1. 先に結論
| よくある思い込み | 資料の記述 |
|---|---|
| HPV検査は細胞診より新しいから、細胞診はもう不要 | 細胞診も推奨グレードA。20〜69歳、2年ごと |
| 細胞診とHPV検査を両方受けるのがいちばん安心 | 併用法は推奨C。偽陽性が1,000人あたり101人増え、不利益が最大 |
| 5年に1回では間隔が空きすぎる | HPV検査は、検診の間隔を細胞診の2〜3倍に延ばすことが可能。ただし陽性者の追跡が前提 |
| HPV検査で陽性=がん | HPV感染は多くの場合一時的で、陽性でもほとんどの場合はがんに進まない |
| 自分で採る検査キットでも同じ | 細胞診は医師採取のみで自己採取は認めない。HPV検査の自己採取は国内のエビデンスが不足 |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
子宮頸がん検診は、お住まいの自治体の方式(細胞診2年ごと、またはHPV検査5年ごと)で、決められた間隔どおりに受けるのがいちばんです。HPV検査で陽性になっても慌てず、案内された追跡の検査を必ず受けてください。
2. 3つの検診方法と推奨グレード
この記事で主に使う資料は、国立がん研究センター がん対策研究所の「有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドライン 2019年度版」と、厚生労働省の「がん検診のあり方に関する検討会」の資料、そこで示された「対策型検診におけるHPV検査単独法による子宮頸がん検診マニュアル」(2024年2月)です。
偽陽性とは、精密検査が必要と判定されたものの、実際にはがんや前がん病変がなかった場合のことです。
日本産科婦人科学会によると、ほとんどの子宮頸がんはHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染が原因です。HPV検査は、このウイルスの感染の有無を調べる検査です。ガイドラインは、HPV検査単独法について「検診の間隔を2~3 倍に延長することが可能である。」と書いています。
3.【核心】「全部受ける」が最善ではない理由
「細胞診とHPV検査、両方受ければいちばん安心では」と思う方は多いと思います。ガイドラインの答えは推奨Cでした。
「細胞診に比べて偽陽性率が更に上昇、1,000 人あたりの偽陽性は101 人増加し、不利益として3 つの手法のなかで最大となる。」
偽陽性が増えると、本当は必要のなかった精密検査(コルポスコピーと呼ばれる拡大鏡での観察や、組織を採る検査)を受ける人が増えます。HPV検査の検診マニュアルは、偽陽性の人は結果的には不必要な精密検査を受けたことになり、その精密検査で合併症が起こる可能性もあると説明しています。
もう一つの不利益が過剰診断です。マニュアルは、子宮頸がんやその前がん病変には「自然に消失するもの、全く進行しないもの、進行が遅すぎて症状が発現しないものもある」ため、過剰診断が起こると書いています。
そして、HPV検査単独法にも条件がついています。
「評価した研究で得られた効果は、HPV 陽性者に対する長期の追跡を含む精度管理体制の構築が前提であり、遵守できない場合は効果が細胞診単独法を下回る可能性がある。」
つまり、HPV検査は陽性になった人が、決められた追跡の検査をきちんと受けて、はじめて効果を発揮する方法です。5章の流れを、ぜひ知っておいてください。
4. 市区町村の検診は、30歳から2つの方式に
市区町村の子宮頸がん検診は、これまで20歳以上・2年に1回の細胞診でした。厚生労働省の検討会では、HPV検査単独法の導入にあたって、次のように整理されています。
| 年代 | 市区町村の検診で実施する検査 |
|---|---|
| 20歳代 | 細胞診(2年に1回) |
| 30歳以上 | 細胞診(2年に1回)またはHPV検査単独法(5年に1回)のいずれかを市区町村ごとに判断 |
