1. 先に結論
| よくある思い込み | ガイドラインの記述 |
|---|---|
| 足の裏の硬いものは、うおのめ | 削る前は点状出血が見えず、鶏眼や胼胝に見えることがある |
| イボは年のせい(老人性のイボ) | ウイルス性のイボはHPVの感染症。老人性のイボや首のポツポツとは別 |
| 市販薬は気休め | サリチル酸外用は推奨度A。治癒率49%(偽薬23%) |
| 市販薬を貼り続ければ、いつか治る | 足底のイボでは差がつかなかったという試験も。数週間で変化がなければ受診を |
| 液体窒素なら確実に治る | 有効性は0〜69%と幅がある。「十分な強さ」で行うかどうかで差が出ます |
| 自分で削ればいい | 「いぼ剝ぎ法」は医師が局所麻酔下で行う治療です |
| 放っておけば治る | 偽薬でも約23%は治る一方、GLは「確実に治癒させることのできる治療法はない」とも |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
市販薬を貼る前に、それが本当にイボなのかを確かめてください。そして貼るなら、サリチル酸には推奨度Aという裏づけがあること、数週間で変化がなければ皮膚科へという区切りを持っておくことです。
2. イボは「ウイルスの感染症」です
ウイルス性のイボ(尋常性疣贅)は、ヒトパピローマウイルス(HPV)が皮膚に感染して起こります。ガイドラインによれば、手足にできる典型的なイボの主な原因はHPV2a・27・57型です。
感染の仕組みには特徴があります。
「HPVは健常の上皮には感染しないが,外傷など損傷を受けた微小な部位から侵入し,表皮最下層の基底細胞の中の幹細胞に特異的に感染し,細胞内から核へと取り込まれ潜伏感染状態となる」
つまり、小さな傷が入り口になります。そして感染するのは皮膚のいちばん深い層にある細胞です。この2つが、後で出てくる「治りにくさ」と「再発」の理由になります。
頻度は、日本皮膚科学会の横断的な調査で、皮膚科の外来患者の4.49%がウイルス性疣贅を主訴としていました。同じ調査では、若年者の割合はさらに高く、6〜10歳で23.01%、11〜15歳で17.18%でした。海外の一般人口の調査では、アメリカで0.85%(12〜17歳では1.55%)、イギリスで3.43%(15〜24歳では6.15%)、オランダの学生では33%と幅がありますが、共通しているのは若い人に多いことです。
3.【核心】うおのめ・タコと間違えやすい
この記事でいちばん知っていただきたいのが、この章です。ガイドラインは、診断についてこう書いています。
「疣贅は表面を削る前だと臨床的に点状出血がみえず鶏眼や胼胝にみえることがある.疣贅は皮丘に存在し,皮紋を開大させる.皮丘の開大や敷石状外観を呈すると疣贅の診断は容易である」
鶏眼はうおのめ、胼胝はタコのことです。皮膚科では、表面を少し削って点状の出血が出るかどうか、ダーモスコピー(拡大して観察する道具)で皮膚のしわ(皮紋)が押し広げられているかを見て判断します。
ガイドラインは、鑑別すべきものとして、脂漏性角化症(老人性のイボ)、軟性線維腫(首などにできる柔らかい突起)、日光角化症、ボーエン病などを挙げています。また、老人性のイボ、首のポツポツ、水いぼ(伝染性軟属腫)はHPVの感染症ではないため、この記事の対象から外れます。
| 名前 | 正体 |
|---|---|
| ウイルス性のイボ(尋常性疣贅) | HPVの感染症。傷から入り、基底細胞に感染する |
| うおのめ(鶏眼)・タコ(胼胝) | ウイルスではありません。削る前はイボと見分けにくい |
| 老人性のイボ(脂漏性角化症) | HPVとは関連なし。加齢に伴う良性のできもの |
| 首のポツポツ(軟性線維腫) | HPVとは関連なし。摩擦・紫外線・加齢が原因 |
| 水いぼ(伝染性軟属腫) | 別のウイルス(伝染性軟属腫ウイルス)による、子どもに多い病気 |
茶色いできものをレーザーで取る治療についてはシミ・イボのレーザー治療に書いています。そちらでも、ガイドラインが「鑑別ができない場合は、レーザー治療を安易に行ってはいけない」としていることを紹介しました。まず診断、という点は共通しています。
4. 種類と、できやすい場所
| 病型 | 特徴(ガイドライン 表1より) |
|---|---|
| 尋常性疣贅 | 表面がざらざらした丸い盛り上がり。手足に多い |
| 指状・糸状疣贅 | 顔や首にでき、外向きに伸びる。すぼめた指や糸のように見える |
| 足底疣贅 | 足の裏。外に盛り上がりにくく、ざらざらした角化した面になる |
| モザイク疣贅 | 足底のイボが融合して、敷石のように広がった状態 |
| 爪囲疣贅・爪甲下疣贅 | 爪のまわりや爪の下。治りにくいとされています |
