1. 先に結論
| よくある思い込み | 資料の記述 |
|---|---|
| 生理痛は我慢するもの | セルフケアにはレベルAの方法が6つある。それでもつらければ治療がある |
| ツボやアロマは気休め | 指圧・鍼・灸・アロマはA(複数のメタアナリシス) |
| 温めるのがいちばん | 温熱はB。痛み止めに比べて好ましい効果を示した研究はあるが、異質性とバイアスのリスクが高い |
| 痛くても動かないほうがいい | 運動はA−。自己指圧・運動・温熱の比較では運動の効果量が最大 |
| 年をとれば生理痛は軽くなる | 子宮内膜症の症状は年々悪化する。痛みが強くなっていくなら受診を |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
生理痛が以前より強くなっている、生理のとき以外も痛む、経血の量が増えた——そんな変化があれば、セルフケアの前に婦人科へ。病気が隠れていない生理痛なら、運動・ツボ・アロマ・食べものに根拠のある方法がそろっています。
2. まず確かめたいこと——その生理痛は「病気のサイン」ではないか
この記事で主に使う資料は、AMEDの研究班(代表:東京科学大学 寺内公一氏)がまとめた「働く女性における月経困難症・月経前症候群・更年期障害予防のための非薬物的ヘルスケアサービスガイド」(令和5〜7年度)の、月経困難症の章です。研究班は月経困難症を、「月経期間中に生じる下腹部痛を主症状とし、腰痛、頭痛、悪心、下痢、倦怠感などの随伴症状を伴うことがあり」、働く女性の生活の質と労働生産性を大きく下げる病気としています。
ただ、生理痛のなかには、病気が原因のものがあります。日本産科婦人科学会の一般向けの解説から、40代・50代で特に知っておきたい2つの病気を紹介します。
| 子宮内膜症 | 子宮筋腫 | |
|---|---|---|
| どんな病気 | 子宮の内膜組織が、子宮の内側以外の場所に入り込み、発育する | 子宮にできる良性の腫瘍(がんではない) |
| 多さ | 20〜30代で発症することが多く、ピークは30〜40歳ともいわれる | 30歳以上の女性の3割前後にあるといわれる |
| 生理痛との関係 | 月経痛は患者の9割にみられる。月経を重ねるごとに悪化する | 主な症状は過多月経とそれに伴う鉄欠乏性貧血、月経痛 |
| そのほかの症状 | 生理以外のときの下腹部や腰の痛み、排便や性交のときの痛み、不妊 | 生理以外の出血、腰痛、頻尿、不妊など |
月経痛や経血の多さの原因になる子宮筋腫・子宮腺筋症については子宮筋腫・子宮腺筋症で書いています。
子宮内膜症そのものについては子宮内膜症の記事で詳しく書いています。
日本産科婦人科学会は、子宮内膜症の症状について「これらの症状は20~30歳代で発症し、年々悪化します。」と書いています。一方で、閉経を迎えると痛みの症状もおさまります。子宮筋腫も、閉経すれば小さくなります。
子宮内膜症が卵巣にできる「チョコレート嚢胞」は約1%ががん化するといわれ、定期的な通院が必要です(→卵巣の腫れ・卵巣がん)。
ビタミンD・ω-3・ショウガなどの研究の多くは、病気が原因ではない生理痛(原発性月経困難症)を対象にしています。痛みの変化に気づいたら、まず婦人科で原因を確かめる。それが、この記事のいちばん大事な前提です。経血が多く貧血ぎみの方は、鉄不足(フェリチン)の記事もご覧ください。
3.【核心】12の問いを、レベル順に並べる
エビデンスのレベルは、Mindsの規定に準拠した6段階(A・A−・B・B−・C・D)です。研究班は、「MINDs のエビデンスレベルA 相当であっても、必ずしも医薬品の臨床試験におけるエビデンスレベルA と同等のレベルではないことに留意が必要である。」としています。レベルの詳しい意味は更年期のセルフケアの記事で説明しました。
Aの6つは、いずれも複数のメタアナリシスにもとづく評価です。ただし、多くの試験で異質性やバイアスのリスクが指摘されています。
4. 予防——たばこ、睡眠、朝食
「現在の喫煙および過去の喫煙は月経困難症のリスク因子である。」(A−)
「十分な睡眠は月経困難症を予防する可能性がある。」(B)
