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MEDICALLY REVIEWED BEAUTY & HEALTH
からだの変化

バストの悩み
——「行わないことを強く推奨する」と書かれた施術が、2つあります

5つの学会が合同でつくった『美容医療診療指針』には、乳房増大術の章があります。5つの問いのうち2つが「行わないことを強く推奨する」、2つが「行うことを強く推奨する」。はっきり分かれています。
なかでも重いのが、この一文です。「乳房増大術を受けられた方の対策型乳癌検診を断る市区町村もある」
そして手術の話が終わったあと、その前に確かめられることを書きます。一般女性の85%が自分に合わないサイズのブラを選んでいたこと。運動中の乳房痛を半数が経験していること。そして——「授乳すると垂れる」は、研究では支持されていません。

執筆:なぎ先生(内科医) 公開:2026年9月3日 読了:約20分

1. 先に結論

よく言われていること一次資料の記述
ヒアルロン酸なら手軽で安全「行わないことを強く推奨する」世界的にも承認品が存在しません
入れても検診は普通に受けられる「対策型乳癌検診を断る市区町村もある」と指針に書かれています
吸収されるから元に戻せる12か月後の残存は34%。一方で腋窩リンパに結節を形成した報告があります
ずっと残るタイプが得非吸収性充填剤は「行わないことを強く推奨する」100年、同じ失敗を繰り返してきました
自分の脂肪なら100%生着する生着率は62.4%(44.7〜82.6%)。合併症率17.2%
ブラは自分で選べば十分一般女性104名の85%が適切でないサイズを選択していました
運動中の胸の痛みは自分だけ調査した1,659名の52%が経験。日本の陸上選手で常にスポーツブラは6.9%
授乳すると胸が垂れる授乳歴は下垂の独立した危険因子ではありませんでした(喫煙は危険因子です)
サプリで大きくなる国民生活センターに危害情報209件EU未承認・韓国は使用禁止

この記事でいちばんお伝えしたいこと。

胸の悩みは、人に相談しにくいぶん、広告と口コミだけで判断が進んでしまいやすいテーマです。

けれど実際には、5つの学会が合同でつくった診療指針が無料で全文公開されていますし、国民生活センターの調査も、スポーツと乳房についての日本語の総説も、誰でも読めます。

そして手術の前に確かめられることが、いくつもあります。まずそこから書きます。

2. 【核心】2つが「行わないことを強く推奨する」

『美容医療診療指針(令和3年度改訂版)』は、日本皮膚科学会・日本形成外科学会・日本美容皮膚科学会・日本美容外科学会(JSAPS/JSAS)の5学会が、厚生労働科学研究費補助金の事業として合同で作成したものです。そして全文が無料で公開されています。

その第3章が、乳房増大術です。まず、この指針の推奨度がどういう意味なのかを確認しておきます。

大事なのは、推奨度1には「行う」と「行わない」の両方があることです。「1」という数字は強さを表すだけで、方向は推奨文を読まないと分かりません。

そして乳房増大術の章は、この両方向の1が並ぶ、めずらしい章になっています。

3. 【一覧】5つの問いを、推奨度で並べる

乳房増大術:5つの問いと、その推奨度 問い 推奨度 国内の承認 ヒアルロン酸製剤の注入 CQ3-1-1 1 | 行わないことを強く推奨 承認品なし 非吸収性充填剤の注入 CQ3-2 1 | 行わないことを強く推奨 未承認 脂肪注入術 CQ3-3-1 1 | 行うことを強く推奨 承認機器あり 脂肪注入後の画像フォローアップ CQ3-3-2 1 | 行うことを強く推奨 承認機器あり 注入後のマンモグラフィ検診 CQ3-1-2 2 | 弱く推奨(+他の検査) 該当せず 「入れるもの」で正反対に分かれています。注入するもので判断が変わる、ということです。 出典:美容医療診療指針(令和3年度改訂版)第3章「乳房増大術」CQ3-1-1〜CQ3-3-2

同じ「注入」でも、何を入れるかで指針の判断は正反対になります。

整理すると、こうなります。

「異物を入れるかどうか」が、分かれ目になっています。順に見ていきます。

4. ヒアルロン酸注入——年間2,855人。世界に承認品はありません

CQ3-1-1「乳房増大にヒアルロン酸製剤注入治療は有効か?」に対する推奨度は1(行わないことを強く推奨する)です。

まず、施術されている数から。日本美容外科学会(JSAPS)の全国美容医療実態調査によれば、2019年度は2,855人がこの施術を受けています。指針は「近年はシリコンインプラント挿入による乳房増大術に比べて施術数は多くなっている」と記しています。手軽さゆえに、主流になっているということです。

その手軽さは、指針も認めています。局所麻酔で短時間、単純な手技、ダウンタイムが短く、疼痛の管理も容易。もともと体内にある物質なのでアレルギー反応の報告もほぼない。

では、なぜ「行わないことを強く推奨する」なのか。推奨文はこうです。

「ヒアルロン酸製剤注入による乳房増大術は、手軽に効果を得られる反面、被膜拘縮や乳癌検診の妨げになる可能性が指摘されており、その使用には慎重さが求められる。米国食品医薬品局(FDA)は乳房増大へのヒアルロン酸製剤の使用を許可しておらず、またヨーロッパで使用されていたMacrolane(乳房増大用ヒアルロン酸)もCEマーク撤回に至った。世界的にも承認品が存在しない状況を考慮した上で、班会議で慎重に議論した結果、推奨度は1とすることとした」