HPV検査の開始が30歳からなのは、検診マニュアルによると、HPV検査の陽性率が25〜29歳では24.5〜27.7%と、30歳以上(12.1〜14.9%)より大きく高いことなどが理由です。60歳で終わるのは、60歳以上での新たな感染が少ないことなどによります。
マニュアルは、5年に1回の受診案内の方法として、30歳から5歳刻みの年齢(節目年齢)の人に受診を勧め、節目の年に受けられなかった人には別の年にも受診の機会をつくる方法を勧めています。お住まいの市区町村がどちらの方式か、自分がいつ対象になるかは、自治体の案内で確認してください。
5. HPV検査が陽性だったら
HPV検査で陽性になると、不安になると思います。検診マニュアルは、受ける人に前もって説明すべきこととして、こう書いています。
「HPV 感染は多くの場合一過性であり、またHPV 検査陽性であってもほとんどの場合は子宮頸がんに進展しないが、経過を観察する必要があること、また確定精検でCIN といった前がん病変が検出されても多くは自然退縮してがんにはならないことなどを説明しておく必要がある。」
追跡のHPV検査で再び陽性の場合などの、その先の流れは省略しています。
大切なのは、陽性だったら、細胞診や1年後の追跡検査を必ず受けることです。3章で見たとおり、HPV検査の効果は陽性者の追跡が前提だからです。ガイドラインは、追跡を含む体制が守られない場合、効果が細胞診だけの検診を下回る可能性があるとしています。
マニュアルは、HPVは性交で感染する可能性が高いため、HPV検査の結果についてパートナーとの関係に関わる不安を感じる人がいることも報告しています。陽性の結果は、ほとんどの場合がんを意味しません。不安なことは、検診を受けた医療機関や自治体の窓口で相談してください。
6. 自分で採る検査は?
インターネットなどで、自分で検体を採るタイプの検査を見かけることがあります。ガイドラインはこう書いています。
| 方法 | ガイドラインの記述 |
|---|---|
| 細胞診 | 検体は医師採取のみとし、自己採取は認めない。 |
| HPV検査単独法 | 検体は医師採取を原則とする。自己採取は国内でのエビデンスが不足しており、受診率の向上や精密検査につながるかなどの研究が必要 |
| 併用法 | 細胞診の自己採取法の精度が著しく低いことから、自己採取法による併用法は行わない |
ガイドラインは、自己採取のHPV検査について、検査キットの提出率は上がることが期待できる一方、その後に医療機関で精密検査を受けるかどうかは評価されていないとしています。検診は、陽性の人が精密検査を受けるところまで含めて一つのしくみです。
7.【内科医の視点】検診の対象にならない人
内科医として、ここはぜひ知っておいてほしいところです。がん検診は症状のない人が受けるものです。HPV検査の検診マニュアルは、子宮頸部の病気やその疑いで医療機関に通院している人は検診の対象外としています。
不正出血など症状がある方は、検診の時期を待たずに産婦人科を受診してください。日本産科婦人科学会は、子宮頸がんが進むとおりものの異常、月経以外の出血、性交時の出血、下腹部の痛みなどを自覚するようになるとしています(→40代からの不正出血)。また、子宮頸がん検診では、子宮の奥にできる子宮体がんは調べられません。その点も同じ記事で書いています。
検体を採るときについても、マニュアルは触れています。へらやブラシで細胞を採るとほぼ全例で出血を伴うが、多くの場合1週間程度で自然に止まること、血液を固まりにくくする薬(ワルファリン、アスピリンなど)を飲んでいる人は出血が止まりにくい場合があるが、検体採取は禁忌ではなく、薬の中止も不要とされています。服用している薬は、受診のときに伝えてください。
なお、性交経験が一度もない女性はHPV感染も子宮頸がんのリスクも極めて低いため対象外としてよいが、説明を受けたうえで希望する場合は対象としてよい、とされています。
8. 受診したほうがよいとき
医療機関で相談・受診したいとき(資料の記述から)
