1. 先に結論
| 論点 | 国と学会が書いていること |
|---|---|
| ダイエット目的で使える? | 「適応外で使用された場合の安全性及び有効性については確認されていません」(厚労省) |
| 副作用が出たら? | 🚨 「救済給付を受けられない可能性が非常に高い」(厚労省) |
| どんな副作用が? | 重大な副作用として低血糖症状・急性膵炎。頻度の高いものとして消化器症状 |
| 正規の薬はある? | あります(ウゴービ)。ただし肥満症以外での痩身目的には使用できません |
| 誰でも使える? | いいえ。BMI・健康障害・6か月以上の食事運動療法など複数の条件があります |
| ずっと使える? | いいえ。最大68週間。やめる前提で計画を立てることが求められています |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
この薬そのものは、必要な人にとっては価値のある薬です。否定するために書いているのではありません。
お伝えしたいのは、「適応の外で使うと、効果も安全性も確かめられていないうえに、何かあったときの公的な救済からも外れる」ということです。ここは費用や効果とは別の次元の話です。
2. GLP-1受容体作動薬とは何か
GLP-1は、もともと私たちの腸から出ているホルモンです。食事をとると分泌され、インスリンの分泌を促したり、胃の動きをゆっくりにしたり、満腹感に関わったりします。
この働きを利用した薬がGLP-1受容体作動薬で、日本では2型糖尿病の治療薬として開発され、承認されてきました。血糖を下げる過程で体重が減ることがあり、そこに注目が集まったという経緯があります。
ここで、いちばん基本的な事実を押さえてください。厚生労働省の記述です。
現在、製造販売されている別表のGLP-1受容体作動薬は、2型糖尿病のみを効能・効果として承認されていますが、それ以外の適応外で使用された場合の安全性及び有効性については確認されていません。
——厚生労働省「医薬品・医療機器等安全性情報 No.406」(2023年12月)
あとで触れるウゴービだけが例外で、こちらは肥満症を対象として承認されています。ただしそれも「痩せたい人なら誰でも」ではありません(8〜11章)。
3. 【核心】国が出している警告
厚生労働省は2023年12月、医薬品・医療機器等安全性情報という公式の文書で、この問題を正面から取り上げました。作成にあたったのは、医薬安全対策課・医薬品審査管理課・医薬品副作用被害対策室・医薬産業振興課・医政局総務課、そして消費者庁——省庁をまたいだ共同作成です。
昨今、2型糖尿病治療薬として製造販売承認されているGLP-1受容体作動薬について、美容・痩身・ダイエット等を目的とした使用を推奨していると受け取れる広告等がインターネット上の一部ホームページ等に掲載されており、2型糖尿病の治療以外の目的で使用されている実態が指摘されています。
〔…〕適応外で使用された場合であってもこうした副作用が生じるおそれがあります。さらに、これまでに知られていない思わぬ副作用につながる可能性も否定できません。
読み飛ばしそうになりますが、「これまでに知られていない思わぬ副作用につながる可能性も否定できません」——ここは重い一文です。
薬の安全性は、「その目的で、その対象に使ったとき」に調べられます。2型糖尿病の患者さんで確かめられた安全性は、糖尿病でない人が痩せる目的で使ったときの安全性を保証しません。それが「確認されていない」という言葉の意味です。
4. 【重要】救済制度が使えなくなります
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。費用や効果の話ではありません。
日本には医薬品副作用被害救済制度という公的な仕組みがあります。薬の副作用で入院が必要なほど重い健康被害が起きたとき、医療費や年金などを給付するものです。
ただし、対象には条件があります。
当該救済制度の救済対象は、医薬品の副作用のうち、医薬品を適正な使用目的に従い、適正に使用された場合に生じた健康被害に限られます。