世界的にも承認品が存在しない。米国は許可しておらず、欧州は一度使われたものが撤回された。それでも日本では年間2,855人が受けている——この落差が、この章の出発点です。

「有効性・安全性・承認状況」の欄も、率直です。

解説文には、具体的な問題が並んでいます。

問題指針の記述
吸収されていくMacrolaneは注入後3か月で78%、6か月で57%、12か月で34%残存。吸収が早いと治療費がより高くなり、インプラントへ変更せざるを得ないことも
被膜拘縮乳腺下へ注入した場合、比較的高率に生じることが知られています
移動する注入部位からリンパ流に乗って移動し、腋窩リンパに結節を形成したという報告があります
乳がんへの懸念反復する注入により炎症が惹起され、乳がんの発生率増加につながるのではないかという懸念
診断の遅れ形成される結節が診断画像に写り込み、乳房疾患の診断の遅れにつながる可能性

とくに最後の2つが、次の章のテーマです。

5. 【最重要】検診を断る市区町村があります

この記事で、私がいちばん知っていただきたいのがここです。

CQ3-1-2は「ヒアルロン酸製剤による乳房増大術を受けた人に対して、一般的な乳癌スクリーニング検査であるマンモグラフィは有効か?」という問いです。推奨度は2(行うことを弱く推奨する)。推奨文はこうです。

「ヒアルロン酸製剤はマンモグラフィによる乳癌スクリーニング検査の妨げとなり得るため、マンモグラフィに加えて超音波検査やMRIなどの画像検査が必要となる場合がある」

なぜ妨げになるのか。画像にどう写るかが、具体的に書かれています。

検査注入されたヒアルロン酸の写り方
マンモグラフィ放射線不透過像として乳腺に重なり、乳腺の全体的な濃度上昇や複数箇所の高濃度陰影として描出されます
超音波無〜低エコー域。囊胞や線維腺腫などの良性腫瘤に似ることも、囊胞内癌などの悪性病変に似ることもあります
MRIT1で低信号・T2で高信号の囊胞に類似。マンモグラフィと超音波で確定困難な場合に行われます

さらに指針は、注入部の周囲に厚い石灰化を伴う被膜が形成されることがあり、乳がんに伴う微細な石灰化との鑑別のためにステレオガイド下生検を必要とした症例報告があると記しています。針を刺して調べないと区別がつかなかった、ということです。

日本人には、もうひとつ条件が重なります。指針は「閉経前の日本人女性では乳腺に脂肪の混在が少なく、いわゆる高濃度乳房(dense breast)であることが多い」と書いています。もともとマンモグラフィで白く写りやすい乳房に、さらに白いものが重なるということです。

そして、この一文です。

「乳房増大術を受けられた方の対策型乳癌検診を断る市区町村もあるため、施術前に十分に情報を提供し、必要に応じて乳腺外科医と協力して施術後のフォローアップを行うことも考慮する」

自治体が行う乳がん検診を、受けられなくなる可能性がある——それが診療指針に書かれています。

さらに指針は「乳房増大術を受けられた方は検診や医療機関の受診を躊躇する傾向がある」とも記しています。制度の側からも、気持ちの側からも、検診から遠ざかる構造があるということです。

指針は、施術する医師に対して次のことを求めています。

そして、こう書かれています。「診断のついていない乳癌症例にヒアルロン酸製剤注入による乳房増大術を行い、乳癌の診断の遅れやその後の治療を困難にした症例報告もあり、施術前に乳癌を除外しておくことが重要である」。

なお、日本の対策型乳がん検診は40歳以上・2年に1回・問診とマンモグラフィが推奨されています。検診そのものの推奨グレードや、超音波検査がどう位置づけられているかはがん検診——「受けたほうがいい検査」と「そうでもない検査」に詳しく書きました。

6. 非吸収性充填剤——100年、繰り返してきた歴史

CQ3-2「乳房増大に非吸収性充填剤の注入は有効か?」の推奨度も1(行わないことを強く推奨する)です。

推奨文は短い一文です。「過去に繰り返されてきた非吸収性充填剤による健康被害を考慮すると、乳房増大を希望する患者に非吸収性充填剤は勧められない」。

「過去に繰り返されてきた」という言葉が、この章の中心です。指針が書いている歴史を並べます。

時期使われたもの/結果
1900年前後・ヨーロッパ液状のワセリン、パラフィン
1950年代・日本ゲル状シリコン
いずれも様々な局所性・全身性の合併症により用いられなくなる
1990年代後半・ウクライナ、中国ポリアクリルアミドハイドロジェル(PAAG)。生体親和性が高い非吸収性充填剤として期待された
後に腫瘤形成、痛み、変形といった合併症の報告が相次ぎ、安全なものではないことが判明

