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からだの変化

前置胎盤とは
——痛みのない出血に注意。妊娠中期に疑われても、ほとんどは解消する

妊婦健診で、胎盤の位置が低い、前置胎盤かもしれないと言われた方に向けた記事です。
日本産科婦人科学会によると、前置胎盤は、胎盤が子宮の出口(子宮口)を覆ってしまう状態で、頻度はすべての分娩の1%弱です。分娩は帝王切開が原則です。
ただし、妊娠の早い時期に前置胎盤が疑われても、妊娠週数が進むと最終的に「前置胎盤でない」と診断されることがほとんどです。

執筆:なぎ先生(内科医) 公開:2026年10月28日 読了:約8分

1. 先に結論

よくある思い込み資料の記述
健診で疑われたら、そのまま前置胎盤妊娠週数が進むと子宮の下部も伸びるので、最終的に胎盤が子宮口から離れて「前置胎盤でない」と診断されることがほとんど
痛くなければ出血は心配ない妊娠28週頃を過ぎると、痛みもないのに急に出血する「警告出血」が出現する。約半数が経験し、ときに大量出血になることもある
赤ちゃんが出血している警告出血はお母さんの出血。ただし大出血になると、胎盤への血液や酸素の供給が低下し、母児ともに危険な状態になる
状況によっては経腟分娩もできる現在は、すべてのタイプの前置胎盤で帝王切開が選択される

この記事でいちばんお伝えしたいこと。

日本産科婦人科学会は、妊婦健診で前置胎盤が疑われている方は、少しでも性器出血を認めたら、直ちにかかりつけの産婦人科へ連絡するよう呼びかけています。

2. どんな状態か——胎盤が子宮の出口を塞ぐ

日本産科婦人科学会によると、胎盤は子宮の中で赤ちゃん(胎児)に栄養や酸素を届けていて、子宮の内面(内膜)に付着しています。この胎盤が通常より低い位置に付着し、子宮の出口(子宮口)を覆ってしまうと、前置胎盤という状態になります。

3. なりやすい人

学会によると、前置胎盤の原因はよく分かっていませんが、いくつかのリスク因子が報告されています。

学会は、最近はこれらのリスクを抱える妊婦さんが増えており、前置胎盤の頻度も増加しているとしています。子宮内膜症については子宮内膜症の記事、子宮筋腫と子宮腺筋症については子宮筋腫・子宮腺筋症の記事、体外受精については不妊症の記事で書いています。

4.【核心】痛みのない「警告出血」

学会は、前置胎盤の症状について次のように書いています。

「最初は無症状で、妊婦健診の経腟超音波検査でたまたま発見される方がほとんどです。ただ、妊娠28週頃を過ぎると、痛みもないのに急に出血する、いわゆる警告出血が出現するようになります。」(日本産科婦人科学会「前置胎盤」)

5. 診断——妊娠32週がひとつの区切り

学会によると、経腟超音波検査で、胎盤が子宮口を塞ぐ位置に見えると、前置胎盤が疑われます。

前置胎盤——妊娠週数ごとの流れ 日本産科婦人科学会「前置胎盤」をもとに整理 妊娠中期 28週頃〜 32週 33〜34週 37〜38週 疑われたら経腟超音波検査を繰り返し、胎盤の位置を確認。 ほとんどは胎盤が子宮口から離れ、「前置胎盤でない」と診断される 痛みのない「警告出血」のリスクが上がる (前置胎盤の約半数が経験) この時点で解消していなければ、それ以降に離れることは難しい。 診断を確定し、早産期でも対応できる施設で管理 大量出血に備えて「自己血貯血」を行うこともある 警告出血がなければ、予定帝王切開を計画 出典:日本産科婦人科学会「前置胎盤」(更新日 2025年1月30日)をもとに作図

警告出血を繰り返す場合は、妊娠10か月を待たずに、早い時期で帝王切開をせざるをえないことも多いとされています。

6. 4つの分類

学会は、胎盤と子宮口の位置関係による分類を示しています。

名称胎盤の状態子宮口を覆う胎盤の端から内子宮口までの距離
全前置胎盤開いた内子宮口の全部を覆う2cm以上
部分前置胎盤開いた内子宮口の一部を覆う2cm未満
辺縁前置胎盤開いた内子宮口の端に達するほぼ0cm
低置胎盤開いた内子宮口を覆っていない胎盤の端と内子宮口との最短距離が2cm以内

出典:日本産科婦人科学会「産科婦人科用語集・用語解説集 改訂第4版」一部改変(学会「前置胎盤」のページより)

現在は、すべてのタイプの前置胎盤で帝王切開による分娩が選択されます。胎盤の位置が低めの低置胎盤の方は、経腟分娩と帝王切開のどちらにするか慎重な判断が必要なので、担当医とよく相談してくださいと、学会は書いています。

7. 癒着胎盤を合併することがある

学会によると、赤ちゃんが産まれると、胎盤も自然に剥がれて子宮から出てきます。このとき胎盤がうまく剥がれないのが癒着胎盤で、出産時の大量出血(産科危機的出血)の危険性が非常に高い状態です。

