1. 先に結論
| よくある思い込み | 資料の記述 |
|---|---|
| 卵巣がんなら、早くから痛みや出血がある | 初期の段階では自覚症状がほとんどない。見つかったときには進行していることが多い |
| お腹が出てきたのは太っただけ | 服のウエストがきつくなる、下腹部のしこり、食欲がないといった症状がきっかけで見つかることがある |
| 卵巣が腫れていたら、がん | 卵巣腫瘍には良性・境界悪性・悪性がある。嚢胞性(液体がたまったもの)なら良性のことが多い |
| チョコレート嚢胞は良性だから放っておける | 良性だが約1%ががん化するといわれ、定期的な通院が必要 |
| 子宮がん検診を受けていれば卵巣も安心 | 卵巣がんには、国の指針で定められた検診はない |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
卵巣がんは、気づきにくいがんです。お腹の張り・ウエストのきつさ・下腹部の違和感が続くときは、太ったせいと決めつけず婦人科へ。そして突然の激しい腹痛は、ただちに受診してください。
2. 卵巣の腫れには、良性・境界悪性・悪性がある
この記事で使う資料は、日本産科婦人科学会の一般向けページ「卵巣の腫瘍とがん」(2025年1月更新)と、国立がん研究センター がん情報サービスの「卵巣がん・卵管がん・腹膜がん」(2026年3月確認)です。
日本産科婦人科学会は、卵巣についてこう説明しています。
「卵巣はもともと2~3cmぐらいの大きさで、子宮の左右に一つずつあります。卵巣にできた腫瘍を卵巣腫瘍といい、大きいものだと10~20cmを超えることもあります。」
そして、卵巣腫瘍は腫瘍細胞の悪さによって、①良性、②境界悪性(良性と悪性の中間)、③悪性(がん)の3つに分けられます。卵巣がんのうち最も多いのは上皮性の卵巣がんで、約9割を占めます。国立がん研究センターは、卵巣がん・卵管がん・腹膜がんは、発生する場所は違ってもがん細胞の性質や治療法が共通していることから、まとめて扱われることが多いとしています。
そのうえで、日本産科婦人科学会は卵巣がんについてこう書いています。
「日本では、毎年約13,000人の女性が卵巣がんにかかり、約5,000人の方が亡くなっています。卵巣がんは、半数以上の患者さんが進行癌で発見されることもあって、子宮頸がんや子宮体がんと比べて悪性度が高く」
学会は、予後が悪い(経過がよくない)がんだと続けています。
3.【核心】気づきにくいサイン
なぜ進行してから見つかることが多いのか。国立がん研究センターはこう説明しています。
「卵巣がん・卵管がん・腹膜がんの自覚症状は、初期の段階ではほとんどありません。服のウエストがきつくなる、下腹部にしこりが触れる、食欲がなくなったなどの症状をきっかけに受診し、卵巣がん・卵管がん・腹膜がんであることがわかる場合もあります。」
日本産科婦人科学会も、腫瘍が大きくなったりお腹に水(腹水)がたまったりすると、お腹が張って苦しい、下腹部が痛い、尿意が近くなるといった症状が出てくるとしています。
40〜50代では、お腹まわりが太くなったことを年齢や体重のせいだと考えがちです。ウエストのきつさやお腹の張りが続く場合は、婦人科で確かめてください。国立がん研究センターは「このような症状に気付いたときには、早めに婦人科を受診しましょう。」としています。
4. チョコレート嚢胞は、定期的な通院を
40〜50代の女性に知っておいてほしいのが、卵巣チョコレート嚢胞です。日本産科婦人科学会は、こう説明しています。
「子宮内膜症の病変が卵巣に入り込み、月経血のようなチョコレート色の液体をため込むのが、卵巣子宮内膜症性嚢胞(卵巣チョコレート嚢胞)です。チョコレート嚢胞は、繰り返す月経に伴い、少しずつ増大していきます。」
20〜30代で発症することが多く、まずはホルモン治療などで経過を見ることが一般的で、大きい場合や痛みを伴う場合は嚢胞の部分を摘出することもあるとされています。そして、こう続きます。
「卵巣チョコレート嚢胞は良性の腫瘍ですが、約1%が悪性化し、がんになると言われています。悪性化した卵巣チョコレート嚢胞は、抗がん剤が効きにくいタイプの卵巣がん(明細胞がんや類内膜がん)になることが多いので、定期的に通院し、大きさの変化がないか確認していく必要があります。」
「若いころにチョコレート嚢胞があると言われたが、最近は通院していない」という方は、一度産婦人科で相談してください。子宮内膜症と生理痛については生理痛のセルフケアの記事で書いています。
チョコレート嚢胞の原因になる子宮内膜症については子宮内膜症の記事で書いています。
5. 🚨 突然の激しい腹痛は、すぐ受診
卵巣腫瘍で、ただちに受診が必要な場面があります。日本産科婦人科学会はこう書いています。
「もし卵巣腫瘍が破裂したり、ねじれたり(茎捻転)すると、突然激しい腹痛に襲われます。このような場合は、直ちに産婦人科を受診してください。」
突然の激しい腹痛は、様子を見ずに医療機関を受診してください。
6. 卵巣がんには、国の指針の検診がない
子宮頸がんや大腸がんと違って、卵巣がんには、市区町村で受けるような検診がありません。国立がん研究センターはこう書いています。
「卵巣がん・卵管がん・腹膜がんについては、現在は指針として定められているがん検診はありません。気になる症状がある場合には、医療機関を早めに受診することをお勧めします。」
また、「卵巣がん・卵管がん・腹膜がん全般については、現在のところ、特有の予防法は確立されていません。」ともしています。だからこそ、3章のようなサインに早く気づいて受診することが大切になります。子宮頸がん検診の受け方は子宮頸がん検診、子宮体がんと不正出血は40代からの不正出血で書いています。
7.【内科医の視点】遺伝と、乳がん・卵巣がん
内科医として、ここはぜひ知っておいてほしいところです。国立がん研究センターは、卵巣がんの発生要因の一つに遺伝的要因を挙げています。
「特に、細胞のがん化を防ぐ働きをするBRCA1遺伝子あるいはBRCA2遺伝子に変異がある女性(遺伝性乳がん卵巣がん)では、卵巣がんや乳がんなどを発症するリスクが高いことがわかっています。」
ただし、「これらの変異があるからといって必ずしもがんになるとは限りません。」とも書かれています。ご家族に乳がんや卵巣がんの方が多い場合など、気になるときは、遺伝医学の専門家のいる施設で遺伝カウンセリングを受けることが勧められています。施設の情報は、がん相談支援センターで確認できます。
日本産科婦人科学会も、卵巣がんの遺伝子検査で遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)を診断することがあると説明しています。乳がんについては胸のケアの記事、がん検診全体はがん検診の記事で書いています。
8. 産婦人科では、どんな検査をする?