指針は、これを「用いられなくなるという歴史を繰り返してきた」と表現しています。同じことが、100年のあいだに何度も起きてきたということです。

PAAGについて書かれている合併症は、重いものです。

エビデンスの内訳も特徴的です。A(無作為化試験)0本、B 0本、C(専門家の意見)10本。比較試験も、コホート研究も、1本もありません。

ここが、この章のいちばん実際的な意味です。

入れることは、注射で数十分。取り出すことは、乳房を切除して再建する手術になりうる。

この非対称性が、指針が「行わないことを強く推奨する」と書いた理由です。

7. 脂肪注入——唯一の「強く推奨」と、その条件

CQ3-3-1「乳房増大に脂肪注入術は有効か?」の推奨度は1(治療を希望する患者には、行うことを強く推奨する)です。この章で唯一、前向きな推奨度1がついた方法です。

ただし推奨文には、条件が4つ書き込まれています。

「脂肪注入は乳房増大に有効である。①適切な患者選択、②術前評価、③経験を有した術者による丁寧な手術手技、④術後フォローアップを着実に行うことで、合併症を回避しつつ有効な結果が期待できる」

「有効である」という断定のあとに、4つの前提が並んでいます。この4つが揃っているかどうかが、実質的な判断材料になります。

数字も、正直に書かれています。

項目結果
移植脂肪の生着率(術後12〜18か月)62.4%(幅は44.7〜82.6%)
体外式乳房拡張器を併用した場合67.9%
全体の合併症率17.2%
合併症の内訳触知可能な腫瘤33.3%/持続的な疼痛25%/血腫16.4%気胸0.1%

入れた脂肪のうち、残るのはおよそ6割。そして6人に1人に何らかの合併症が起きています。気胸(肺に穴があく)が0.1%に生じているのは、胸壁のすぐ外側で行う手技だからです。

「適切な患者選択」の中身も書かれています。指針は「BRCA1/2遺伝子変異がなく、乳癌の家族歴のない患者が望ましい」としています。乳がんのリスクが高い人には向かないということです。

手技についても具体的です。多層(皮下・大胸筋下・乳腺下)、多方向に少量ずつ注入し、乳腺組織内には注入しない。直径2mm以下で注入することが望ましい、とされています。

そして、エビデンスの内訳がここでも興味深い。A(無作為化試験)0本、B 4本、C 4本。無作為化試験が1本もないのに推奨度1です。医療脱毛の章でIPLが無作為化試験14本で推奨度2だったのと、ちょうど逆の形になっています。論文の本数と推奨度は、別のものを測っているということが、ここでもよく分かります。

そして「術後の画像フォローアップ」も推奨度1

CQ3-3-2は、脂肪注入のあとに画像検査で追いかけることについての問いです。推奨度は1(行うことを強く推奨する)

理由は、脂肪壊死が起きるからです。移植した脂肪の一部は生着せず壊死し、その結果として囊胞・石灰化・腫瘤性病変が生じます。これが画像上で乳がんとの鑑別の問題になります。

実際の数字があります。脂肪注入後のマンモグラフィ所見を調べた研究では、囊胞25.5%、瘢痕17.6%、良性石灰化17.1%、放射線科医が生検を推奨する石灰化4.6%生検を推奨する腫瘤性病変2.8%。22編をまとめたシステマティックレビューでは、微小石灰化9%、粗大石灰化7%が認められています。

そのレビューは「形成外科医と放射線科医の間に良好なコミュニケーションが存在する限り、悪性腫瘍との鑑別は可能」と述べています。裏を返せば、手術した施設と読影する施設がつながっていないと、鑑別が難しくなりうるということです。

4つの問いに、ひとつの共通点があります。

ヒアルロン酸も、非吸収性充填剤も、脂肪注入も——問題になっているのは「乳がんが見つけにくくなること」です。

だから指針は、脂肪注入という推奨度1の方法についても、画像フォローアップを別のCQとして立てて、これも推奨度1にした。受けるなら、そのあと追いかけるところまでがセットだという設計です。

8. ここから先は、手術ではない話です

ここまで、指針が扱っている5つの問いを見てきました。

ただ、この記事を読んでくださっている方の多くは、いますぐ手術を検討しているわけではないのだろうと思います。もっと日常的な悩み——形が気になる、下着が合わない、運動すると痛い、垂れてきた気がする——のほうが、ずっと身近なはずです。

そして調べてみると、そちらのほうに、しっかりした研究がありました。

ここから先で使うのは、主にこの資料です。

武田理ほか「運動・スポーツ時における女性特有の乳房に関する傷害とその防止に関する文献レビュー:乳房の傷害とスポーツブラの着用に焦点をあてて体育学研究 69:97-108、2024年(筑波大学。国内外69文献をレビューした総説で、全文が無料で読めます

それと、乳房下垂の危険因子を調べた米国の研究、そして国民生活センターの調査です。順に見ていきます。

9. 【核心】85%が、自分に合わないサイズを選んでいました

いちばん最初に確かめる価値があるのが、これです。

自分で選んだサイズは、どのくらい合っているか 50% 100% 一般女性 104名 適切でないサイズを選択 85% 18〜26歳 30名 適正より小さいサイズ 70% ランナー 1,285名 フィット感に問題を感じる 75% 選手 112名(着用者) 基準を満たさないサイズ 52% 傾向:アンダーバストは小さく、カップサイズは大きいものを選びがち。 思春期の女子の75%は、フィッティングを受けた経験がありませんでした。 出典:体育学研究 69:97-108, 2024 が引用する各調査

