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MEDICALLY REVIEWED BEAUTY & HEALTH
検査と数値

閉経とコレステロール
——50歳を境に、女性の数値は男性を追い越します

若いころはずっと「異常なし」だったのに、50歳を過ぎたら健診でLDLコレステロールに印が付いた。食生活は変わっていないのに——そんな方に向けた記事です。
日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022」には、女性だけの章があります。そこにはこう書かれています。女性のLDLコレステロールは、50歳前は男性より低いのに、50歳以後に上昇して男性より高くなる。
そして、喫煙や糖尿病は、男性より女性で心筋梗塞のリスクを大きく上げること。女性の予防では、薬より生活習慣の改善が中心になること。
閉経で体の中に何が起きるのか、そして何をすればいいのかを、ガイドラインから整理します。

執筆:なぎ先生(内科医) 公開:2026年10月10日 読了:約13分

1. 先に結論

よくある思い込みガイドラインの記述
女性はコレステロールが高くなりにくい50歳前は男性より低いが、50歳以後に上昇して男性より高値になる
女性は心臓病にならない発症率は男性より低いが、発症後の死亡率は女性が男性より高いと報告されている
たばこの害は男女同じ心筋梗塞などのリスクは男性のオッズ比4.0に対し、女性は8.2
数値が高ければすぐ薬女性では一次予防で薬の効果が男性ほど明らかでなく、生活習慣改善が治療の中心
食事はコレステロールを減らすだけ魚油・食物繊維・果糖を含む加工食品を減らす・日本食パターンが、いずれも推奨レベルA

この記事でいちばんお伝えしたいこと。

50歳前後でLDLコレステロールが上がるのは、多くの女性に起こる変化です。慌てる必要はありませんが、見過ごしてもいけません。まず禁煙と食事の見直し、そして血圧・血糖の管理を。数値によっては、家族歴などを含めて医師と相談してください。

2.【核心】50歳を境に、女性の数値は男性を追い越す

ガイドラインの第8章「女性」は、令和元年の国民健康・栄養調査をもとに、男女の脂質の変化をこう書いています。

「LDL-Cとnon-HDL-Cは男性では特徴的な経年的変化はないが、女性の場合、平均閉経年齢である50歳前では男性より低値であるが、50歳以後に上昇して男性より高値となる。」

「TGも同様で50歳前は男性が高値で推移するが、女性の場合、50歳を過ぎると上昇して男性の値に近づく。」

50歳を境に、女性の脂質はこう変わります 男性と比べたときの女性の値(ガイドライン第8章の記述を図にしたもの) 50歳前 50歳以後 LDLコレステロール 男性より低い 上昇して男性より高い non-HDLコレステロール 男性より低い 上昇して男性より高い 中性脂肪(TG) 男性のほうが高い 上昇して男性に近づく HDLコレステロール 女性が高いまま。大きな変化はない 出典:日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022」第8章(令和元年国民健康・栄養調査報告にもとづく記述)

50歳は、ガイドラインが「平均閉経年齢」として示している年齢です。数値の大きさではなく、男女の関係の変化を示した図です。

理由について、ガイドラインは閉経を契機に脂質代謝に変動をきたす大きな要因の1つにエストロゲン低下が関連すると考えられている、と書いています。女性ホルモンが、もともとLDLコレステロールを低く保つ方向に働いていた、ということです。

つまり、50歳前後で健診のLDLに印が付き始めるのは、食べすぎや運動不足だけのせいではありません。閉経という体の変化そのものが関わっています。更年期の体の変化全体については40代からの体の変化でもまとめています。

