1. 先に結論
| よくある思い込み | 資料の記述 |
|---|---|
| 赤い血でなければ出血ではない | 時間がたつと茶色、わずかな出血だと黄色やピンク色に見えることもある |
| 子宮がん検診を受けているから大丈夫 | 自治体の検診は子宮頸がんの検診。子宮体がんには、指針で定められた検診がない |
| 更年期なら出血が乱れるのは当たり前 | 学会は更年期や閉経後の不正な出血は産婦人科を受診するよう呼びかけている |
| 一度検査して異常なしなら安心 | 1回の検査では異常が見つからないこともある。くり返すなら検査をくり返して比べる |
| がんだったら、もう手遅れ | 子宮体がんは、病気が子宮にとどまっていれば80%以上が治癒する |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
40代以降の不正出血、とくに更年期や閉経後の出血は、量が少なくても、茶色いおりもの程度でも、産婦人科で一度診てもらってください。子宮体がんは不正出血というわかりやすいサインが出やすいがんで、その段階で見つければ治りやすいがんです。
2. 「不正出血」には、茶色やピンクも含まれる
この記事で主に使う資料は、日本産科婦人科学会の一般向けページ「異常子宮出血と不正性器出血」「子宮体がん」(いずれも2025年1月更新)と、国立がん研究センター がん情報サービスの「子宮体がん(子宮内膜がん)」です。
まず、不正出血とは何か。日本産科婦人科学会は、子宮の中から起こる不正な出血を「異常子宮出血」と呼んでいます。月経の量が異常に多い過多月経や、排卵の前後に起こる月経と月経の間の出血も、ここに含まれます。
見た目についても、こう書かれています。
「新しい血液は赤色ですが、時間が経つと茶色くなることもあります。また、わずかな出血だと黄色やピンク色に見えることもあります。」
国立がん研究センターも、子宮体がんの出血について「出血の程度には、おりものに血が混ざり、褐色になるだけのものもあります。」としています。「茶色いおりもの」も出血のサインになりうるということです。
もう一つ、学会はこうも書いています。「自分ではどこから出血しているか分からないことも多く、実際は膀胱や尿道、肛門から出血していることもあります。」。下着についた血が、子宮からなのか、尿や便に関係するのか、自分では区別がつかないこともあります。だからこそ、診察で確かめることに意味があります。
3. 不正出血の原因は、子宮の中と外に分かれる
日本産科婦人科学会は、不正出血の原因を次のように整理しています。
学会のページは、妊娠中の出血や子宮の入り口(子宮頸部)からの出血を異常子宮出血と区別し、「不正性器出血」として扱っています。
良性の原因として挙げられているのは、子宮筋腫や子宮内膜ポリープ、うまく排卵できないことによる出血などです。腟の側では、学会が「加齢による腟の炎症」として挙げる萎縮性腟炎も原因になります。子宮筋腫については、生理痛のセルフケアの記事で、月経痛・過多月経との関係を書いています。
卵巣の腫れや卵巣がんの気づきにくいサインは卵巣の腫れ・卵巣がんで整理しています。
学会がこう書いていることも、覚えておいてください。
「異常子宮出血には、重大な病気が潜んでいることもあるので注意が必要です。」
4.【核心】40代からは、子宮体がんを意識する
子宮のがんには、子宮の入り口にできる子宮頸がんと、子宮の奥(子宮体部)の内側の膜にできる子宮体がんがあります。子宮体がんのほとんどは子宮内膜から発生するので、子宮内膜がんとも呼ばれます。
日本産科婦人科学会は、子宮体がんについてこう書いています。
「日本では、毎年約18,000人の女性が子宮体がんにかかり、約2,500人の方が亡くなっています。婦人科のがんで最も多いのが子宮体がんで、今も年々増加しています。」
そして、症状について。
「子宮体がんで最も多い自覚症状は、不正な性器出血(異常子宮出血)です。子宮体がんにかかりやすい年代は、子宮頸がんと比べて高齢なことが多いので、とくに更年期や閉経後に不正な出血を認めた場合は、産婦人科を受診してください。」
学会は、更年期や閉経を迎える前でも、もともと月経不順だったり、乳がんを患ったことがある方は要注意としています。国立がん研究センターも、「月経ではない期間や閉経後に出血がある場合は注意が必要です。」としています。進行すると、下腹部の痛み、性交時の痛み、腰痛、脚のむくみなどが出ることもあります。
前の段階についても触れておきます。子宮内膜が正常より厚く増えた状態を子宮内膜増殖症といい、細胞の形に異常(異型)がみられるものは子宮内膜異型増殖症と呼ばれます。国立がん研究センターは、これを「子宮体がんの前がん病変(がんになる前の状態)とされています。」としています。