| ミルメシア | 蟻塚のような結節。子どもの足の裏に単発でできることが多い |
| 扁平疣贅 | 青壮年の顔や手の甲に多発する、平らな小さい盛り上がり |
足の裏や爪のまわりのイボは、治療に時間がかかりやすい場所です。ガイドラインも「足底の疣贅などは治療に難渋することも多い」としています。足のトラブルとしては水虫との区別も問題になります(→足白癬・爪白癬)。
5. どこで、どうやってうつるのか
ガイドラインによれば、感染は主にヒトからヒトへの直接の接触ですが、間接的にうつる機会もあります。
「疣贅に罹患した患者からの詳細な問診から,銭湯,温泉施設,プール,ジムなど公共施設でのHPVに感染したケースを見受ける.また,鮮魚や精肉の処理に従事する人では手指の浸軟がHPVの侵入を助長させ,手の疣贅の発症率が高いことが知られており,職業に関連したHPV感染も起こりうる」
ポイントは2章の「傷から入る」です。水仕事やスポーツで皮膚がふやけていたり、小さな傷があったりするところが入り口になります。家族に広がることもあるため、タオルや爪切り、やすりの共用は避けたほうが無難です。
6. 治療法を、推奨度で並べる
ガイドラインは、治療法ごとに推奨度を付けています。
推奨度Aは2つだけ。そのうち1つが、市販もされている貼り薬です。
そのうえで、ガイドラインは結語で率直に書いています。
「疣贅の治療法には様々なものが存在するが,エビデンスの高い治療は少なく,また確実に治癒させることのできる治療法はない.そのため大切なのは1つの治療法を漫然と行わずに,ガイドラインに示した治療を試しながら,個々の患者にとってのベストの治療をしていくことである」
「同じ治療を、効かないまま何か月も続けない」。これは患者側にも当てはまる考え方です。ガイドラインが載せている足底のイボの治療アルゴリズムにも、「3か月程度で評価し、ローテーションする」と書かれています。効かない治療を続けるのではなく、区切って次を試すのが基本です。
7. 液体窒素——「十分な強さ」で行うかどうか
皮膚科でもっとも多く行われているのが、液体窒素でイボを凍らせる治療です。ガイドラインの推奨は明確です。
CQ3「液体窒素凍結療法は有効か?」
推奨文:「疣贅に十分な強さによる液体窒素凍結療法を行うことを推奨する.凍結の強度は部位や病型により調節する」推奨度:A
注目したいのは「十分な強さによる」という条件です。ガイドラインによれば、ランダム化試験での有効性は0〜69%と大きな差がありました。その理由として、凍結の強さや治療間隔が施設によって違うことが挙げられています。強めに凍結した群と弱めの群を比べた試験では、イボの消失率は手指で69%対0%、足底で20%対0%でした。
治療の間隔について、ガイドラインは英国のガイドラインを紹介しています。周囲に凍った輪ができる状態を5〜30秒維持し、2〜3週ごとに、おおよそ6回までを目安とする。日本の総説では、白く硬くなるまで凍らせ、凍結と融解を4〜5回繰り返すとされています。
痛みを伴う治療なので、つらい場合は我慢せず伝えてください。強さの調節や、ほかの治療との組み合わせを相談できます。
8. サリチル酸——市販の貼り薬にも推奨度A
もう1つの推奨度Aが、サリチル酸の外用です。
CQ8「サリチル酸外用は疣贅に有効か?」
推奨文:「疣贅にサリチル酸外用を強く推奨する」推奨度:A
数字も具体的です。333人・5つの臨床試験のメタ解析では、サリチル酸は偽薬の1.6倍の治癒率でした。813人・16試験のデータを集めた解析では、サリチル酸49%に対して偽薬23%です。
足の裏のイボは、どの方法でも差がつきにくい。難しい場所だということです。
日本で使えるのは5%・10%のサリチル酸軟膏と、50%サリチル酸絆創膏です。ガイドラインは「実際には50%サリチル酸絆創膏が使用されているケースが多いと思われる」とし、疣贅表面の角質除去に対して保険適用があることにも触れています。使い方の目安は、3〜5日貼って取り換えることです。
注意点もあります。副作用として化学熱傷の報告があり、周囲の皮膚への刺激も生じます。また、ガイドラインはシステマティックレビューで液体窒素との併用がサリチル酸単独より効果的と報告されていることも紹介しています。市販薬だけで粘るより、皮膚科での治療と組み合わせるほうが早いことがあります。
9. ヨクイニン——飲み薬、ただし年齢で差があります
ヨクイニンは、ハトムギの種皮を除いた成熟種子を乾燥した生薬です。ガイドラインの推奨は次のとおりです。
CQ18「ヨクイニンエキス内服は有効か?」
推奨文:「疣贅にヨクイニン内服療法を行うことを推奨する」推奨度:B
日本の155施設で行われた全国調査では、627例中236例でイボが消失し、511例で改善以上の結果が得られました。副作用は、扁平疣贅も含む914例中13例で、胃の不快感や下痢など軽微なものだけでした。