このため、GLP-1受容体作動薬を添付文書等に記載の使用対象者でないにもかかわらず、適応外の美容・痩身・ダイエット等の目的で使用して、重篤な健康被害が生じたとしても、適正に使用したと認められず、この制度の救済給付を受けられない可能性が非常に高いため、ご注意ください。
——厚生労働省「医薬品・医療機器等安全性情報 No.406」
広告に費用は書いてあります。でも、この話が書かれていることは、まずありません。
5. 起こりうる副作用
厚生労働省が挙げているものです。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 🚨 重大な副作用 | 低血糖症状(脱力感、高度の空腹感、冷汗、顔面蒼白、動悸、振戦、頭痛、めまい、嘔気、視覚異常等) 急性膵炎 |
| 比較的頻度の高い副作用 | 悪心、嘔吐、下痢、便秘、腹痛などの消化器症状 |
| 未知のもの | 「これまでに知られていない思わぬ副作用につながる可能性も否定できません」 |
低血糖——糖尿病でない人が使ったとき、血糖がどう動くかは十分に検証されていません。運転中や仕事中に起きれば、それ自体が危険です。
急性膵炎——強い腹痛と背中の痛みで、入院が必要になる病気です。
そして消化器症状は「比較的頻度が高い」とされています。「食べられなくなるから痩せる」という説明を見かけますが、その実態が吐き気や嘔吐であるなら、それは効果ではなく副作用です。
6. 学会も繰り返し警告しています
日本糖尿病学会は、この問題について繰り返し見解を出してきました。2020年7月、2023年4月、そして2023年11月28日です。
今般、一部のクリニック等において、2型糖尿病治療薬であるGLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬を、適応外使用である美容・痩身・ダイエット等を目的として自由診療での処方を宣伝する医療広告が散見されます。
——日本糖尿病学会「GLP-1受容体作動薬およびGIP/GLP-1受容体作動薬の適応外使用に関する日本糖尿病学会の見解」(2023年11月28日)
また日本肥満学会からも、2023年11月25日付で「肥満症治療薬の安全・適正使用に関するステートメント」が公開されています。
学会が3年半のあいだに3度、同じ内容の見解を出し直しているという事実が、この問題の状況を示していると思います。
このサイトの見方。「学会が繰り返し否定しているのに、広告が続いている」——この構図は、アトピー性皮膚炎の記事で学会が「アトピービジネス」と名指しした状況や、変形性膝関節症でグルコサミンが「有効性はすべて否定的」と結論された状況と同じです。
広告の量と、根拠の強さは、比例しません。
7. 必要な人に、薬が届かなくなっている
もうひとつ、あまり語られない問題があります。
GLP-1受容体作動薬について、供給を上回る需要が増加している影響により一部の製剤において限定出荷が生じており、本来の2型糖尿病の治療目的での供給に支障が生ずる懸念があるとの指摘もなされています。
厚生労働省は2023年7月と11月に事務連絡を出し、医療機関・薬局・医薬品卸売販売業者に協力を求めました。その内容がかなり踏み込んでいます。
- 医療機関・薬局は買い込みを厳に控え、当面の必要量のみ購入すること
- 真に必要とする2型糖尿病の患者への供給が滞ることのないよう、適正使用に努めること
- 卸売販売業者は、注文を受けた際に承認された範囲の治療目的かを確認し、薬事承認範囲外の治療目的による使用であることが明らかな場合には納入をしないこと
卸売業者に「納入しないで」と国が求める——通常の在庫調整では、まず見ない表現です。
糖尿病の治療を続けている方にとって、この薬は生活を支えるものです。痩身目的の需要が、その供給を圧迫しているという構図があります。
8. 正規の肥満症治療薬という選択肢
ここまでは適応外使用の話でした。ここからは正規に承認された薬の話です。
2023年3月、ウゴービ皮下注(一般名:セマグルチド)が肥満症を対象として承認されました。同じGLP-1受容体作動薬ですが、こちらは肥満症の治療薬です。
ただし厚生労働省は、すぐにこう付け加えています。
本年3月に製造販売承認されたウゴービ®皮下注は、同じくGLP-1受容体作動薬ですが、肥満症を対象としたものであり、肥満症以外での痩身・ダイエットなどを目的に本剤を使用することはできません。