「なんとなく合っている気がする」は、かなりの確率でずれています。

数字を、ひとつずつ確認します。

一般女性104名を対象に、専門家によるフィッティングと自己選択によるサイズを比べた研究では、85%が適切ではないサイズを選択していました。研究者は、その原因を「自分に適したブラジャー選択に関する知識不足と、メーカーごとに規格サイズが異なること」としています。後者は、努力ではどうにもならない部分です。

18〜26歳の30名を対象にした調査では、自己選択によるサイズは70%が適正より小さく、10%が大きいという結果でした。傾向としてはアンダーバストは小さく、カップサイズは大きいものを選ぶとされています。

そして、この問題は運動している人ほど深刻です。ロンドンマラソンに出場した女性ランナー1,285名の調査では75%がブラのフィット感に問題を感じており、その多くがブラとのすき間による摩擦や、肩紐の食い込みによるものでした。コンタクトフットボール選手112名では、87%がスポーツブラを着用していたにもかかわらず、専門家の評価ではそのうち52%が基準を満たしていませんでした

総説の結論は、こうです。

「フィットしていないスポーツブラの着用は、ズレによる摩擦や乳房変位抑制効果が低くなり、乳房痛などを引き起こす。そのため、プロによる測定など適切なサイズ選択ができるようにする必要がある

お店で測ってもらうことには、根拠があるということです。多くの下着売り場では無料で対応してもらえます。

なお、日常のブラジャーについても、総説は「裸の状態と比べて着用による乳房痛の軽減が認められている」と書いています。ただし——ここは正確に書いておきます——「日常生活での常時使用を推奨する報告はみられなかった」とも記されています。つけていれば良い、24時間つけたほうが良い、という話ではありません。

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この章で書いた「適切なサイズ選択」のための下着です。体育学研究の総説は、フィットしていないブラが摩擦や乳房痛につながるとし、プロによる測定など適切なサイズ選択ができるようにする必要があると結論しています。
とくにカップサイズが大きい方は、乳房痛や損傷の報告が多く、支えの効いた下着の意味が大きくなります。まず一度、お店で測ってもらうことをおすすめします。

※ 当サイトは、記事のなかで根拠を示したうえで推奨したものに限り広告を掲載しています。12章に書いたとおり、総説は「フィット性の向上=過度な圧迫ではない」と注意しています。締めつけて形を変えることではなく、サイズが合っていることを基準にお選びください。なお、常時着用や就寝時の着用を推奨する報告は、今回の総説には見当たりませんでした。

10. 運動中の乳房痛——半数が経験しています

「走ると胸が痛い」「揺れるのが気になって運動したくない」。これを、自分だけのことだと思っている方が多いと思います。

数字は、そうではないと言っています。

困っている人は多く、対策している人は少ない 運動中の乳房痛を経験した割合 女性 1,659名(世界) 52% 中国人女性 404名 60%超 エリート選手 504名 (乳房の傷害) 36% 女子大学生選手 194名 (乳房の外傷・損傷) 48% では、スポーツブラを着けているか 日本の陸上選手 221名 (いつもスポーツブラ) 6.9% 11〜18歳の女子 2,089名 (運動時に必ず着用) 10% 出典:体育学研究 69:97-108, 2024 が引用する各調査(日本の陸上選手はChiba and Hasegawa 2008)

半数が痛みを経験し、日本の陸上選手で常用しているのは7%弱でした。

詳しく見ます。世界中の女性1,659名を対象にしたオンライン調査では、52%が乳房痛を経験しており、そのうち59%が「不快」、10%が「苦痛」と回答しました。中国人女性404名の調査では60%以上が運動中に乳房痛を経験しています。

競技レベルでも同じです。18歳以上のエリートアスリート504名の調査では36%が乳房の傷害を経験し、21%が「乳房の傷害がパフォーマンスにマイナスの影響を与える」と回答。女子大学生アスリート194名では48%が乳房の外傷や損傷を経験し、そのうち18%がトレーニングや試合に影響を受けたと答えています。とくにバスケットボール、サッカー、ソフトボール、バレーボールで多かったと報告されています。

そして総説は、乳房痛は女性の約40%のQOLにも影響を与えるという指摘を引き、「介入が必要である」としています。

ところが、対策している人は少ない。日本のデータがあります。高校および大学の陸上競技選手221名を対象にした調査で、運動中に使用するのは——

ワコールの調査でも、スポーツブラの所有率50%に対し、着用率は約30%でした。持ってはいるけれど、着けていないということです。

なお総説は、「日本人女性を対象とした運動・スポーツと関連した乳房痛に関する報告は、本研究で検索した限りでは見当たらず」とも書いています。日本ではこの問題自体がまだ調べられていない、ということです。文部科学省の2022年の調査では20歳以上の女性の週1回以上のスポーツ実施率は50.2%(回答者のうち女性20,068人)ですから、対象になる人は非常に多いはずです。

11. スポーツブラは、何が違うのか

総説の結論を、先に引用します。

「そのためには、乳房の動きを抑制し、乳房痛の緩和など不快感の軽減や傷害予防の機能を担うスポーツブラの着用が重要である」(体育学研究 69:97-108、2024・結論2)

では、普通のブラと何が違うのか。指針ではなく総説の記述ですが、構造がはっきり書かれています。

特徴理由
布地の面積が大きいファッションブラは乳房を覆う面積が小さく、運動時には支持機能が不十分と考えられています
ネックラインが高い乳房上部の動きを制限するため
ストラップの幅が広い肩への圧力を分散させるため
機能性の生地通気性がよく、汗を吸いやすい素材が使われます