そして、学会の解説はこう結ばれています。
日本産科婦人科学会「子宮体がん」より
「子宮体がん(子宮内膜がん)は、治りにくいタイプのがんではありません。病気が子宮にとどまっていれば、80%以上の方が治癒します。不正な性器出血(異常子宮出血)を認めることが多いので、その初期症状を見逃さないことが重要です。」
子宮体がんは、不正出血というサインが出ることが多いがんです。そのサインを「更年期だから」で見送らないことが、この記事でいちばん伝えたいことです。
5. 子宮がん検診を受けていても、安心できない理由
「毎年、子宮がん検診を受けているから大丈夫」と思っている方は、少なくありません。ここに落とし穴があります。
自治体などで受ける子宮がん検診は、子宮の入り口(子宮頸部)をブラシなどでこすって細胞を調べる、子宮頸がんの検診です。では、子宮体がんはどうか。国立がん研究センターはこう書いています。
「しかし、子宮体がんについては、現在は指針として定められているがん検診はありません。不正出血など気になる症状がある場合には、婦人科を早めに受診することをお勧めします。」
| 子宮頸がん | 子宮体がん | |
|---|---|---|
| できる場所 | 子宮の入り口(子宮頸部) | 子宮の奥の内膜(子宮体部) |
| かかる人 | 年に約1万人。30〜40代がピーク | 年に約18,000人。婦人科のがんで最多。頸がんより高齢 |
| 主な原因 | ほとんどがHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染 | エストロゲンに長くさらされること など |
| 国の指針の検診 | あり(20歳を過ぎたら) | なし |
| 見つけるきっかけ | 初期は症状がほとんどない → 検診 | 最も多い症状は不正出血 → 症状が出たら受診 |
つまり、子宮頸がんは「症状がなくても検診で」、子宮体がんは「症状があったら受診で」見つける、という役割分担になっています。子宮頸がん検診を受けていることは大切ですが、それで子宮体がんまで調べたことにはなりません。がん検診全体の考え方はがん検診の記事で整理しています。
国立がん研究センターは、人間ドックなどで任意に検診を受ける場合は検診のメリットとデメリットを理解した上で受けるよう書いています。なお、子宮体がんには、診断に使えるような特定の腫瘍マーカー(血液検査)もありません。
6.【内科医の視点】肥満・糖尿病・高血圧とのつながり
内科医として、ここはぜひ知っておいてほしいところです。子宮体がんのなりやすさには、生活習慣病が関わっています。
子宮内膜は、女性ホルモンのエストロゲンで厚くなり、黄体ホルモンで増えすぎないよう抑えられています。このバランスが乱れて、エストロゲンの働きが続くと、内膜の細胞が増え続け、子宮内膜増殖症を経てがんが発生すると考えられています。両方の資料が挙げているなりやすい人を、まとめるとこうなります。
| なりやすさに関わること | 資料 |
|---|---|
| 出産したことがない | 産科婦人科学会・国立がん研究センター |
| 肥満 | 両方(国立がん研究センターは「脂肪細胞がエストロゲンを産生する」と説明) |
| 月経不順がある | 産科婦人科学会 |
| 閉経が遅い | 国立がん研究センター |
| 卵胞ホルモン製剤だけを飲み続けている | 産科婦人科学会 |
| 糖尿病 | 両方 |
| 高血圧 | 産科婦人科学会 |
| 近親者に乳がん・大腸がんの人がいる | 産科婦人科学会 |
| 遺伝性の腫瘍(リンチ症候群) | 国立がん研究センター |
肥満・糖尿病・高血圧——どれも、健康診断で毎年チェックしている項目です。健診で血糖値や血圧を指摘されている方、体重が増えてきた方は、不正出血に一段と敏感になってください。血糖値の読み方は糖尿病予備軍、血圧は家庭血圧の記事で書いています。
ホルモン補充療法(HRT)を考えている方へ。日本産科婦人科学会は更年期障害のページで、HRTでは通常エストロゲンと黄体ホルモンを組み合わせて使うとし、その理由を「エストロゲン投与による、子宮内膜増殖症や子宮内膜がんのリスクを減らすためです。」と説明しています(子宮を摘出した方は、黄体ホルモンを併用する必要はありません)。HRTの選び方は更年期の治療の記事にまとめています。
なお、国立がん研究センターは、がん全般の予防には禁煙、飲酒を控える、バランスのよい食事、体を動かす、適正な体形を維持することなどが有効としたうえで、「子宮体がん全般については、現在のところ、特有の予防法は確立されていません。」と書いています。だからこそ、症状が出たときにすぐ受診することが大切になります。
7. 更年期の生理の乱れと、どう見分ける?