「朝食を毎日摂ることが月経困難症の予防に寄与する。」(B)
喫煙が月経困難症の多さや重さと関連することは、複数のメタアナリシスで示されています。また、朝食を毎日とらないこと、睡眠時間が短いこと、運動習慣がないことなどが、月経困難症の原因となる生活因子として同定されています。PMSでも、喫煙は最上位のリスク因子でした(→PMSのセルフケア)。
5. ツボ・鍼・灸(A)
「指圧は月経痛改善に対する有効性が認められている。」(A)
「鍼治療・電気鍼(刺激)は月経痛改善に対する有効性が認められている。」(A)
「灸は月経痛改善に対する有効性が認められている。」(A)
指圧では、耳のツボ(耳介指圧)が月経痛の改善に有効であることが複数のメタアナリシスで示され、35試験・3,960人のメタアナリシスでは痛みのスコアなどが有意に改善しました。足首の内側にあるSP6(三陰交)というツボの指圧も、痛みのスコアを有意に改善しています。ただし、訓練を受けた人が押した場合は直後から3時間後まで痛みが和らいだ一方、自分で押す場合は、効果を得るのに毎月複数回のサイクルが必要だったと報告されています。
鍼は、痛みと症状のスコアを有意に改善することが複数のメタアナリシスで示され、イブプロフェン(痛み止め)と比べた研究もあります。灸も同様に改善を示し、特にへそへの灸が効果的だったとする報告があります。皮膚に電気刺激をするTENSも痛みを和らげたというメタアナリシスがあります。
6. 温める(B)と、体を動かす(A−)
「温熱療法の月経痛改善に対する有効性が示されている。」(B)
「運動は月経痛改善に対する有効性が認められている。」(A−)
「ヨガは月経痛改善やQOL の向上に対する有効性が示されている。」(B)
温熱療法は、4試験のメタアナリシスで痛み止めに比べて月経痛の中等度の有意な改善が得られたとされています。研究で使われたのは温めた小豆枕や温熱パッチなどでした。ただし、介入の方法はばらばらで、バイアスのリスクも高かったため、レベルはBです。
この章で扱ったおなかを温める製品です。AMED研究班のガイドは温熱療法のエビデンスレベルをBとし、研究では温めた小豆枕や温熱パッチなどが使われたとしています。
※ 当サイトは、記事のなかで根拠を示したうえで推奨したものに限り広告を掲載しています。ガイドは、温熱療法の研究は方法がばらばらで、バイアスのリスクも高いとしています。低温やけどにご注意ください。就寝時の使用、同じ場所への長時間の貼付、糖尿病や血行障害で感覚が鈍い方の使用は避けてください。湯船につかる、湯たんぽを使うなど、買わずにできる方法でも同じことができます。ここで紹介しているのは、花王の「めぐりズム 蒸気の温熱シート 肌に直接貼るタイプ」で、一般医療機器です。メーカーによると約40℃が5〜8時間続きます。メーカーも低温やけどを防ぐため「就寝時には使わない」「熱すぎると感じたらすぐに使用を中止する」としていて、妊娠中の方、発熱している方、炎症のある病気の方などには使用前の注意を呼びかけています。
実は、体を動かすことのほうが評価は上です。治療としての運動が月経困難症の痛みの強さを有意に軽くすることが、複数のメタアナリシスで認められました。そして、自己指圧・運動・温熱を比べたメタアナリシスでは、運動の効果量が最大でした。ヨガも、月経痛の改善と、睡眠・集中・気分など生活の質のさまざまな面の改善が示されています(B)。運動の始め方は座りすぎと歩数の記事で書いています。
7. アロマ(A)
「アロマテラピーは月経痛改善に対する有効性が認められている。」(A)
アロマテラピーが月経痛を改善する効果は、複数のメタアナリシスで示されています。アロマオイルを吸い込む方法でも、アロマオイルでマッサージする方法でも、プラセボと比べて痛みの緩和に有意な効果がありました。解析された試験では、ラベンダーオイルが使われた報告が多かったとされています。
この章で扱ったラベンダーの精油です。AMED研究班のガイドは、生理痛へのアロマテラピーのエビデンスレベルをAとし、試験ではラベンダーオイルが多く使われていたとしています。