形は大きく2種類に分けられます。

近年は両者の良いところを取り入れたハイブリッドタイプもあり、単に変位を小さくするだけでなく、持ち上げつつ圧迫することで不快感を減らせると報告されています。

ただし、どちらが優れているかについては報告が割れています。「クロップトップのほうが垂直方向の変位が大きかった」という報告もあれば、「タイプによる差はなかった」という報告もある。総説は、実験参加者や素材の違い、さらに乳房が温度によって硬さが変化することまで挙げて、「複雑さを提起している」としています。

そう、温度も関係します。脂肪組織は約30〜35℃で半固体から液体状態に変化するため、運動による体温上昇と熱のこもりで乳房が軟化し、変位やズレが大きくなりやすいと考えられています。だから「熱がこもりにくい・汗が乾きやすい」ことも、フィット性と同じくらい実際的な選択基準になります。

ランニング時に乳房がどのくらい動くのかについては、報告に幅があります。1cm以下とするものから、最大5cmとするものまで。ただし総説は、「いずれの報告でも共通して、運動時の乳房変位を抑制する必要が有ると結論付けている」と書いています。

12. ただし「締めつければいい」ではありません

ここは、必ず書いておきたい部分です。

総説は、はっきり注意しています。

「スポーツブラは、運動中の乳房支持において、乳房痛の緩和や傷害予防に有効であるものの、『フィット性の向上=乳房の動きを抑えるための過度な圧迫』ではない点で注意が必要である

実際の報告もあります。14名の女性を対象に、5つの肩紐の条件でランニング実験を行った研究では、条件によっては血流を阻害する程の圧力が肩にかかったと報告されています。

また、乳房の変位を大きく減らそうとすると圧迫が強くなり、最も着心地が悪く不快であるという報告もあります。「動かないこと」だけを追いかけると、別の問題が出てくるということです。

もうひとつ、思春期についての記述があります。総説が引用するHadi(2000)は、乳房発達期の若い女性は、自然な発育のためにスポーツブラの日常的な使用は避けるべきだが、乳房の不快感があるときや、成長に伴う痛みの緩和、スポーツによる急性の痛みの抑制には役立つ、と報告しています。

そして総説は「日常生活での常時使用を推奨する報告はみられなかった」と締めています。運動するときに着ける、という位置づけです。

お子さんがいらっしゃる方へ。

思春期の女子への介入研究では、冊子を配って知識を伝えるだけで、適切なサイズを選べるようになり、着用への抵抗感も和らいだと報告されています。運動時の羞恥心が減ることは、運動そのものを続けられるかどうかに直結します。

日本の調査では、保護者の70%が「子どもの下着に関する知識・情報がない」と回答していました。中学生からは「サイズが合っているか分からない」「自分のサイズを知らない」「選び方が分からない」という声が挙がっています。

一度いっしょにお店で測ってもらう。それだけで解けることが、意外に多いのだと思います。

13. 【通説の検証】「授乳すると垂れる」は支持されていません

この記事で、いちばんお伝えしたかったことのひとつです。

米国の形成外科医Rinkerらは、乳房下垂の危険因子を正面から調べました。美容外科を受診した患者について、妊娠歴・授乳歴・体重の変化を電話で聞き取り、手術前の標準化された写真から下垂の程度を判定し、多変量解析を行っています。

乳房下垂の危険因子:何が有意で、何が有意でなかったか 有意な危険因子だった ・年齢が高いこと ・妊娠の回数が多いこと ・BMIが高いこと ・カップサイズが大きいこと ・喫煙歴 ・23kg以上の大幅な 体重減少の既往 有意ではなかった ・授乳歴 ・妊娠中の体重増加 ・定期的な上半身の運動を していないこと ※「していないと垂れる」という 関係は確認されませんでした 論文の結論:「これから母親になる人は、 授乳が乳房の見た目に悪影響を与えるようには見えないと安心してよい」 出典:Rinker B ほか. Ann Plast Surg 64(5):579-584, 2010(132名)    Aesthet Surg J 28(5):534-537, 2008(93名)

左側に喫煙があり、右側に授乳がある。多くの人の予想と、たぶん逆です。

132名を解析した研究(Ann Plast Surg 2010)で有意な危険因子とされたのは、年齢が高いこと、23kg以上の大幅な体重減少の既往、BMIが高いこと、カップサイズが大きいこと、妊娠回数が多いこと、そして喫煙歴でした。

一方、有意でなかったのは——授乳歴、妊娠中の体重増加、そして定期的な上半身の運動をしていないことです。

経産婦93名にしぼった別の解析(Aesthet Surg J 2008)でも、同じ結論でした。有意だったのは年齢・BMI・妊娠回数・妊娠前のブラサイズ・喫煙。授乳は独立した危険因子として認められませんでした。

論文の結論を、そのまま引用します。

「乳房下垂のリスクは妊娠のたびに高まるが、授乳がその影響を悪化させるようには見えない。これから母親になる人は、授乳が乳房の見た目に悪影響を与えるようには見えないと安心してよい」