40代の方がいちばん迷うのが、ここだと思います。更年期には、生理そのものが乱れるからです。日本産科婦人科学会は、更年期の月経の変化をこう説明しています。
「更年期にさしかかり、卵巣の機能が低下し始めると、月経周期は短くなります。卵巣の機能がさらに低下すると、今度は月経周期が長くなり、最終的に閉経を迎えます。」
閉経の平均年齢は50歳前後で、早い人は40代前半、遅い人は50代後半と個人差が大きく、月経が1年以上止まっていることを確認してから、振り返って閉経と診断します。
周期が短くなったり長くなったりするのは、更年期によくある変化です。ただし、それが本当にホルモンの乱れによるものか、子宮筋腫やポリープ、子宮体がんによるものかは、自分では見分けられません。学会が「とくに更年期や閉経後」と名指しで受診を呼びかけているのは、まさにこの時期に子宮体がんが増え、しかも生理の乱れにまぎれやすいからです。
| こんなとき | 考えてほしいこと |
|---|---|
| 閉経後(1年以上生理がない)の出血 | 少量でも、茶色いおりもの程度でも、産婦人科へ |
| 生理と生理の間に出血する | くり返すなら産婦人科へ。異常子宮出血に含まれる |
| 生理の量が急に増えた、長引く | 子宮筋腫などのことがある。貧血にも注意(→鉄不足の記事) |
| 周期が短く・長くなってきた | 更年期の変化のことが多い。ただしもともと月経不順な方は要注意 |
8. 産婦人科では、どんな検査をする?
受診をためらう理由の一つが、「どんな検査をされるのかわからない」ことだと思います。国立がん研究センターと日本産科婦人科学会の説明をまとめます。
| 検査 | 中身 |
|---|---|
| 内診 | 医師が子宮の位置や大きさ、形、硬さなどを調べる |
| 経腟超音波検査 | 腟に器具を入れて子宮の中を見る。子宮体がんでは子宮内膜が厚くなることが多い。ただし初期のがんだと検出できない可能性もある |
| 子宮内膜細胞診 | 細い器具を子宮の中に入れ、内膜を軽くこすって細胞を調べる。チクッとした痛みを感じる場合があり、検査後に数日間、おりものが茶色っぽくなったり出血したりすることがある |
| 組織診 | 細胞診で異常があった場合などに、内膜の組織を採ってがんかどうかを確定する |
日本産科婦人科学会は、「子宮体がんの検査に特別な準備は必要なく、超音波や細胞・組織の検査が、割と簡単に受けられます。」と書いています。国立がん研究センターは、検査が初めて、痛みを感じやすいなど気になることがあれば検査の前の問診で伝えること、検査中に強い痛みや違和感があれば我慢せずに伝えることを勧めています。
もう一つ、学会の大事な一文があります。
「病気によって検査はさまざまで、1回の検査だけでは異常が見つからないかもしれません。その場合も、検査を繰り返しながら、以前との違いを比較することがとても大切です。できれば同じ産婦人科で、経時的な変化をみてもらうのが良いと思います。」
「前に診てもらって異常なしだったから」と、くり返す出血を放っておかないでください。同じ産婦人科で、前回と比べてもらうことに意味があります。
9. 子宮頸がんの症状も知っておく
子宮頸がんは、日本で年に約1万人の女性がかかり、30〜40代が発症のピークです。日本産科婦人科学会は、症状についてこう書いています。
「初期の子宮頸がんでは、自覚症状がほとんどありません。もし子宮頸がんが進行すると、おりもの(帯下)の異常や、月経以外の不正な性器出血、性交時の性器出血、下腹部の痛みなどを自覚するようになります。これらの症状がある方は、早めに産婦人科を受診してください。」
初期には症状がほとんどないからこそ、子宮頸がんは検診で見つけることが大切です。学会は「20歳を過ぎたら、不正性器出血といった症状がなくても、国や自治体が定めた方法で子宮頸がん検診を受けましょう。」と呼びかけています。そして、症状がある方は、検診の時期を待たずに受診してください。