3. 女性にとっても、コレステロールは危険因子です

「女性は心臓病になりにくいから、コレステロールは気にしなくていい」という話を聞くことがあります。ガイドラインは、日本人女性を対象にした研究をまとめています。

そのうえで、こう結論しています。

「以上よりTC、LDL-C、TG、non-HDL-Cなどの異常は日本人女性においても冠動脈疾患発症の重要な危険因子であると考えられる。」

4. 女性の心臓病・脳梗塞の特徴

ガイドラインが示す、日本人女性の動脈硬化性疾患の特徴をまとめます。

病気ガイドラインの記述
死因女性の死因は悪性新生物(がん)が1位だが、心疾患と脳血管障害を併せた死亡数・死亡率は悪性新生物よりも多い
心筋梗塞女性の発症率は男性の20〜50%。閉経後に増えるが、それでも男性よりリスクは低い。ただし発症後の死亡率は女性が男性より高いと報告されている
脳梗塞女性は男性の50〜70%程度だが、加齢とともに増え、75歳以上では男性の60〜90%まで差が縮まる

「女性は心臓病が少ない」は、若い世代では正しくても、年齢を重ねるほど当てはまらなくなる、ということです。ガイドラインは、女性は男性より長寿であり、動脈硬化性疾患の生涯リスクを考慮して早期からの管理が特に重要だとしています。

5. 喫煙と糖尿病は、女性でより危険

この章でいちばん驚かれるのが、喫煙と糖尿病の数字です。

男性女性
喫煙と急性冠症候群(JACSS)オッズ比 4.0オッズ比 8.2
糖尿病と心筋梗塞(JACCS)オッズ比 2.90オッズ比 6.12

動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022 第8章より。研究によって指標は異なります。

喫煙について、ガイドラインは日本の研究で女性でも喫煙者の心筋梗塞発症率は非喫煙者の3〜8倍だったとし、喫煙の影響は男性よりむしろ女性で大きいと報告されている、と書いています。一方で、禁煙するとその影響は低下すること、禁煙による動脈硬化リスクの低下は年齢にかかわらず認められることも示されています。

糖尿病についても、わが国の研究を含むメタ解析で、女性の冠動脈疾患のリスクは男性より44%、全脳卒中のリスクは27%高いと報告されています。血糖の数字の見方は糖尿病予備軍の記事で整理しています。

そして高血圧は、女性の脳梗塞の重要な危険因子です。高血圧の患者数は60歳以降、女性が男性を上回るとされています。閉経後はLDLも上がるので、血圧の管理も大切になります(家庭血圧の測り方)。

6. 健診の数字の見方

ガイドラインの脂質異常症の診断基準は、次のとおりです。

項目基準
LDLコレステロール140mg/dL以上(120〜139は境界域)
HDLコレステロール40mg/dL未満
中性脂肪(TG)空腹時 150mg/dL以上/随時 175mg/dL以上
non-HDLコレステロール170mg/dL以上(150〜169は境界域)

「空腹時」は基本的に10時間以上の絶食(水やお茶などカロリーのない水分は可)。空腹時であることが確認できない場合が「随時」です。

ただし、この数字は「この値を超えたら薬」という線ではありません。どこまで下げることを目指すかは、年齢・血圧・糖尿病・喫煙などのリスクの組み合わせで決まります。健診の結果票と、ガイドラインの数字の違いについてはコレステロールの記事で詳しく書いています。LDLが180以上など特に高い場合や、家族に若くして心筋梗塞を起こした人がいる場合は、家族性高コレステロール血症の可能性も含めて、同じ記事を参考にしてください。

7. 女性では、薬より生活習慣が中心

LDLを下げる代表的な薬はスタチンです。ところがガイドラインは、女性について次のようにまとめています。

「女性においてスタチンによる動脈硬化性疾患の初発予防効果は男性に比べ明らかでなく、生活習慣改善が治療の中心となる。ただし家族性高コレステロール血症、二次予防患者、ハイリスクと考えられる一次予防患者などでは薬物治療を考慮する。」

根拠の一つは、27試験・約17万4千人をまとめた解析です。病気の既往のない人で、LDLを38.7mg/dL下げるごとの心血管疾患リスクは、男性では0.72と有意に低下しましたが、女性は0.85と低下傾向にとどまりました。一方、すでに心筋梗塞などを起こした人(二次予防)では、女性も男性と同様に有意な低下が見られています。