変化を起こしているのは妊娠そのものであって、授乳ではない。そういう整理になります。実際この研究では、妊娠経験のある人の85%が妊娠後に乳房の形の変化を報告しており、35%はサイズが減り、30%は増えたと答えています。

ここから、実際に手が届くこと。

危険因子のリストのうち、年齢・妊娠回数・もともとのカップサイズは、変えられません。

変えられるのは喫煙と、大幅な体重の増減を繰り返さないことです。とくに喫煙は、皮膚のコラーゲンやエラスチンにも影響することが知られており、紫外線対策と並んで、見た目に関わるところで確実に効いてくる要素です。

なお、年齢による変化そのものについても総説に説明があります。加齢とともに結合組織の割合が減少し、脂肪組織が相対的に増加することで乳房の下垂につながる、と。そして「乳房には筋肉がない」——腺組織、線維性の間質、脂肪からなり、骨格による解剖学的な支持がない。これが、この章と次の章の前提です。

14. ⚠️ バストアップサプリ——危害情報209件

ここは、はっきり書きます。

国民生活センターは2017年7月13日、「美容を目的とした『プエラリア・ミリフィカ』を含む健康食品——若い女性に危害が多発!安易な摂取は控えましょう」という報道発表を出しています。バストアップやスタイルアップをうたう健康食品に配合されている成分です。

項目内容
危害情報の件数2012年度以降の5年間あまりで209件。2015年度以降急増し、2015・2016年度は年間100件近く
被害者ほぼ全員が女性。20歳代33%、40歳代20%、30歳代20%、10歳代18%
購入方法全員が通信販売で購入
危害の内容消化器障害・皮膚障害のほか、月経不順や不正出血といった女性特有の生理作用への影響

そして商品テストの結果です。市販の12銘柄を調べたところ——

海外の扱いも、参考になります。

国・地域扱い
EU新規食品として未承認のため販売できません
韓国女性ホルモン様作用を持つとの理由で食品への使用が禁止
タイ(原産国)健康食品では1日の摂取量が100mgを超えないこととされています
日本医薬品的な効能効果をうたわない限り、食品として使用できます

さらに、報告書はこう記しています。「近年、動物試験で、プエラリア・ミリフィカの投与により乳腺や子宮内膜の異常増殖が認められ、乳腺の発がんを促進したとの報告が出てきています」。

販売者へのアンケートの結果も、そのまま載っています。回答した5社のうち、活性が強いとされるデオキシミロエストロールやミロエストロールの量を調べている、あるいは活性の強さを調べていると回答した社は、ひとつもありませんでした。そして「どの部分に作用するものか」という質問には、5社中4社が「特定の部位への作用はない」、1社が「分からない」と答えています。

消費者へのアドバイスは、こうです。

「摂取によりホルモンバランスが崩れるなど、思わぬ健康被害が発生するおそれがあるため、安易な摂取は控えましょう

妊娠中、授乳中、女性ホルモンに関わる病気の治療中の方や小児は、プエラリア・ミリフィカを含む健康食品の利用は避けましょう

報告書には、こんな記述もあります。「PIO-NETには、このような健康食品で体調不良が起きても、飲み続けてしまう事例も見受けられました」。そして「購入時に定期購入になっていることに気付かず、健康被害が起きても解約できないという事例」も。

体調がおかしいと感じたら、直ちに摂取を止めて医療機関を受診してください。そして定期購入の契約は、購入前に必ず確認してください。

当サイトは、この種の広告を掲載していません。

報酬の有無にかかわらず、記事のなかで「根拠が乏しい」「推奨されていない」と書いたものは広告として扱わない——これが編集方針です。バストアップをうたうサプリメントは、その一覧に加えました。

15. マッサージと筋トレは、どう考えればいいか

最後に、よく検索される2つについて、正直に書きます。

マッサージ——一次資料が見つかりませんでした

バストアップマッサージや育乳マッサージの有効性を検証した学会資料・公的資料を探しましたが、引用できる一次資料は見つかりませんでした。検索して出てくるのは、その施術を提供している側の記事です。当サイトの方針では、根拠として使えません。

ですので「効果がない」とも「ある」とも、この記事では書けません。調べた範囲では確かめようがなかった、というのが正確なところです。

ただし、気に留めておきたい記述はあります。体育学研究の総説が引用しているMasonらの報告には、「運動による繰返しの負荷が、乳房を支えるクーパー靱帯などの損傷および乳房下垂につながるとされる」とあります。繰り返し力を加えることは、支持組織にとっては負荷の側の要因だということです。強く揉むことをすすめる材料は、少なくとも見当たりませんでした。

大胸筋のトレーニング——「していないから垂れる」ではありませんでした

まず前提として、乳房そのものは筋肉ではありません。総説の説明では「乳房は皮下組織内の汗腺が変形したもので、腺組織、線維性の間質、脂肪からなり」、そして「女性の乳房には筋肉がないため解剖学的なサポートは限られている」とされています。鍛えられるのは、その下にある大胸筋です。

そして13章で見たRinkerらの研究では、「定期的な上半身の運動をしていないこと」は、乳房下垂の有意な危険因子ではありませんでした。「筋トレをしていないから垂れる」という関係は、この研究では確認されていません。

もちろん、これは運動をやめる理由にはまったくなりません。運動には筋力・骨密度・代謝・睡眠・気分と、数え切れないほどの利益があります。当サイトでも40代からの代謝と筋肉骨粗鬆症で書いてきました。

