1. 先に結論
| よくある思い込み | 資料の記述 |
|---|---|
| 日本でも早産は多い | 日本の早産は5.7%で世界で最も少ない部類。諸外国は5〜18% |
| やせているほうが安産 | もともとのやせた体格と妊娠中の体重増加が少ないことは、早産の原因に挙げられている |
| 妊娠したら仕事は辞めるべき | 仕事は続けて構わない。ただし重労働・長時間労働・ストレスのかかる仕事は早産のリスクを高める |
| 早く生まれたら助からない | 日本の新生児医療は世界でもトップレベル。早産児の多くが生存して退院できる。ただしハンディキャップが残る赤ちゃんもいる |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
自分の状況を正確に理解し、妊娠する前から体調を整えておくこと(プレコンセプションケア)で、早産のリスクを減らせる可能性があります。妊娠中は適度な食事と有酸素運動で体重を上手にコントロールし、仕事中によくお腹がはるときは、主治医や勤め先に相談してください。
2. 早産とは——22週から36週の出産
日本産科婦人科学会によると、妊娠37週から41週までの出産を正期産、妊娠22週から36週までの出産を早産といいます。早産で生まれた赤ちゃんを早産児と呼びます。
- 日本における早産の割合は5.7%で、世界で最も少ない部類に入る
- 諸外国の早産の割合は5〜18%で、世界中で毎年100万人の早産児が亡くなっている
なお、妊娠22週より前に妊娠が終わることは流産と呼ばれます(→流産と不育症の記事)。
3.【核心】早産の原因になるもの
学会は、早産の原因をこれまでの病気(既往症)と現在の病気(現症)に分けて挙げています。
| 分類 | 早産の原因として挙げられているもの |
|---|---|
| これまでの病気・体格 | 早産、後期の流産、子宮の手術(円錐切除術・広汎子宮頸部摘出術)、自己免疫疾患(全身性エリテマトーデス・関節リウマチ・抗リン脂質抗体症候群)、糖尿病、子宮内膜症・子宮腺筋症、もともとのやせた体格 |
| 現在の妊娠 | 多胎(双子や三つ子)の妊娠、子宮の出口(子宮頸管)が短い、腟や子宮頸管・尿路などの感染症、妊娠中の体重増加が少ない |
学会は、自分の状況を正確に理解し、妊娠する前から体調を整えておくこと(プレコンセプションケア)で、早産のリスクを減らせる可能性があるとしています。
一方で、妊娠中に妊娠高血圧症候群・前置胎盤・常位胎盤早期剥離などの深刻な病気になり、妊娠を続けるのが難しい場合は、早産せざるを得ないケースもあります。
やせた体格と月経・妊娠の関係についてはダイエットで生理が止まったらの記事、糖尿病と妊娠については妊娠糖尿病の記事でも書いています。
4. 早産で生まれた赤ちゃん
日本の新生児医療は世界でもトップレベルにあります。
- 早産児の体重の目安は、妊娠22週で500g、26週で800g、30週で1,500g、34週で2,200gぐらい
- 赤ちゃんの肺や脳の機能が成熟するのは、妊娠34週頃といわれる
- 34週未満で生まれた赤ちゃんは、新生児の集中治療室(NICU)で、呼吸や循環、栄養のサポートを受けながら発育する
- 早産児の多くが生存して退院できるようになっている。ただ、ハンディキャップが残り、退院後も医療的ケアが必要な赤ちゃんがいることも事実
5. 切迫早産と、前期破水
学会によると、お腹のはりや痛み(子宮収縮)が規則的にあり、子宮の出口(子宮頸管)も開き始めるなど、早産の危険性がさし迫っている状態を切迫早産といいます。
切迫早産と前後して、赤ちゃんを包んでいる膜(卵膜)が破れ、羊水が流れ出てしまうこともあります(前期破水)。いったん破水すると、腟の細菌が子宮内へ感染したり、羊水が減って赤ちゃんが圧迫されたりするので、短期間で早産してしまうことも多いとされています。
6. 切迫早産の治療
| 状況 | 学会が紹介している治療 |
|---|---|
| お腹のはり | はりを抑える目的で、子宮収縮抑制薬を使うことがある |
| 早産の危険性が高い(収縮が頻回、子宮の出口が2cm以上開くなど) | 入院したうえで、リトドリン塩酸塩や硫酸マグネシウムの点滴。手の震え、動悸、全身のだるさが起こるが、徐々に慣れてくることが多い |
| 34週未満で早産しそう | お母さんに副腎皮質ステロイドを注射することがある。赤ちゃんの肺が成熟し、脳の出血を防ぐといわれる |
| 前期破水 | 赤ちゃんへ感染が及ばないよう、お母さんに抗菌薬。34週以降なら、あえて子宮収縮抑制薬を使わず、感染に注意しながら慎重に様子を見ることも多い |
7. 子宮頸管無力症
子宮の出口にあたる子宮頸管は、ふだんは硬く閉じていて、出産のときだけ開いて赤ちゃんの通り道になります。学会によると、妊娠の中期に、お腹のはりや出血といった症状がないまま子宮頸管が静かに開き、赤ちゃんを包む袋(胎胞)が出てくる状態を子宮頸管無力症といいます。
