1. 先に結論
| よくある思い込み | 資料の記述 |
|---|---|
| 筋腫があると言われたら手術 | 筋腫が小さく、症状もない場合は治療しないで経過観察(日本産科婦人科学会) |
| 筋腫はがんになる | 子宮筋腫は良性の腫瘍で、がんではない。筋腫が悪性化して肉腫になるわけではない(日本内分泌学会) |
| 筋腫は大きいほど症状が強い | 子宮の内側にできた粘膜下筋腫は小さくても症状が強い。外側の漿膜下筋腫は大きくても症状が出にくい |
| 生理痛が重いのは体質 | 年々強くなる月経痛や月経量の多さは、子宮腺筋症のことも。月経がある間は進行していく |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
経血が多い、貧血を指摘された、生理痛が年々重くなる——こうした症状があれば、婦人科で内診と超音波検査を受けてください。治療は、症状や年齢、妊娠の希望によって、経過観察・薬・手術から選びます。
2.【核心】子宮筋腫と子宮腺筋症の違い
「子宮筋腫が「しこり(腫瘍)」なのに対し、子宮腺筋症は「子宮筋層全体が厚く硬くなる病気」です。」(日本内分泌学会「子宮腺筋症」)
子宮腺筋症は、しばしば子宮筋腫や子宮内膜の肥厚を合併するとされています。
3. 子宮筋腫:できた場所で症状が変わる
「子宮筋腫の主な症状は、月経の出血量が異常に多い過多月経と、それに伴う鉄欠乏性貧血、月経痛(月経困難症)です。」(日本産科婦人科学会「子宮筋腫」)
ほかにも、月経以外の出血、腰痛、トイレが近い(頻尿)、不妊症などの症状があります。日本内分泌学会は、筋腫が大きければお腹の張り・下腹痛・頻尿・便秘などの圧迫症状が出るとしています。
| できた場所 | 症状の出かた(日本産科婦人科学会) |
|---|---|
| 粘膜下筋腫(子宮の内側) | 小さくても症状が強く、過多月経や不妊になりやすい |
| 筋層内筋腫(子宮の筋肉の中) | 大きさや数によって症状が出る |
| 漿膜下筋腫(子宮の外側) | 大きくても症状は出にくい |
そのため、治療が必要かどうかは、筋腫の場所や症状の強さで変わるとされています。検査は、まず内診と超音波検査。大きい場合や手術を考える場合はMRI検査を追加します。巨大な子宮筋腫や変性した子宮筋腫は、悪性の子宮肉腫と見分けにくいことがあり、巨大子宮筋腫の約0.5%が子宮肉腫といわれています。
4. 子宮腺筋症:40歳代にピーク
子宮腺筋症は、子宮の内側を覆う子宮内膜に似た組織が、子宮の筋肉の中にできる病気です。日本内分泌学会は、次のように説明しています。
- 性成熟期から更年期にかけて起こり、40歳代にピーク。出産経験のある人に多い
- 掻爬手術、帝王切開、筋腫の手術など、子宮内膜に触れる子宮の手術を受けた人に多いという報告もある
- 症状は、月経痛が強い、月経の量が多い、不正出血、月経時以外の腹痛や腰痛。不妊症や流産・早産の原因になることも
- エストロゲンで進行・悪化するため、月経がある限り進行していく
生理痛がだんだん重くなっている方は、生理痛のセルフケアの記事もあわせて読んでください。子宮内膜症については、同じ記事で触れています。
5. 治療の選択肢
日本産科婦人科学会は、子宮筋腫が小さく、症状もない場合は、治療しないで経過を観察するとしています。治療が必要な場合は、薬によるホルモン治療と手術が選択肢になります。
| 治療 | 資料の記述 |
|---|---|
| 症状を抑える薬 | 過多月経に止血剤や低用量ピル(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬)、貧血に鉄剤。子宮腺筋症では鎮痛剤・鎮痙剤も |
| 月経を止める治療 (偽閉経療法) | GnRHの作動薬(注射)や拮抗薬(飲み薬)でエストロゲンを強く抑え、筋腫を小さくする。更年期のような症状や骨密度の減少のおそれがあり、治療期間は半年以内。やめると元のサイズに戻るため、手術の直前や、閉経が近い人で閉経を早める目的(逃げ込み療法)で使われることが多い |
| 子宮内の器具 | 黄体ホルモンを放出する子宮内システム。筋腫が巨大な場合や粘膜下筋腫では効果的でないこともある |
| 手術 | 子宮全体を取る子宮全摘術と、筋腫だけを取る筋腫核出術。核出術は、妊娠・出産を希望する人や子宮を残したい人が対象で、数年後に再発することもある。開腹・腹腔鏡・子宮鏡・ロボット支援など |