ただ、「バストのために筋トレをする」という目的設定は、この研究では支えられていない——そこだけが、この章で言えることです。

結局、確かめられることは何か。

この記事を通して、一次資料で裏づけがあったのは次の3つでした。

① サイズの合ったブラを選ぶこと(85%が合わないものを選んでいた)
② 運動するときはスポーツブラを着けること(総説の結論)
③ 禁煙と、大幅な体重の増減を繰り返さないこと(下垂の危険因子)

地味ですが、これが今日から確かめられて、費用もほとんどかからない範囲です。

16. 🚨 受ける前に確認する5つと、困ったときの相談先

それでも施術を検討する場合に、確認できることをまとめます。すべて診療指針に書かれていることです。

確認することなぜ、それを聞くのか
1. 診療指針での推奨度はヒアルロン酸と非吸収性充填剤は「行わないことを強く推奨する」と書かれています(3章)
2. 使う製剤の製品名と、国内承認はヒアルロン酸による乳房増大は世界的に承認品が存在しません(4章)
3. 施術後の乳がん検診はどうなりますか対策型検診を断る市区町村があります。追加でどの検査が必要になるかも(5章)
4. 施術前に乳がんの検査をしますか指針は40歳以上・家族歴のある方には事前のスクリーニングが望ましいとしています(5章)
5. 取り出すときはどうなりますか非吸収性充填剤の除去は乳房切除および再建が必要となることも多いとされています(6章)

こんなときは、医療機関へ

記録を残してください。

施術日、医療機関名、施術名、製品名、注入部位と量。同意書と明細をまとめて保管します。

何年もあとに乳房のしこりで受診したとき、「何がどこに入っているか」が分かることが、診断を大きく助けます。画像で異物が見つかっても、正体が分からないと対応が難しくなります。

どこに相談すればいいのか

同じ指針の第6章に、公的な相談先が明記されています。

「医療(美容医療を含む)に関する苦情や相談に対応する行政機関として、都道府県等が設置している医療安全支援センターがある」

美容医療も明確に対象で、全国に設置されています。まず施術を受けた医療機関に連絡し、そのうえで対応に納得できないときや、どこに相談してよいか分からないときに、この窓口があります。

健康食品や定期購入のトラブルについては、消費者ホットライン「188(いやや!)」から、お住まいの地域の消費生活センターにつながります。

同じ診療指針の他の章については、シワ・タルミの美容医療医療脱毛にまとめています。有害事象の実態調査の数字や、指針が自ら書いている利益相反の話も、そちらに書きました。

17. よくある質問

授乳すると胸が垂れる、というのは本当ですか?

それを正面から調べた研究があり、結論は「支持されない」でした。Rinkerらは、美容外科を受診した経産婦93名について、妊娠歴・授乳歴・体重の変化を電話で聞き取り、手術前の標準化された写真から下垂の程度を判定して、多変量解析を行いました。その結果、乳房下垂の独立した危険因子として有意だったのは、年齢が高いこと、BMIが高いこと、妊娠回数が多いこと、妊娠前のブラサイズが大きいこと、そして喫煙でした。授乳歴は、独立した危険因子として認められませんでした。論文の結論はこう書かれています。「乳房下垂のリスクは妊娠のたびに高まるが、授乳がその影響を悪化させるようには見えない。これから母親になる人は、授乳が乳房の見た目に悪影響を与えるようには見えないと安心してよい」。同じ研究グループが132名を対象に行った別の解析でも、有意な危険因子は年齢・23kg以上の大幅な体重減少歴・高いBMI・大きなカップサイズ・妊娠回数・喫煙歴で、授乳歴と妊娠中の体重増加は有意ではありませんでした。つまり、変化を起こしているのは授乳ではなく妊娠そのもの、そして体重の増減や喫煙といった要素だということです。授乳をあきらめる理由にはならない、というのがこの研究の伝えていることです。

ブラのサイズは、自分で測れば十分ではないですか?

研究が示しているのは、自分の感覚での選択はかなりの確率でずれる、ということです。体育学研究に掲載された総説(2024年)が、複数の調査をまとめています。一般女性104名を対象に、専門家によるフィッティングと自己選択によるサイズを比べた研究では、85%が適切ではないサイズを選択していました。18〜26歳の30名を対象にした調査では、自己選択によるサイズは70%が適正より小さく、10%が大きいという結果でした。傾向としては、アンダーバストは小さく、カップサイズは大きいものを選びがちだと報告されています。アスリートでも同じです。コンタクトフットボール選手112名のうち87%はスポーツブラを着用していましたが、専門家の評価ではそのうち52%がフィッティング基準を満たしていませんでした。ロンドンマラソンに出場した女性ランナー1,285名の調査では、75%がブラのフィット感に問題を感じており、その多くがブラとのすき間による摩擦や肩紐の食い込みによるものでした。総説はこう結論しています。「フィットしていないスポーツブラの着用は、ズレによる摩擦や乳房変位抑制効果が低くなり、乳房痛などを引き起こす。そのため、プロによる測定など適切なサイズ選択ができるようにする必要がある」。一度お店で測ってもらう価値は、十分にあります。

バストアップサプリは飲んでも大丈夫ですか?