子宮頸がん検診の細胞診とHPV検査の違いは子宮頸がん検診で書いています。
10. 🚨 受診したほうがよいとき
日本産科婦人科学会は、こう書いています。
「異常子宮出血や不正性器出血を繰り返す場合、何らかの病気や初期のがんが潜んでいることがあるので、必ずお近くの産婦人科を受診してください。」
産婦人科で診てもらいたいとき(資料の記述から)
・閉経後に出血があった(茶色いおりもの程度でも)
・更年期に、生理以外の出血がある
・不正出血をくり返す
・性交のときに出血する、おりものの様子がおかしい
・生理の量が急に増えた、貧血を指摘された
・もともと月経不順、乳がんの治療歴がある、肥満・糖尿病・高血圧があるなど、子宮体がんになりやすい条件がある方の出血
国立がん研究センターの言葉を借りれば、「少しでも気になる症状があるときには、ためらわずに婦人科を受診しましょう。」。大げさだと思う必要はありません。
最後に、この記事の要点をもう一度。
① 不正出血には、茶色・黄色・ピンクに見えるものも含まれる
② 原因の多くは良性だが、子宮体がんは婦人科で最も多いがんで、最も多い症状が不正出血
③ 子宮がん検診は子宮頸がんの検診。子宮体がんには指針で定められた検診がない
④ 更年期や閉経後の出血は、生理の乱れと決めつけず産婦人科へ
⑤ 肥満・糖尿病・高血圧は、子宮体がんのなりやすさにも関わる
⑥ 子宮にとどまっていれば80%以上が治癒。くり返す出血は、同じ産婦人科で比べてもらう
11. よくある質問
茶色いおりものも、不正出血ですか?
その可能性があります。日本産科婦人科学会は、新しい血液は赤色だが時間が経つと茶色くなることもあり、わずかな出血だと黄色やピンク色に見えることもあるとしています。国立がん研究センターも、子宮体がんの出血には、おりものに血が混ざり褐色になるだけのものもあるとしています。とくに更年期や閉経後にくり返す場合は、産婦人科を受診してください。
子宮がん検診で異常なしと言われました。子宮体がんも大丈夫ですか?
自治体などの子宮がん検診は、子宮の入り口の細胞を調べる子宮頸がんの検診です。国立がん研究センターによると、子宮体がんについては、現在は指針として定められているがん検診はありません。不正出血など気になる症状がある場合は、検診の結果にかかわらず、婦人科を早めに受診してください。
更年期で生理が不規則です。出血のたびに受診が必要ですか?
日本産科婦人科学会によると、更年期には月経周期が短くなったあと長くなり、最終的に閉経を迎えます。周期の変化は更年期によくあることですが、学会は、子宮体がんにかかりやすい年代であることから、とくに更年期や閉経後に不正な出血を認めた場合は産婦人科を受診するよう呼びかけています。生理以外の出血がある、出血をくり返す、量が急に増えたといった場合は、一度受診してください。
子宮体がんになりやすいのは、どんな人ですか?
日本産科婦人科学会と国立がん研究センターは、出産したことがない、肥満、月経不順がある、閉経が遅い、卵胞ホルモン製剤だけを服用し続けている、糖尿病、高血圧、近親者に乳がんや大腸がんの患者がいる、遺伝性の腫瘍(リンチ症候群)などを挙げています。国立がん研究センターは、子宮体がん特有の予防法は現在のところ確立されていないとしています。
子宮体がんの検査は痛いですか?
国立がん研究センターによると、子宮内膜の細胞を採る細胞診では、個人差はありますがチクッとした痛みを感じる場合があり、検査のあと数日間、おりものが茶色っぽくなったり出血したりすることがあります。日本産科婦人科学会は、子宮体がんの検査に特別な準備は必要なく、超音波や細胞・組織の検査が割と簡単に受けられるとしています。痛みが心配な方は、検査の前の問診で伝えておきましょう。