閉経前の女性については、続発性脂質異常症の鑑別と生活習慣改善による対応が基本とされています。続発性とは、甲状腺の病気や薬など、ほかの原因でコレステロールが上がっている状態のことです(甲状腺の記事)。また、スタチンは妊婦・授乳婦への投与は禁忌です。

「薬を飲まなくていい」という意味ではありません。家族性高コレステロール血症の方、すでに心筋梗塞や脳梗塞を起こした方、糖尿病などでリスクの高い方は、薬が必要になります。自分がどこに当てはまるかは、医師と確認してください。

8. 推奨レベルAの食事——魚・食物繊維・果糖・日本食

生活習慣が中心なら、何を食べればいいのか。ガイドラインは食事について多くの問い(FQ)を立てていて、そのうち次の4つはいずれも推奨レベルAです。

食事ガイドラインの推奨(推奨レベルA)
魚(魚油)「トリグリセライドの低下を目的に、n-3系多価不飽和脂肪酸のうち魚油摂取量を増やすことを推奨する。」
食物繊維「血清脂質の改善のために、食物繊維の摂取を増やすことを推奨する。」
果糖を含む加工食品摂取量を減らすことで中性脂肪の低下が期待できるため、その摂取を減らすことを推奨
日本食パターン肉の脂身や動物脂、加工肉を控え、大豆、魚、野菜、海藻、きのこ、果物、未精製穀類を取り合わせて食べる減塩した日本食パターンの食事を推奨

果糖を含む加工食品については、砂糖の入った飲み物を多くとる人ほど、心血管疾患や2型糖尿病などのリスクが高いという研究が多いことが紹介されています(研究によって結果は必ずしも一致していないとも書かれています)。果物についても、TGと尿酸の上昇の可能性を考慮し果物の過剰摂取は控えるとされています。

中性脂肪が高い場合の食事として、ガイドラインはさらに、アルコールの過剰摂取を制限すること、n-3系の脂肪酸の摂取を増やすことを挙げています。お酒の量の測り方はお酒とγ-GTPの記事にまとめました。

このうち魚は、日々の献立に取り入れやすい一手です。焼き魚や刺身のほか、骨まで食べられる缶詰も使えます。

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この章で紹介した魚(魚油)を食事でとるための食品です。動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022は、「トリグリセライドの低下を目的に、n-3系多価不飽和脂肪酸のうち魚油摂取量を増やすことを推奨する。」としています(推奨レベルA)。

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9. ホルモン補充療法(HRT)との関係

エストロゲンが下がることで脂質が変わるなら、エストロゲンを補えばいいのでは——と考える方もいると思います。ガイドラインは、ホルモン補充療法(HRT)についてこう整理しています。

心筋梗塞や脳卒中の既往がある方はHRTの禁忌、60歳以上や閉経後10年以上での新規開始、重度の高TG血症などは慎重投与とされています。HRTそのものについては更年期の治療の選択肢で詳しく書いています。HRTはコレステロールを下げるための治療ではなく、更年期の症状に対する治療です。婦人科で相談してください。

最後に、この記事の要点をもう一度。

① 女性のLDLは50歳以後に上昇して男性より高くなる。中性脂肪も男性に近づく

② 理由の一つはエストロゲンの低下。食べすぎだけのせいではない

③ コレステロールは日本人女性でも冠動脈疾患の重要な危険因子

④ 喫煙と糖尿病は、女性で心筋梗塞のリスクをより大きく上げる

⑤ 女性の一次予防は生活習慣改善が中心。ただし高リスクの人には薬も

⑥ 食事は魚・食物繊維・果糖を減らす・減塩した日本食(いずれも推奨レベルA)

10. よくある質問

50歳を過ぎてLDLコレステロールが急に上がりました。食事のせいですか?