ただし、知っておいていただきたい数字があります。
大人が飲む場合は、過度に期待しすぎないほうがよさそうです。
飲む量は、成人で1日18錠、または3〜6gを2〜3回に分けてが目安で、24錠までの増量も可能とされています。小児は成人の半量です。保険適用がありますので、皮膚科で処方してもらうこともできます。
10. 勧められない治療と、「何もしない」の意味
ガイドラインは、根拠が乏しい治療についてもはっきり書いています。
| 治療 | ガイドラインの記述 |
|---|---|
| ポドフィリン外用 | 推奨度C2。ランダム化比較試験はなく、「有効性の評価は乏しく治療として推奨されない」 |
| インターフェロン局所注入 | 推奨度C2。システマティックレビューで偽薬との有意な差を認めなかった |
| 暗示療法 | 推奨度C2。良質なエビデンスは殆ど無いとされ、「積極的には推奨できない」 |
| 偽薬(プラセボ) | 平均の治癒率は約23%(報告により5〜73%と幅があります)。実際の薬の効果を比べる目安の数字 |
この「偽薬でも約23%」という数字は、大事な意味を持っています。何もしなくても治る人が一定数いるということ。そして、「これを塗ったら治った」という体験談が、必ずしもその方法の効果を示すわけではない、ということです。民間療法や根拠のはっきりしない商品を長く続ける前に、この数字を思い出してください。
11. 治ったように見えても——再発と経過観察
2章で見たとおり、HPVは皮膚の深い層にある基底細胞に感染します。ガイドラインは、治癒の判定についてこう書いています。
「疣贅の消失は肉眼的所見に加え,ダーモスコピーで皮紋の正常化や血管構造の消失,点状出血点の消失を確認する.HPVは基底細胞に感染しているため,消失したようにみえても再発してくることも多い.そのため,数カ月の経過観察期間をおくか,患者に再発の徴候があればすぐに再診する旨説明しておくことが望ましい」
見た目が平らになっても、それで終わりとは限りません。数か月は様子を見て、また盛り上がってきたら早めに受診する——これがガイドラインの勧める向き合い方です。
ちなみに、液体窒素の治療が不十分だと、再発のときに輪のような形(ドーナツ疣贅・リング疣贅)になることがある、ともガイドラインは書いています。
12. 🚨 受診の目安と、やってはいけないこと
皮膚科の受診をおすすめするとき
・市販薬を数週間使っても変化がない
・数が増えてきた、大きくなってきた
・足の裏で痛い、歩きにくい
・爪のまわりにできた(治りにくい場所です)
・顔や首にできた、家族にうつるのが心配
・そもそもイボかどうか分からない
🚨 自己判断で処理せず、受診してほしいとき
出血する、急に大きくなった、色が濃い・まだらになってきた——ガイドラインは、イボと見分けるべきものとして日光角化症やボーエン病などの皮膚の病気も挙げています。削ったり市販薬を使ったりする前に、皮膚科で確かめてください。
糖尿病や足の血行障害がある方——足の皮膚の処置は、傷が治りにくくなることがあります。自己処理は避けてください。
そして、自分で削る・はさみで切るのはおすすめしません。ガイドラインに載っている「いぼ剝ぎ法」は、医師が局所麻酔をしたうえで行う治療(推奨度C1)です。出血しますし、削った器具を介してウイルスが広がることも心配されます。
最後に、この記事の要点をもう一度。
① ウイルス性のイボはHPVの感染症。小さな傷から入り、皮膚の深い層に感染します
② 削る前はうおのめ・タコと見分けにくい。まず診断から
③ 推奨度Aは液体窒素とサリチル酸外用の2つ。ヨクイニン内服はB
④ 市販の貼り薬には根拠がありますが、足底では差がつきにくい。数週間で区切りを
⑤ 偽薬でも約23%は治ります。「これで治った」という話は慎重に
⑥ 消えたように見えても再発は多い。数か月は様子を見てください
13. よくある質問
市販のイボ・うおのめの薬を貼っていますが、治りません。
サリチル酸の外用は、ガイドラインが「疣贅にサリチル酸外用を強く推奨する」(推奨度A)としている治療です。16の試験・813人のデータをまとめた解析では、サリチル酸で49%、偽薬で23%が治っていました。ただし条件があります。ひとつは、足の裏のイボでは差がつきにくいこと。250人を13週間比べた試験では、手などのイボで液体窒素49%・サリチル酸19%・無治療8%と差がついた一方、足底のイボでは30%・33%・23%で有意な差はありませんでした。もうひとつは、そもそもイボではない可能性です。うおのめやタコ、老人性のイボは別の病気で、貼り薬の対象が違います。数週間使って変化がなければ、自己判断で続けず皮膚科を受診してください。
うおのめだと思っていたのに、イボだと言われました。見分けられますか?