国民生活センターが2017年に報道発表を出しており、そこには「安易な摂取は控えましょう」と書かれています。対象になったのはプエラリア・ミリフィカという植物の貯蔵根を配合した健康食品です。全国の消費生活センターに寄せられた危害情報は、2012年度以降の5年間あまりで209件。被害者はほぼ全員が女性で、20歳代が33%、40歳代が20%、30歳代が20%、10歳代が18%。そして全員が通信販売で購入していました。内容は消化器障害や皮膚障害のほか、月経不順や不正出血といった女性特有の生理作用への影響が目立ちました。商品テストの結果も出ています。12銘柄中10銘柄でエストロゲン活性がみられ、プエラリア・ミリフィカに特有のデオキシミロエストロールという成分は、大豆などのイソフラボン類より約1,000〜10,000倍の強いエストロゲン活性を持つとされています。3銘柄には身体に作用を及ぼす可能性が考えられる量が含まれていました。海外の扱いも参考になります。EUでは新規食品として未承認のため販売できず、韓国では女性ホルモン様作用を持つとの理由で食品への使用が禁止されています。さらに動物試験では、乳腺や子宮内膜の異常増殖が認められ、乳腺の発がんを促進したという報告も出ています。妊娠中・授乳中・小児の利用は避けるべきだとされています。当サイトは、この種の広告を掲載していません。

胸を大きくするマッサージや、大胸筋のトレーニングは効果がありますか?

まずマッサージについてですが、有効性を検証した学会資料や公的資料を探した範囲では、一次資料は見つかりませんでした。出てくるのは施術を提供している側の記事ばかりで、当サイトの方針では根拠として使えません。ですので「効果がない」とも「ある」とも、この記事では書けません。ただし、気に留めておきたい記述はあります。体育学研究の総説が引用しているMasonらの報告では、運動による繰返しの負荷が、乳房を支えるクーパー靱帯などの損傷および乳房下垂につながるとされています。繰り返し強い力を加えることは、支持組織にとっては負荷の側の要因だということです。強く揉む行為をすすめる材料は、少なくとも見当たりませんでした。次にトレーニングです。乳房そのものは腺組織・線維性の間質・脂肪からできており、筋肉ではありません。そして乳房下垂の危険因子を調べたRinkerらの研究では、132名を解析した結果、定期的な上半身の運動をしていないことは、下垂の有意な危険因子ではありませんでした。つまり「筋トレをしていないから垂れる」という関係は確認されていません。もちろん運動そのものには別の多くの利益がありますので、やめる理由にはなりません。ただ、バストのために筋トレをするという目的設定は、この研究では支えられていない、ということです。

豊胸手術を受けたあと、乳がん検診はどうなりますか?

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。美容医療診療指針には、こう書かれています。「乳房増大術を受けられた方の対策型乳癌検診を断る市区町村もあるため、施術前に十分に情報を提供し、必要に応じて乳腺外科医と協力して施術後のフォローアップを行うことも考慮する」。つまり、自治体の検診を受けられなくなる可能性が現実にあるということです。理由は画像に写り込むからです。ヒアルロン酸製剤はマンモグラフィで放射線不透過像として乳腺に重なり、乳腺の全体的な濃度上昇や複数箇所の高濃度陰影として写ります。超音波では囊胞様に見え、良性腫瘤に似ることも、囊胞内癌などの悪性病変に似ることもあります。指針は「注入されたヒアルロン酸製剤が妨げとなり、マンモグラフィによる乳癌の診断が難しくなることが指摘されている」と記しています。そのためCQ3-1-2では、マンモグラフィに加えて超音波検査やMRIなどの画像検査が必要となる場合がある、とされています。加えて指針は「乳房増大術を受けられた方は検診や医療機関の受診を躊躇する傾向がある」とも書いており、診断のついていない乳がんに注入を行って診断の遅れや治療の困難につながった症例報告にも触れています。40歳以上の方や乳がんの家族歴がある方は、施術前に乳がんのスクリーニング検査を受けておくことが望ましいとされています。

参考資料

なぎ先生

内科系の臨床に15年ほど携わる医師。生活習慣病・ホルモン・栄養の相談を日常的に受けています。中立性の担保と診療継続のため、ペンネームで執筆しています。→ 運営者について

この記事は健康情報の提供を目的としたものであり、診断・治療に代わるものではありません。本文で紹介した推奨度・推奨文・承認状況・生着率・合併症率は「美容医療診療指針(令和3年度改訂版)」(令和3年度厚生労働科学研究費補助金/5学会共同作成)に、乳房痛やブラのサイズ選択に関する記述は体育学研究69:97-108(2024年)に、バストアップサプリに関する記述は国民生活センターの2017年7月13日報道発表に、乳房下垂の危険因子に関する記述はRinkerらの2008年・2010年の論文にもとづくもので、いずれも公開時点の情報です。承認状況や自治体の検診の扱いは変わることがありますので、実際の判断にあたっては医療機関や自治体にご確認ください。本記事は特定の施術・製品・医療機関を推奨するものでも、否定するものでもありません。乳房のしこり・皮膚のひきつれ・乳頭からの分泌などの症状は、施術歴の有無にかかわらず乳腺の診察が必要です。健康食品の摂取により体調に異常を感じた場合は、直ちに摂取を止めて医療機関を受診してください。掲載内容の誤りにお気づきの際はお問い合わせからお知らせください。