日本産科婦人科学会は、卵巣腫瘍の診断の流れを次のように説明しています。
| 検査 | 中身 |
|---|---|
| 問診・身体検査 | 症状や既往歴・家族歴を聞き、外診と内診を行う |
| 超音波検査 | 卵巣を詳しく見て、腫瘍の性質を評価する。嚢胞性(液体がたまったもの)なら良性のことが多く、充実性(中身が詰まった部分)があれば悪性や境界悪性の可能性を疑う |
| MRI検査・腫瘍マーカー | 腫瘍の性質をより正確に調べる |
| 手術と病理検査 | 最終的な診断のため、手術で腫瘍を摘出して顕微鏡で詳しく調べる |
治療は、悪性度によって方針が違いますが手術が原則です。良性腫瘍では、将来の妊娠・出産に配慮して、卵巣の正常な部分をできるだけ残して腫瘍だけを取る手術が一般的で、最近は腹腔鏡手術が主流とされています。
9. 受診したほうがよいとき
産婦人科・婦人科で診てもらいたいとき(資料の記述から)
・突然の激しい腹痛(卵巣腫瘍の破裂やねじれのことがあります。直ちに受診)
・服のウエストがきつくなった、下腹部にしこりが触れる、食欲がない
・お腹が張って苦しい、下腹部が痛い、尿意が近い
・足がむくむ、頻尿や便秘、おなかが大きく突き出てきた
・チョコレート嚢胞があると言われたが、定期的に通院していない
・家族に乳がんや卵巣がんの人が多く、気になる(遺伝カウンセリングの相談)
最後に、この記事の要点をもう一度。
① 卵巣がんは年に約13,000人がかかり、半数以上が進行して見つかる
② 初期は症状がほとんどない。ウエストのきつさ・下腹部のしこり・食欲低下がきっかけに
③ 卵巣の腫れには良性も多い。超音波で性質を見る
④ チョコレート嚢胞は約1%ががん化。定期的な通院を
⑤ 突然の激しい腹痛は、直ちに受診
⑥ 卵巣がんには指針の検診がない。サインに気づいて早めに受診
10. よくある質問
卵巣がんの初期症状はありますか?
国立がん研究センターのがん情報サービスによると、卵巣がん・卵管がん・腹膜がんの自覚症状は、初期の段階ではほとんどありません。服のウエストがきつくなる、下腹部にしこりが触れる、食欲がなくなったなどの症状をきっかけに受診し、わかる場合もあります。がんが大きくなると、足のむくみや、頻尿・便秘が起こることもあります。
卵巣が腫れていると言われました。がんですか?
日本産科婦人科学会によると、卵巣腫瘍は良性、境界悪性(良性と悪性の中間)、悪性(がん)の3つに分けられます。超音波検査で、腫瘍が嚢胞性(液体がたまったもの)なら良性のことが多く、充実性の部分があれば悪性や境界悪性の可能性を疑うとされています。必要に応じてMRIや腫瘍マーカーの検査を行い、最終的な診断は手術で摘出した腫瘍を顕微鏡で調べて行います。
チョコレート嚢胞は、がんになりますか?
日本産科婦人科学会は、卵巣チョコレート嚢胞は良性の腫瘍だが、約1%が悪性化してがんになるといわれていると説明しています。悪性化すると抗がん剤が効きにくいタイプの卵巣がんになることが多いため、定期的に通院して大きさの変化がないか確認していく必要があるとしています。
卵巣がんの検診はありますか?
国立がん研究センターのがん情報サービスによると、卵巣がん・卵管がん・腹膜がんについては、現在は指針として定められているがん検診はありません。気になる症状がある場合には、医療機関を早めに受診することが勧められています。特有の予防法も確立されていないとされています。
お腹が急に激しく痛くなったら、どうすればいいですか?
日本産科婦人科学会は、卵巣腫瘍が破裂したりねじれたり(茎捻転)すると、突然激しい腹痛に襲われるとし、このような場合は直ちに産婦人科を受診するよう呼びかけています。突然の激しい腹痛は、様子を見ずに医療機関を受診してください。
参考にした主な資料
- 日本産科婦人科学会「卵巣の腫瘍とがん」(2025年1月30日更新)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「卵巣がん・卵管がん・腹膜がん」の「卵巣がん・卵管がん・腹膜がんについて」「予防・検診」(2026年3月17日更新・確認)