| その他 | 子宮内膜焼灼術、子宮動脈塞栓術、MRIガイド下集束超音波療法(日本内分泌学会) |
子宮腺筋症の根本的な治療は子宮の摘出で、妊娠を希望する場合は病変部分を切除する手術が選ばれることもありますが、日本内分泌学会は、その有用性は十分に証明されていないとしています。どの治療を選ぶかは、症状の強さ、年齢、妊娠の希望などをふまえて婦人科医と相談してください。更年期と骨密度については骨粗鬆症の記事で書いています。
6. 閉経すると、どうなるか
「閉経すれば子宮筋腫は縮小し、関連する様々な症状は消失あるいは改善されますが、筋腫が消えることはありません。」(日本内分泌学会「子宮筋腫」)
子宮腺筋症も、閉経すれば病気の勢いは止まり、症状は消えるか軽くなるとされています。一方で、日本内分泌学会は、閉経後なのに筋腫が急速に大きくなった場合や、MRIの所見が典型的な筋腫と違う場合は、子宮肉腫という悪性の腫瘍を疑うとしています。ただし、筋腫が悪性化して肉腫になるわけではないとも書いています。
閉経が近い40代後半の方にとって、「閉経まで待つ」のか「治療をする」のかは大切な選択です。更年期の治療については更年期の治療の選択肢で書いています。
7.【内科医の視点】過多月経と貧血
内科医として、ここはぜひ知っておいてほしいところです。子宮筋腫の主な症状として、日本産科婦人科学会は過多月経と、それに伴う鉄欠乏性貧血を挙げています。日本内分泌学会も、月経量が多くなり、月経期間が長引いて貧血になる場合があるとしています。
貧血と言われた方は、月経の量や期間についても主治医に伝え、必要なら婦人科で確かめてもらってください。鉄不足についてはフェリチンと鉄欠乏の記事、月経以外の出血については40代からの不正出血の記事で書いています。
8. 受診したほうがよいとき
婦人科を受診したいとき
・経血が多い、月経期間が長引く
・健診で貧血を指摘された
・月経痛が強い、年々重くなる、月経時以外にも腹痛や腰痛がある
・月経以外の出血がある
・お腹の張り、頻尿、便秘が続く(筋腫による圧迫のことも)
・閉経後なのに筋腫が大きくなっていると言われた
最後に、この記事の要点をもう一度。
① 子宮筋腫は30歳以上の女性の3割前後にみられる良性の腫瘍。主な症状は過多月経・貧血・月経痛
② 子宮の内側の筋腫は小さくても症状が強い。症状がなければ経過観察
③ 子宮腺筋症は40歳代にピーク。月経がある間は進行する
④ 治療は薬(止血剤・低用量ピル・鉄剤・偽閉経療法など)と手術から選ぶ
⑤ 閉経すると症状は消えるか軽くなる。閉経後に大きくなる場合は注意
9. よくある質問
子宮筋腫があると言われました。手術が必要ですか?
日本産科婦人科学会によると、子宮筋腫のサイズが小さく、症状もない場合は、治療しないで経過を観察します。治療が必要な場合は、薬によるホルモン治療と手術が選択肢になります。治療が必要かどうかは、筋腫の場所や症状の強さによって変わります。
子宮筋腫と子宮腺筋症はどう違うのですか?
日本内分泌学会によると、子宮筋腫は子宮の筋肉から生じる「しこり(腫瘍)」であるのに対し、子宮腺筋症は子宮内膜に似た組織が子宮の筋肉の中にでき、子宮の筋層全体が厚く硬くなる病気です。子宮腺筋症は40歳代にピークがあり、しばしば子宮筋腫を合併します。
子宮筋腫はがんになりますか?
日本産科婦人科学会によると、子宮筋腫は良性の腫瘍で、がんではありません。日本内分泌学会は、筋腫が悪性化して肉腫になるわけではないとしたうえで、閉経後なのに筋腫が急速に大きくなった場合などは、子宮肉腫という悪性の腫瘍を疑うとしています。巨大子宮筋腫の約0.5%が子宮肉腫といわれています。
閉経すれば筋腫は消えますか?
日本内分泌学会によると、閉経すれば子宮筋腫は縮小し、関連するさまざまな症状は消えるか軽くなりますが、筋腫が消えることはありません。子宮腺筋症も、閉経すれば病気の勢いが止まり、症状は消えるか軽くなるとされています。
子宮筋腫で貧血になることはありますか?
日本産科婦人科学会は、子宮筋腫の主な症状として、月経の出血量が異常に多い過多月経と、それに伴う鉄欠乏性貧血を挙げています。治療として、過多月経に止血剤や低用量ピル、貧血に鉄剤を使うことがあります。貧血を指摘された方は、月経の量や期間についても主治医に伝えてください。