当サイトの情報は健康情報の提供を目的としたものであり、診断・治療に代わるものではありません
MEDICALLY REVIEWED BEAUTY & HEALTH
体型と代謝

ダイエットで生理が止まったら
——体重減少性無月経。止まっているのは生理だけではありません

体重が増えないように食事を減らしていたら、部活や運動を頑張っていたら、生理がしばらく来ない——そんな方に向けた記事です。
日本産科婦人科学会の説明資料によると、体重が十分でないと、脳が卵巣への指示をお休みするため月経が止まります。女性ホルモンが少ない状態が続くと、寒がり・便秘・抜け毛、そして骨が弱くなる(骨粗しょう症)など、将来に関わる問題も起きます。
資料は、まず以前の体重に戻すことを考えるよう勧めています。

執筆:なぎ先生(内科医) 公開:2026年10月26日 読了:約8分

1. 先に結論

よくある思い込み資料の記述
生理が来ないだけで、ほかは元気女性ホルモンが少ない状態が続くと、寒がり・便秘・抜け毛・不妊症・骨粗しょう症など将来に関わる問題も起きる
やせていなければ止まらない運動に見合うエネルギーが足りないと、やせていなくても月経が不順になったり止まったりする
骨粗しょう症は高齢者の病気骨量を増やせるのは思春期。10代の過ごし方が一生を左右する
妊娠を考えるまでは、ほうっておいていい妊娠前のやせは、早産や低出生体重児などのリスクに関わる。そのままにしておかない

この記事でいちばんお伝えしたいこと。

体重が減って生理が止まったら、まず以前の体重に戻すことを考えてください。運動を頑張っている方は、運動量と食事のバランスを見直しましょう。どのくらい食べればよいかは、医師・看護師・栄養士に相談できます。食事や体重のことが頭から離れないときは、早めに医師に相談してください。

2. 生理が止まるとき、体で起きていること

日本産科婦人科学会の説明資料(①体重減少性無月経とは)は、仕組みを次のように説明しています。

体重が減って生理が止まる仕組み 日本産科婦人科学会「やせと無月経」①をもとに整理 ふだん 脳 卵巣に指示 卵子を育てる 女性ホルモン 月経が来る 体重減少・ストレス 脳 指示をお休み 月経・妊娠を止める 女性ホルモン低下 月経が止まる →→→ →→→ 出典:日本産科婦人科学会 女性ヘルスケア委員会「やせと無月経 ①体重減少性無月経とは」をもとに作図

激しい運動や体重減少などで、月経が止まってしまうことがあります。

3.【核心】止まっているのは、生理だけではない

資料は、月経が止まっているだけでなく、体ではさまざまなことが起きていると書いています。女性ホルモンの分泌が少ない状態が続くことで、次のような問題が起きます。

いま起きやすいこと将来に関わること
寒がりになる
便秘になる
髪が抜けやすくなる
不妊症になる
妊娠しても赤ちゃんが小さくなる
骨が弱くなり骨折しやすくなる(骨粗しょう症)

資料(④将来への影響)は、女性ホルモンは月経だけのためにあるわけではなく、健康に大切なさまざまな役割を担っていて、とくに骨を作ったり壊したりする骨代謝のバランスを整えていると説明しています。

不妊症の原因や検査、治療の流れについては不妊症の記事で書いています。

4. やせていなくても、運動のしすぎで止まる

資料(②運動による月経不順)は、食事からとるエネルギーから運動で使うエネルギーを引いたものを利用可能エネルギーと呼んでいます。体を維持するためのこのエネルギーが足りなくなると、やせていなくても、女性ホルモンの分泌を促すホルモンが低下し、月経が不順になったり無月経になったりします。初経が来ない場合もあります。

資料は、運動パフォーマンスの低下や低骨量を避けるために、ピルなどのホルモン製剤で出血を起こすのではなく、自分自身のホルモン分泌を増やして月経を起こす必要があるとしています。そのために、次の指針を参考にエネルギー摂取量を増やし、とくに炭水化物を中心としたエネルギーバランスが重要だとしています。

指針利用可能エネルギー不足を改善するための目安
アメリカスポーツ医学会最近減少した体重を回復させる
成人:BMI18.5以上を目指す
思春期:標準体重の90%以上を目指す
最低2000kcal/日以上を摂取する
エネルギー摂取量を200〜600kcal/日増やす(2000kcal消費している場合)
国際オリンピック委員会エネルギー摂取量を300〜600kcal/日増やす

自然な月経が戻ったあと、月経痛や月経血でスポーツに影響が出るのが不安な場合は、婦人科で月経のコントロールを相談するよう資料は勧めています。

「スポーツを頑張るあなたにとってカロリーは敵じゃない、身体を作る大切な味方です。」(日本産科婦人科学会「やせと無月経 ②運動による月経不順」)

