ワクチンが4割程度、組換えワクチンが9割程度で、組換えワクチンは10年時点でも7割程度とされています。
一方で接種の負担は組換えワクチンのほうが大きく、2か月以上の間隔をあけて筋肉内に2回接種します。生ワクチンは皮下に1回です。副反応も組換えワクチンのほうが多く、接種部位の疼痛が70%以上、発赤・筋肉痛・疲労が30%以上に見られます。また生ワクチンは、病気や治療によって免疫が低下している方は接種できません。
効果の高さを取るか、接種回数と副反応の少なさを取るかという選択になります。診療ガイドラインもワクチン接種自体は推奨度Aとしたうえで、この2点の注意を明記しています。医師と相談して決めてください。
皮膚に何も出ていないのに片側だけ痛みます。帯状疱疹でしょうか?
その時点で帯状疱疹と決めることはできません。診療ガイドライン2025のCQ2は推奨度C2で、「片側性の痛みのみで帯状疱疹を診断することは難しく、発疹がない場合は帯状疱疹とする根拠はない。慎重な経過観察を推奨する」としています。
理由は、片側の痛みが筋肉痛、神経痛、偏頭痛、胆嚢炎、狭心症や心筋梗塞、骨関節や軟部組織の外傷など、ほかの多くの病気でも生じるためです。実際、帯状疱疹を思わせる急性の片側の痛みで受診した57人を28日間追った研究では、帯状疱疹を発症したのは2人だけでした。
ただし帯状疱疹には前駆痛があり、皮疹が出る直前から長ければ1週間ほど前から痛むことがあります。ですから「違う」とも言い切れません。大切なのは、決めつけずに経過を見てもらうことと、発疹が出たらすぐに受診することです。
治療はいつまでに始めればよいですか?
できるだけ早く、目安は72時間以内です。診療ガイドライン2025は抗ウイルス薬の全身投与を推奨度Aとしたうえで、「ウイルスDNA合成が盛んな発症早期に最も効果を発揮するので、皮疹出現後72時間(3日)以内が最も適した投与開始時期である」と明記しています。
添付文書上も皮疹出現後5日以内の開始が望ましいとされ、免疫機能が正常な方では7日間の投与が原則です。早期に始めることで、ウイルスの排出期間の短縮、新しい皮疹の形成停止、皮膚病変の治癒促進、痛みの軽減、急性期の生活の質の改善に有効だと報告されています。
週末だから、様子を見よう——と待つ理由のない病気です。片側に帯状の発疹と痛みが出たら、その日のうちに受診してください。
市販の痛み止めの塗り薬を使ってもいいですか?
帯状疱疹の皮疹には使わないでください。診療ガイドライン2025のCQ12は、非ステロイド性抗炎症外用薬について推奨度D、つまり「行わないよう勧められる」という最も強い否定の評価です。
推奨文は「無効を示すエビデンスがあること、接触皮膚炎の危険性があることより、非ステロイド性抗炎症外用薬は帯状疱疹の皮疹部には使用しないことを強く推奨する」。実際の試験でも、痛みの消失期間がむしろ延びる傾向が見られ、偽薬との有意差はありませんでした。
痛みには塗り薬ではなく、飲み薬のNSAIDsやアセトアミノフェンなどの全身投与が用いられます。市販の消炎鎮痛の塗り薬や湿布を皮疹に貼るのは避け、痛みが強いときは受診して飲み薬を相談してください。なお抗ウイルス薬の塗り薬も推奨度C2で、効くのは飲み薬と点滴です。
参考資料
- 日本皮膚科学会「帯状疱疹診療ガイドライン2025」日本皮膚科学会雑誌 135(3): 527-556, 2025(本記事の推奨度・推奨文・疫学・合併症の記述は、この資料にもとづいています)
- 厚生労働省「帯状疱疹ワクチン」(定期接種の対象者、ワクチンの効果・安全性、接種を受けられない方の記述はこの資料にもとづいています)
- 公益社団法人日本皮膚科学会「一般公開ガイドライン」