見分けにくいのが普通です。ガイドラインは「疣贅は表面を削る前だと臨床的に点状出血がみえず鶏眼や胼胝にみえることがある」と書いています。鶏眼はうおのめ、胼胝はタコのことです。皮膚科では、表面を少し削って点状の出血が出るか、ダーモスコピー(皮膚を拡大して見る道具)で皮膚のしわ(皮紋)が押し広げられているかを確かめます。イボは皮膚のふくらんだ側(皮丘)にでき、皮紋を開大させるのが特徴です。ウイルスによるイボは他の場所や人にうつる可能性があるのに対し、うおのめ・タコは圧迫による変化なので、対処も変わります。迷ったら、削る前の状態で皮膚科を受診してください。
自分で削ったり、やすりでこすったりしてもいいですか?
おすすめしません。ガイドラインにも「いぼ剝ぎ法」という治療が載っていますが、これは医師が局所麻酔をしたうえで、眼科用のはさみでイボを完全に剝離する方法で、推奨度はC1(選択肢の1つ)です。自分で削ると出血しますし、削った器具や手指を介してウイルスが他の場所に広がることも心配されます。とくに糖尿病や足の血行障害がある方は、市販薬の説明書でも自己判断での使用を避け、医師に相談するよう求められています。厚い角質が邪魔で薬が届かない場合は、皮膚科で角質を削ってから治療を行います。ガイドラインの足底疣贅のアルゴリズムでも、角質除去と液体窒素凍結療法が組み合わされています。
ヨクイニンは大人が飲んでも効きますか?
ガイドラインは「疣贅にヨクイニン内服療法を行うことを推奨する」(推奨度B)としています。日本の155施設で行われた全国調査では、627例中236例でイボが消失し、511例で改善以上の結果でした。副作用は扁平疣贅も含む914例中13例で、胃の不快感や下痢など軽いものだけでした。ただし、年齢によって有効率が違うという報告があります。乳幼児71%、学童74%、青年57%に対し、成人は20%でした。大人では過度に期待しないほうがよい、ということです。ヨクイニンはハトムギの成熟種子を使った生薬で、保険適用があります。飲む量は成人で1日18錠、または3〜6gを2〜3回に分けるのが目安です。市販薬もありますが、飲み合わせや体質もあるため、ほかの薬を飲んでいる方や妊娠中の方は、購入時に薬剤師に相談してください。
放っておいても、そのうち治りますか?
自然に治ることはあります。ガイドラインが治療の効果を比べる基準として挙げている偽薬の治癒率は平均で約23%で、これは「何もしなくても治る人がいる」ことの目安にもなります。ただし、ガイドラインは結語で「確実に治癒させることのできる治療法はない」と書くほど、治りにくいこともある病気です。とくに足の裏や爪のまわりのイボは治療に難渋しやすいとされています。また、ウイルスは皮膚の深い層(基底細胞)に感染しているため、消えたように見えても再発してくることが多いとされ、数か月の経過観察が勧められています。数が増えてきた、痛みで歩きにくい、家族にうつるのが心配——こうした状況なら、待つより受診をおすすめします。
参考にした主な資料
- 日本皮膚科学会 尋常性疣贅診療ガイドライン策定委員会「尋常性疣贅診療ガイドライン2019(第1版)」日本皮膚科学会雑誌 129(6): 1265-1292, 2019(病型分類、感染経路、診断とダーモスコピー、治療一覧と推奨度、液体窒素凍結療法・サリチル酸外用・ヨクイニン内服の各CQ、治癒判定と再発)
- 日本皮膚科学会「診療ガイドライン一覧」