- 原因はよく分かっていないが、もともとの体質的な問題に加えて、以前の出産や子宮の手術が影響している可能性がある
- 以前の妊娠で子宮頸管無力症と診断された方は、妊娠12週すぎに子宮頸管をしばっておく(予防的子宮頸管縫縮術)ことで、流産や早産を未然に防げる可能性がある
- 妊娠中期に子宮頸管が短くなって胎胞が出てきた場合にも、しばることがある(治療的子宮頸管縫縮術)。ただし、いつも上手くいくとは限らず、手術中の破水や、糸で子宮頸管を傷つけることもある。お腹のはりが強い、出血が多い場合は手術を避けざるを得ない
学会は、子宮頸管無力症と診断されたら、手術するのか慎重に様子を見るのか、主治医とよく相談するよう勧めています。
8.【内科医の視点】体重と、働き方
学会が最後に書いているのは、日々の生活のことです。
- 妊娠中は、適度な食事とスポーツ(有酸素運動)で、体重を上手にコントロールする
- 仕事は続けて構わないが、重労働や長時間労働、ストレスのかかる仕事は早産のリスクを高めることが分かっている
- 仕事中によくお腹がはるときは、主治医や勤め先の上司・労務管理担当者に相談する
- 安静や勤務の緩和が必要な場合は、厚生労働省の母性健康管理指導事項連絡カードも活用できる
内科医として付け加えると、学会が早産の原因に挙げているもののうち、もともとのやせた体格と妊娠中の体重増加が少ないことは、日々の食事とかかわる項目です。
9. 相談したいとき
資料にあるもの
・仕事中によくお腹がはる(主治医や勤め先の上司・労務管理担当者に相談。母性健康管理指導事項連絡カード)
・以前の妊娠で子宮頸管無力症と診断された(妊娠12週すぎの予防的子宮頸管縫縮術を主治医と相談)
・早産や後期の流産、子宮の手術、自己免疫疾患、糖尿病などがあり、これから妊娠を考えている(妊娠前から体調を整える)
最後に、この記事の要点をもう一度。
① 早産は妊娠22〜36週の出産。日本は5.7%と世界で最も少ない部類
② 原因には既往の病気、多胎、子宮頸管が短い、感染症、やせた体格・体重増加が少ないこと
③ 肺や脳の機能が成熟するのは34週頃。それより前ならNICUで発育を支える
④ 切迫早産は子宮収縮抑制薬や入院・点滴。34週未満ならステロイドで赤ちゃんの肺を育てる
⑤ 重労働・長時間労働・ストレスは早産のリスク。お腹がよくはるなら職場と主治医に相談
10. よくある質問
早産とは、何週の出産のことですか?
日本産科婦人科学会によると、妊娠22週から36週までの間の出産を早産といいます。妊娠37週から41週までの出産は正期産です。日本における早産の割合は5.7%で、世界で最も少ない部類に入ります。
早産の原因は何ですか?
学会は、これまでの病気として、早産や後期の流産、子宮の手術、自己免疫疾患、糖尿病、子宮内膜症・子宮腺筋症、もともとのやせた体格を、現在の妊娠では、多胎妊娠、子宮頸管が短い、腟や子宮頸管・尿路などの感染症、妊娠中の体重増加が少ないことを挙げています。妊娠前から体調を整えておくことで、早産のリスクを減らせる可能性があるとしています。
切迫早産とは、どんな状態ですか?
お腹のはりや痛み(子宮収縮)が規則的にあり、子宮の出口も開き始めるなど、早産の危険性がさし迫っている状態です。治療として子宮収縮抑制薬を使うことがあり、危険性が高い場合は入院して点滴治療が行われます。34週未満で早産しそうな場合は、赤ちゃんの肺を成熟させるために副腎皮質ステロイドを注射することがあります。
早産で生まれた赤ちゃんは、どのくらいの大きさですか?
学会によると、体重の目安は妊娠22週で500g、26週で800g、30週で1,500g、34週で2,200gぐらいです。肺や脳の機能が成熟するのは34週頃で、それより早く生まれた赤ちゃんはNICUでサポートを受けながら発育します。日本の新生児医療は世界でもトップレベルで、早産児の多くが生存して退院できるようになっています。
妊娠中も仕事を続けて大丈夫ですか?
学会は、仕事は続けて構わないとしています。ただし、重労働や長時間労働、ストレスのかかる仕事は早産のリスクを高めることが分かっています。仕事中によくお腹がはるときは、主治医や勤め先の上司・労務管理担当者に相談し、厚生労働省の母性健康管理指導事項連絡カードも活用してください。
子宮頸管無力症とは何ですか?
妊娠の中期に、お腹のはりや出血といった症状がないまま子宮頸管が静かに開き、赤ちゃんを包む袋が出てくる状態です。以前の妊娠で診断された方は、妊娠12週すぎに子宮頸管をしばっておくことで、流産や早産を未然に防げる可能性があります。手術するか様子を見るかは、主治医とよく相談してください。
参考にした主な資料
- 日本産科婦人科学会「早産・切迫早産」(2025年1月30日更新)