食事だけのせいとは限りません。動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022によると、女性のLDLコレステロールは、平均閉経年齢である50歳前は男性より低いのに、50歳以後に上昇して男性より高値になります。中性脂肪も50歳を過ぎると上昇して男性の値に近づきます。その大きな要因の1つにエストロゲンの低下が関わると考えられています。ただ、上がったLDLを放置してよいわけではありません。コレステロールは日本人女性でも冠動脈疾患の重要な危険因子とされているので、健診の結果を持って医師に相談し、食事や生活習慣を見直してください。

LDLが高いと言われたら、すぐに薬を飲むべきですか?

女性の場合、多くはまず生活習慣の改善からです。ガイドラインは、女性ではスタチンによる動脈硬化性疾患の初発予防効果が男性に比べて明らかでなく、「生活習慣改善が治療の中心となる」としています。ただし、家族性高コレステロール血症の方、すでに心筋梗塞や脳梗塞を起こした方、ハイリスクと考えられる方では薬物治療を考慮するとされています。LDLが特に高い、家族に若くして心筋梗塞を起こした人がいる、糖尿病や高血圧があるといった場合は、医師と相談して判断してください。なお、スタチンは妊婦・授乳婦には禁忌です。

たばこは、女性にとってどれくらい危険ですか?

ガイドラインによると、急性冠症候群についての日本の研究(JACSS)で、喫煙のオッズ比は男性4.0に対し、女性8.2でした。日本の研究では、女性でも喫煙者の心筋梗塞発症率は非喫煙者の3〜8倍とされ、喫煙の影響は男性よりむしろ女性で大きいと報告されています。一方で、禁煙するとその影響は低下し、動脈硬化リスクの低下は年齢にかかわらず認められるとされています。いつやめても遅くはありません。

コレステロールや中性脂肪のために、どんな食事がいいですか?

ガイドラインで推奨レベルAとされているのは、魚(魚油)の摂取を増やす(中性脂肪の低下が目的)、食物繊維の摂取を増やす、果糖を含む加工食品を減らす、そして肉の脂身や動物脂・加工肉を控え、大豆・魚・野菜・海藻・きのこ・果物・未精製穀類を取り合わせる減塩した日本食パターンです。中性脂肪が高い場合は、アルコールの過剰摂取を制限することも挙げられています。果物はTGと尿酸の上昇の可能性を考えて、とりすぎは控えるとされています。

ホルモン補充療法(HRT)をすれば、コレステロールは下がりますか?

HRTは、コレステロールを下げるための治療ではなく、更年期の症状に対する治療です。ガイドラインは、エストロゲンの脂質代謝や血管機能の改善効果は証明されているとする一方で、大規模試験(WHI)では脳梗塞や冠動脈疾患のリスクの増加が見られたことを紹介しています。ただしそのリスクの増加は年齢に依存し、60歳未満の女性では有意な増加は見られませんでした。日本女性医学学会の管理指針では、脂質異常症があり更年期障害のある女性では、生活習慣の改善と同時にHRTが推奨されています。心筋梗塞や脳卒中の既往がある方は禁忌なので、婦人科で相談してください。

参考にした主な資料

凪
なぎ先生

内科系の臨床に15年ほど携わる医師。生活習慣病・ホルモン・栄養の相談を日常的に受けています。中立性の担保と診療継続のため、ペンネームで執筆しています。→ 運営者について

この記事は健康情報の提供を目的としたものであり、診断・治療に代わるものではありません。本文で紹介した数値・研究結果・推奨レベルは、日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」にもとづくもので、公開時点の情報です。脂質の管理目標や薬の必要性は、年齢・血圧・糖尿病・喫煙・家族歴などで一人ひとり異なります。服用中の薬を自己判断で中止・変更せず、医師・薬剤師にご相談ください。掲載内容の誤りにお気づきの際はお問い合わせからお知らせください。