・HPV検査で陽性だった → 案内された細胞診・追跡検査を必ず受ける
・細胞診で精密検査が必要と言われた
・おりものの異常、月経以外の出血、性交時の出血、下腹部の痛みなど症状がある(検診ではなく受診)
・検体を採ったあとの出血が長く続く(血液を固まりにくくする薬を飲んでいる方は、前もって伝える)
5つのがん検診の全体像はがん検診の記事、大腸と肺は便潜血検査と大腸がん検診、肺がん検診で書いています。
なお、卵巣がんには国の指針で定められた検診がありません。気づきにくいサインは卵巣の腫れ・卵巣がんで書いています。
最後に、この記事の要点をもう一度。
① 細胞診(20〜69歳・2年ごと)も、HPV検査単独法(30〜60歳・5年ごと)も推奨A
② 両方を受ける併用法は推奨C。偽陽性が1,000人あたり101人増える
③ 市区町村は30歳以上で細胞診かHPV検査単独法かを選ぶ。自治体の案内を確認
④ HPV検査が陽性でも、ほとんどはがんに進まない。追跡の検査は必ず受ける
⑤ 細胞診の自己採取は認められていない
⑥ 症状がある人は、検診ではなく受診
9. よくある質問
子宮頸がん検診は、細胞診とHPV検査のどちらがいいですか?
国立がん研究センターの「有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドライン 2019年度版」は、細胞診(20〜69歳・2年ごと)とHPV検査単独法(30〜60歳・5年ごと)をどちらも推奨グレードAとしています。HPV検査単独法は検診の間隔を延ばせる一方、陽性者を長期に追跡する体制が前提です。市区町村の検診では、30歳以上でどちらの方式にするかを自治体ごとに判断することになっているので、自治体の案内を確認してください。
細胞診とHPV検査を両方受けたほうが安心ですか?
ガイドラインは、細胞診とHPV検査の併用法を推奨グレードCとしています。細胞診だけの場合に比べて偽陽性が1,000人あたり101人増え、不利益が3つの方法のなかで最大になるためです。偽陽性が増えると、本当は必要のなかった精密検査を受ける人が増えます。
HPV検査で陽性と言われました。がんなのでしょうか?
厚生労働省の研究班がまとめたHPV検査単独法の検診マニュアルは、HPV感染は多くの場合一過性で、HPV検査が陽性でもほとんどの場合は子宮頸がんに進まないとしています。精密検査で前がん病変が見つかっても、多くは自然に退縮するとされています。ただし経過を観察する必要があるため、陽性の場合は案内された細胞診や1年後の追跡検査を必ず受けてください。
自分で採るタイプの検査キットでもいいですか?
ガイドラインは、細胞診の検体は医師採取のみとし、自己採取は認めないとしています。HPV検査も医師採取が原則で、自己採取については国内のエビデンスが不足しており、受診率の向上や精密検査の受診につながるかの研究が必要とされています。
検査のあとに出血しましたが、大丈夫ですか?
HPV検査単独法の検診マニュアルによると、へらやブラシで細胞を採ると、ほぼ全例で出血を伴いますが、多くの場合1週間程度で自然に止まります。血液を固まりにくくする薬を飲んでいる人は止まりにくい場合がありますが、検体採取は禁忌ではなく薬の中止も不要とされています。出血が長く続く場合は、検査を受けた医療機関に相談してください。
参考にした主な資料
- 国立がん研究センター がん対策研究所「有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドライン 2019年度版」
- 厚生労働省 第40回がん検診のあり方に関する検討会 資料1「子宮頸がん検診へのHPV検査単独法導入について」(2023年12月18日)
- 令和5年度 厚生労働科学研究費補助金 研究班「対策型検診におけるHPV検査単独法による子宮頸がん検診マニュアル」(2024年2月・第41回がん検診のあり方に関する検討会 参考資料4)
- 日本産科婦人科学会「子宮頸がん」(2025年1月30日更新)