5. 骨への影響——骨量を増やせるのは思春期

資料(④将来への影響)によると、女性ホルモンが低下すると骨量が減りやすくなります。閉経を迎えると骨量が減りやすくなり、多くの女性が骨粗しょう症になるといわれています。骨粗しょう症は、骨がもろくなり、転ぶくらいの軽い力で骨折しやすくなる状態です。

年齢と骨量——思春期にためた分が、将来を左右する 日本産科婦人科学会「やせと無月経」④の図をもとに模式化 骨粗しょう症域 18歳ごろ(最大骨量) 閉経 年齢 骨量 思春期に十分な骨量をためた場合 思春期に十分ためられなかった場合 出典:日本産科婦人科学会 女性ヘルスケア委員会「やせと無月経 ④将来への影響」をもとに作図(線の形は模式)

思春期に十分な骨量を獲得できないと、将来、骨粗しょう症になるリスクが早まります。

資料は、骨密度検査で現在の状態を知ることができるので、まず医師に相談するよう勧めています。そして、骨粗しょう症の治療薬はたくさんあるものの、適切な食事、栄養(ビタミンD、ビタミンK、カルシウム)と、それに伴う体重や月経の回復こそが、骨密度を改善するいちばんの治療になるとしています。骨密度の検査については骨密度検査の記事で書いています。

また資料は、骨折は高齢になってからとは限らないとも書いています。産後、とくに女性ホルモンが低下する授乳期は、赤ちゃんにカルシウムを与えるために骨が壊れやすくなります。背骨がいくつも骨折してしまう妊娠授乳関連骨粗しょう症という病気もあり、予防として、ふだんから妊娠・出産・授乳に耐えられる体づくりが大切だとしています。

6. 妊娠・出産への影響

資料(③妊娠・出産への影響)は、赤ちゃんが欲しくなるまではほうっておいて大丈夫か、という問いに対し、お母さんの妊娠前のやせは、周産期の合併症のリスクや赤ちゃんの出生体重にも影響するので、そのままにしておかないでと呼びかけています。

妊娠前のやせと関連するとされるリスク
お母さん切迫早産/早産(37週より早く生まれる)/妊娠中の貧血
妊娠中に適切な体重増加が得られにくい(妊娠前にやせている人は、妊娠中12〜15kgの体重増加が必要)
赤ちゃん低出生体重児(満期産で2500g未満)/胎児発育不全(お腹の中で大きくなれない)
生まれたあと呼吸が不安定になる、低血糖になりやすい
栄養をため込みやすい体質になり、将来、肥満・糖尿病・高血圧・脂質異常症・メタボリック症候群などのリスクが高くなることがあると報告されている

資料は、妊活や不妊治療の前に、妊娠を考えられる体とコンディションを作っていこうとして、次の3つを挙げています。

参考として、こども家庭庁の妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針が紹介されています。

7. 摂食障害(摂食症)かもしれないとき

資料(①)は、食事がとれない、体重のことが頭から離れないといった場合は、摂食障害(摂食症)の可能性があり、専門的な治療が必要かもしれないので医師に相談するよう勧めています。

資料(⑤摂食障害(摂食症)とは)によると、摂食障害は、極端な食事の制限、過食、自分で吐く、運動のしすぎといった行動と、体の見え方のゆがみ、やせへの過度なあこがれなどの心の面で定義されます。ダイエットだけでなく、胃腸炎や食欲不振がきっかけで、低体重から回復しないことでも陥ります。

タイプ資料の記述
神経性やせ症やせ(BMI18.5未満)が特徴。低体重・低栄養なのに、自分ではその重さを認識しづらい。食事を制限するタイプと、過食したあと吐いたり下剤・利尿剤を使ったりするタイプがある。10〜19歳に多く、90%以上が女性
神経性過食症食事のコントロールが難しくなり、頻繁に過食する。体重増加を打ち消すために吐く、下剤・利尿剤を使うなどの行動がみられる。体重が正常なことも多く、周囲から気づかれにくい。20〜29歳に多く、やはり90%以上が女性。神経性やせ症から移行することも珍しくない
むちゃ食い症3つのタイプの一つ(多くを占めるのは上の2つ)

神経性やせ症の重症度はBMIで決められ、BMI17以上が軽症、16〜16.99が中等症、15〜15.99が重度、15未満が最重度です。資料に挙げられている体の変化には、無月経、脱毛、筋力低下、むくみ、低血圧、脈が遅くなる、便秘、色素沈着(神経性やせ症)や、吐きダコ、虫歯、唾液腺の腫れ(神経性過食症)などがあります。