学会は、日本の産科医療は世界有数のレベルにあり、「前置癒着胎盤イコール生命の危機」というわけではないものの、注意深い管理が必要だとしています。

8. 妊娠中の管理と、出産の時期

場面資料の記述
どこで管理するか妊娠32週までに診断を確定し、早産の時期でも帝王切開や新生児の管理ができる施設で、妊婦健診と分娩管理を受ける
入院警告出血があったら入院し、出産まで入院を続けることが多い。警告出血がない方も、帝王切開に備えて前もって入院することがある
自己血貯血大量出血に備えて、妊娠33〜34週頃から自分の血液を貯めておくことがある
出産の時期警告出血がなければ、妊娠37〜38週に予定帝王切開。警告出血を繰り返す方は、早い時期に帝王切開をせざるをえないことも多い
時期の決め方赤ちゃんの成熟を待っている間に大量出血が起こると母児に危険が迫るため、産婦人科医・小児科医・麻酔科医が相談しながら、最適と思われる時期を決める

学会は、前置胎盤には帝王切開以外の選択肢がなく、早産期の帝王切開や帝王切開時子宮摘出など、難しい判断を迫られるケースも多いとして、担当医や家族とよく相談するよう呼びかけています。早産については早産の記事で書いています。

9. すぐ連絡したいとき

資料にあるもの

・妊婦健診で前置胎盤が疑われていて、少しでも性器出血があった(直ちにかかりつけの産婦人科へ)

・痛みがないのに、急に出血した(警告出血のことがある)

最後に、この記事の要点をもう一度。

① 前置胎盤は、胎盤が子宮口を覆う状態。すべての分娩の1%弱で、分娩は帝王切開

② 妊娠中期に疑われても、ほとんどは解消する。32週までに解消しなければ、本格的に対応

③ 28週頃から、痛みのない警告出血に注意。約半数が経験する

④ 前置胎盤の5〜10%で癒着胎盤を合併する

⑤ 警告出血がなければ37〜38週に予定帝王切開。出血を繰り返せば早まることも

10. よくある質問

前置胎盤とは、どんな状態ですか?

日本産科婦人科学会によると、胎盤が通常より低い位置に付着し、子宮の出口(子宮口)を覆ってしまう状態です。頻度はすべての分娩の1%弱といわれています。胎盤が子宮の出口を塞いでいるので経腟分娩はできず、分娩は帝王切開が原則です。

妊婦健診で前置胎盤かもしれないと言われました。このまま前置胎盤ですか?

学会によると、妊娠の早い時期に疑われても、妊娠週数が進むと子宮の下部も伸びるので、最終的に「前置胎盤でない」と診断されることがほとんどです。経腟超音波検査を繰り返して胎盤の位置を確認し、子宮口から離れたことを確認できたら、再び塞ぐ心配はありません。妊娠32週までに解消していなければ、それ以降に離れることは難しいとされています。

警告出血とは何ですか?

学会によると、妊娠28週頃を過ぎると、痛みもないのに急に出血することがあり、これを警告出血といいます。最初は少量でも、1〜2週おきに出血を繰り返すうちに量が増え、ときに大量出血になることもあります。前置胎盤の方の約半数が経験します。少しでも出血したら、直ちにかかりつけの産婦人科へ連絡してください。

どんな人がなりやすいのですか?

学会によると、原因はよく分かっていませんが、年齢が高い、喫煙している、分娩回数が多い、多胎妊娠、以前に子宮の手術(帝王切開、流産・妊娠中絶、子宮筋腫核出術)を受けた、体外受精や顕微授精で妊娠した、子宮内膜症・子宮腺筋症を合併しているといった方は、リスクが高いといわれています。

癒着胎盤とは何ですか?

学会によると、出産後に胎盤がうまく剥がれない状態で、出産時の大量出血の危険性が非常に高い状態です。前置胎盤の5〜10%で合併するといわれ、多くの場合、帝王切開のあとに子宮を摘出する手術が必要になります。

出産はいつになりますか?

学会によると、警告出血がなければ、妊娠37〜38週に予定帝王切開を計画します。警告出血を繰り返す方は、早い時期に帝王切開をせざるをえないことも多いです。産婦人科医・小児科医・麻酔科医が、前置胎盤の状況や妊娠週数を相談しながら時期を決めます。

参考にした主な資料

凪
なぎ先生

内科系の臨床に15年ほど携わる医師。生活習慣病・ホルモン・栄養の相談を日常的に受けています。中立性の担保と診療継続のため、ペンネームで執筆しています。→ 運営者について

この記事は健康情報の提供を目的としたものであり、診断・治療に代わるものではありません。本文で紹介した内容は、日本産科婦人科学会の一般向け解説「前置胎盤」にもとづくもので、公開時点の情報です。妊娠中に出血があった場合は、量にかかわらず、かかりつけの産婦人科へすぐに連絡してください。掲載内容の誤りにお気づきの際はお問い合わせからお知らせください。