※ 当サイトは、記事のなかで根拠を示したうえで推奨したものに限り広告を掲載しています。研究班のレベルは、医薬品の臨床試験のレベルと同等ではありません。研究では、香りを吸い込む方法とマッサージが使われました。ここで紹介しているのは、生活の木の「ラベンダー・フランス産(真正ラベンダー)精油」10mlです。販売店の説明によると、学名はLavandula officinalis、花と葉から水蒸気蒸留法で抽出したフランス産の精油で、日本アロマ環境協会(AEAJ)の表示基準適合認定精油です。精油は雑貨で、医薬品ではありません。精油は飲まず、原液のまま肌につけないでください。マッサージに使う場合は、植物油で薄めて使います。香りで気分が悪くなる場合は使用をやめてください。妊娠中の方や持病のある方は、使う前に医師に相談してください。
8. 食べもの・サプリ——ω-3とショウガがA
「ω-3 脂肪酸は月経痛改善に対する有効性が認められている。」(A)
「ショウガ末の摂取は月経痛改善に対する有効性が認められている。」(A)
「ビタミンD 摂取は月経痛改善に対する有効性が認められている。」(A−)
ω-3脂肪酸(青魚に多いEPA・DHAなど)は、月経痛を有意に改善することが複数のメタアナリシスで示され、痛み止めの使用量を減らす効果も示されています。研究では、1日300〜1,800mgを2〜3か月毎日補充していました。興味深いことに、あるメタアナリシスでは低用量のほうが効果が高く、1日の量が増えるほど効果は小さくなり、年齢が高いほど効果は小さくなる傾向もみられました。
ショウガは、口から摂ることで月経困難症の痛みを改善することが複数のメタアナリシスで認められ、痛み止め(NSAIDs)と同等の効果があったとされています。研究では、月経の初めの3〜4日間に、ショウガ粉末を1日750〜2,000mgとる方法が有効とされました。
ビタミンDも月経痛を有意に改善し、痛み止めの使用頻度を下げたとされています(A−)。ただし、研究で使われた量は1日5,000IUから月30万IUまでと大きく異なり、1週間の平均が5万IUを超える場合に痛みが軽くなったという結果でした。量によって結果が違うため、自己判断で大量にとらず、医師に相談してください。
この章で扱ったω-3脂肪酸(EPA・DHA)のサプリメントです。AMED研究班のガイドは、ω-3脂肪酸の生理痛へのエビデンスレベルをAとしています。研究では1日300〜1,800mgが使われました。
※ 当サイトは、記事のなかで根拠を示したうえで推奨したものに限り広告を掲載しています。研究班のレベルは医薬品の臨床試験のレベルと同等ではなく、研究の質には方法論の問題があるとされています。ここで紹介しているのは、大塚製薬の「ネイチャーメイド スーパーフィッシュオイル」90粒で、食品です。販売店の説明によると、1日1粒が目安で、1粒にEPA・DHAが270mg含まれます。研究で使われた量(1日300〜1,800mg)より少し少ない目安量です。原材料は精製魚油(国内製造)・ゼラチンなどです。生理痛のための製品ではありません。血液をサラサラにする薬を飲んでいる方、持病のある方、妊娠中・授乳中の方は、飲み始める前に医師・薬剤師に相談してください。魚やゼラチンにアレルギーのある方は使わないでください。
9. ハーブとアプリ
「フェンネルは月経痛改善に対する有効性が認められている。」(A−)
「カモミールは月経痛および経血量の改善に対する有効性が示されている。」(B)
フェンネル(ウイキョウ)は月経痛を改善させることがメタアナリシスで示され、カモミールは月経痛を改善させ、経血の量を減らすことが複数の試験で認められています。また、症状を和らげるための食事や体操の情報を届けるスマートフォンアプリで、3か月の使用で症状が有意に改善したというランダム化比較試験もあります(B−)。
10. 🚨 セルフケアで様子を見ないほうがいいとき
研究班は総括で、ガイドで評価したセルフケアの対象は原則として軽症や、症状が比較的安定している人だとし、強い月経痛や過多月経、器質的疾患(体のどこかの病気)が疑われる症状、日常生活や就労が著しく妨げられる症状などがある場合は、速やかな医療機関の受診が必要だとしています。日本産科婦人科学会の解説もあわせると、次のような場合は婦人科を受診してください。