資料には、相談先として摂食障害情報ポータルサイトと摂食障害全国支援センターの相談ほっとラインが紹介されています。

8.【内科医の視点】まず体重を戻す、が近道

資料が繰り返し伝えているのは、体重とエネルギーを戻すことです。体重が減って月経が止まっている場合は、まず以前の体重に戻すことを考え、スポーツを頑張っている方は運動量と食事のバランスを見直す。脳が月経を起こしても大丈夫と判断してしばらくすると、月経も戻る可能性が高いとされています。

骨についても、資料は治療薬より先に、食事・栄養と体重や月経の回復をいちばんの治療に挙げています。やせすぎの健康への影響全体については、女性の低体重・低栄養症候群(FUS)の記事でも書いています。

9. 相談・受診したいとき

医師に相談したいとき(資料にあるもの)

・体重が減って生理が止まっている(どのくらい食べればよいかは、医師・看護師・栄養士に相談できる)

・食事がとれない、体重のことが頭から離れない(摂食障害の可能性)

・骨粗しょう症が心配(骨密度検査で今の状態を知ることができる)

・月経が戻ったあと、月経痛や月経血でスポーツへの影響が心配(婦人科で月経のコントロールを相談)

最後に、この記事の要点をもう一度。

① 体重が十分でないと、脳が卵巣への指示をお休みして月経が止まる

② 女性ホルモンが少ないままだと、寒がり・便秘・抜け毛・不妊症・骨粗しょう症など将来にも響く

③ やせていなくても、運動に見合うエネルギーが足りないと止まる(女性アスリートの三主徴)

④ 骨量を増やせるのは思春期。妊娠前のやせは早産・低出生体重児のリスクに関わる

⑤ まず以前の体重に戻す。食事や体重が頭から離れないときは、早めに医師に相談

10. よくある質問

ダイエットで生理が止まるのはなぜですか?

日本産科婦人科学会の説明資料によると、ふだんは脳から卵巣に、卵子を育てて女性ホルモンを分泌するよう指示が出ています。体重が十分でないと、月経や妊娠が起きないようにするため、脳からの卵巣への指示をお休みします。そのため月経が止まります。激しい運動やストレスでも起こることがあります。

生理が止まっても、ほうっておいて大丈夫ですか?

資料は、女性ホルモンの分泌が少ない状態が続くと、寒がりになる、便秘になる、髪が抜けやすくなる、不妊症になる、妊娠しても赤ちゃんが小さくなる、骨が弱くなり骨折しやすくなる(骨粗しょう症)など、将来に関わる問題も起きるとしています。妊娠前のやせは早産や低出生体重児などのリスクにも関わるため、そのままにしておかないよう呼びかけています。

生理を戻すには、どうすればいいですか?

資料は、体重が減って月経が止まっている場合は、まず以前の体重に戻すことを考えるよう勧めています。スポーツを頑張っている方は、運動量と食事のバランスを見直します。脳が月経を起こしても大丈夫と判断してしばらくすると、月経も戻る可能性が高いとされています。どのくらいの食事が必要かは、医師・看護師・栄養士に相談してください。

やせていなくても、運動で生理が止まることはありますか?

あります。資料によると、食事からとるエネルギーから運動で使うエネルギーを引いた利用可能エネルギーが足りなくなると、やせていなくても、女性ホルモンの分泌を促すホルモンが低下し、月経が不順になったり止まったりします。陸上長距離などの持久系競技や、新体操などの審美系競技で多くみられ、10代からのエネルギー不足は疲労骨折や将来の骨粗しょう症の原因になります。

ピルで生理を起こせば、それでいいのでは?

運動による無月経について、資料は、運動パフォーマンスの低下や低骨量を避けるためにも、ピルなどのホルモン製剤で出血を起こすのではなく、自分自身のホルモン分泌を増やして月経を起こす必要があるとしています。そのために、エネルギー摂取量を増やし、とくに炭水化物を中心としたエネルギーバランスが重要だとしています。

摂食障害(摂食症)かもしれないと思ったら?

資料は、食事がとれない、体重のことが頭から離れないといった場合は摂食障害の可能性があり、専門的な治療が必要かもしれないので、まずは近くの医師に相談するよう勧めています。治療は体の治療と心の治療の両輪で行い、将来の不妊症や骨粗鬆症などにつながることもあるため、できるだけ早めの治療が必要とされています。

参考にした主な資料

凪
なぎ先生

内科系の臨床に15年ほど携わる医師。生活習慣病・ホルモン・栄養の相談を日常的に受けています。中立性の担保と診療継続のため、ペンネームで執筆しています。→ 運営者について

この記事は健康情報の提供を目的としたものであり、診断・治療に代わるものではありません。本文で紹介した内容は、日本産科婦人科学会 女性ヘルスケア委員会の説明資料「やせと無月経」(2024年11月)にもとづくもので、公開時点の情報です。必要な食事の量や受診の必要性は、年齢や体の状態によって異なるため、医師・看護師・栄養士に相談してください。掲載内容の誤りにお気づきの際はお問い合わせからお知らせください。