生理以外の時期の出血や、閉経前後の出血については、40代からの不正出血で整理しています。
婦人科を受診したいとき(資料の記述から)
・生理痛が年々強くなっている(子宮内膜症は月経を重ねるごとに悪化します)
・生理のとき以外も下腹部や腰が痛む、排便や性交のときに痛む
・経血の量が多い(過多月経)、貧血を指摘された、生理以外の出血がある
・痛みで仕事や日常生活が著しく妨げられる
研究班は「非薬物療法は薬物療法や専門医療を代替するものではない。」としています。日本産科婦人科学会によれば、子宮内膜症の痛みにはまず鎮痛剤を使い、効果が乏しい場合は低用量ピルや黄体ホルモン剤などを使います。子宮筋腫も、症状に応じてホルモン治療や手術が選ばれます。痛みを我慢し続ける必要はありません。
最後に、この記事の要点をもう一度。
① 生理痛が年々強くなる・生理以外も痛む・経血が多いなら、まず婦人科へ
② セルフケアのAは6つ:指圧(ツボ)・鍼・灸・アロマ・ω-3・ショウガ
③ 運動はA−で、自己指圧・温熱との比較では効果量が最大
④ 温めるのはB。ビタミンDはA−だが、研究の量はかなり多い
⑤ 予防には、禁煙・十分な睡眠・毎日の朝食
⑥ セルフケアは軽症向け。痛みを我慢し続ける必要はない
11. よくある質問
生理痛のセルフケアで、根拠があるのはどれですか?
AMED(日本医療研究開発機構)の研究班がまとめた非薬物的ヘルスケアサービスガイドでは、指圧(ツボ)、鍼治療・電気鍼、灸、アロマテラピー、ω-3脂肪酸、ショウガ末の6つが、月経痛の改善に最上位のエビデンスレベルAとされました。運動、ビタミンD、フェンネルはA−、温熱療法とヨガはBです。ただし研究班は、このレベルは医薬品の臨床試験のレベルと同等ではないと注意しています。
生理痛のとき、温めるのと運動するのはどちらがいいですか?
研究班の評価では、運動はA−、温熱療法はBでした。自己指圧・運動・温熱を比べたメタアナリシスでは、運動の効果量が最大だったとされています。温熱療法も、温めた小豆枕や温熱パッチなどで、痛み止めに比べて好ましい効果を示した研究があります。どちらも組み合わせて使えますが、温めるときは低温やけどに注意してください。
ショウガは生理痛に効果がありますか?
研究班は、ショウガ末の摂取は月経痛の改善に有効性が認められているとし、エビデンスレベルをAとしました。複数のメタアナリシスで、痛み止め(NSAIDs)と同等の効果があったとされています。研究では、月経の初めの3〜4日間に、ショウガ粉末を1日750〜2,000mgとる方法が有効とされました。
40代になって生理痛が強くなりました。大丈夫でしょうか?
婦人科で原因を確かめてください。日本産科婦人科学会によれば、子宮内膜症は月経痛が患者の9割にみられ、月経を重ねるごとに悪化します。子宮筋腫は30歳以上の女性の3割前後にあるといわれ、過多月経や貧血、月経痛の原因になります。生理以外のときの痛み、経血の量の増加、貧血などがある場合も受診の目安です。痛みには鎮痛剤やホルモン治療などの選択肢があります。
ツボはどこを押せばいいですか?
研究班のガイドでは、耳のツボを使う耳介指圧と、足首の内側にあるSP6(三陰交)の指圧が、月経痛の改善に有効と報告されています。ただし、訓練を受けた人が押した場合に比べ、自分で押す場合は、効果を得るために毎月複数回のサイクルが必要だったとされています。正しい場所や押し方は、鍼灸師などの専門家に教わると確実です。
参考にした主な資料
- 日本医療研究開発機構(AMED)予防・健康づくりの社会実装に向けた研究開発基盤整備事業「働く女性における月経困難症・月経前症候群・更年期障害の二次予防・三次予防のための指針策定に関する研究開発」(研究代表者:寺内公一)「働く女性における月経困難症・月経前症候群・更年期障害予防のための非薬物的ヘルスケアサービスガイド」令和5〜7年度(月経困難症 HQ1〜HQ12、総括、付録のエビデンスレベル一覧表)
- 日本産科婦人科学会「子宮内膜症」「子宮筋腫」(産科・婦人科の病気、2025年1月30日更新)