「肥満」と「肥満症」は違います
ここが分かれ目です。肥満症は病気の名前で、単に体重が多いこととは違います。厚生労働省の最適使用推進ガイドラインが挙げる肥満に関連する健康障害は、次の11です。
| (1)耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など) (2)脂質異常症 (3)高血圧 (4)高尿酸血症・痛風 (5)冠動脈疾患 (6)脳梗塞 |
(7)非アルコール性脂肪性肝疾患 (8)月経異常・不妊 (9)閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群 (10)運動器疾患 (11)肥満関連腎臓病 |
体型の問題ではなく、健康障害が起きている状態を治療する——それが肥満症治療です。
9. 【条件】誰が使えるのか
最適使用推進ガイドラインが定める投与対象を、そのまま整理します。以下のすべてを満たす必要があります。
注目していただきたいのが条件③です。
食事療法と運動療法を、先に6か月以上やる。しかも管理栄養士の栄養指導つきで。それでも足りなかった場合に、はじめて薬が検討されます。
「食事も運動もしなくていい薬」ではありません。むしろ逆で、食事と運動をきちんとやっている人にだけ開かれている選択肢です。
10. 【条件】どこで受けられるのか
施設にも要件があります。こちらも最適使用推進ガイドラインの定めです。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 診療科 | 内科、循環器内科、内分泌内科、代謝内科又は糖尿病内科を標榜している保険医療機関であること |
| 専門医 | 日本循環器学会・日本糖尿病学会・日本内分泌学会いずれかの専門医が常勤で1人以上所属していること(日本肥満学会の専門医を有していることが望ましい) |
| 医師の経験 | 初期研修修了後、高血圧・脂質異常症・2型糖尿病・肥満症の診療に5年以上の臨床経験など |
| 施設認定 | 上記いずれかの学会により教育研修施設として認定された施設であること |
| 管理栄養士 | 常勤の管理栄養士による栄養指導を行える体制が整っていること |
| 副作用対応 | 副作用の診断や対応に関して、直ちに適切な処置ができる体制が整っていること |
この表を、広告と見比べてみてください。
「オンライン診療で完結」「来院不要」「最短即日発送」——そうした案内と、この要件は、かみ合っているでしょうか。
常勤の管理栄養士がいて、学会の教育研修施設に認定されていて、専門医が常勤している。正規の肥満症治療は、そういう場所で行われるものだとされています。
11. 最大68週間——やめる前提の薬です
ここも、広告ではまず語られない部分です。
日本人を対象とした臨床試験において、本剤の68週間を超える使用経験はないことから、本剤の投与は最大68週間とすること。
〔…〕本剤投与中も適切な食事療法・運動療法の継続が必要であること、及び68週間後までに本剤を中止できるよう適切な指導が必要であることに留意すること。
——最適使用推進ガイドライン
68週間、およそ1年4か月。そして始める時点で、やめる計画を立てることが求められています。
投与中のルールも細かく決まっています。
- 投与開始後は毎月、体重・血糖・血圧・脂質を確認する
- 3〜4か月投与しても改善傾向が認められない場合は、投与を中止する
- 効果があった場合も、2〜3か月に1回以上確認し、効果が不十分になれば中止を検討する
- 十分な減量効果が認められた場合は、68週を待たずに中止し、食事療法・運動療法のみによる管理を考慮する
- 投与中も2か月に1回以上、管理栄養士の栄養指導を受ける
つまりこの薬は、食事と運動をやめてよくなる薬ではありません。食事と運動を続けながら、期間を区切って使い、そしてやめたあとは食事と運動で維持する——そういう設計になっています。
中止後に戻ってしまったら。ガイドラインは、中止後に肥満症の悪化が認められた場合について、再び食事療法・運動療法(管理栄養士の栄養指導を含む)を原則6か月以上実施し、それでも必要な場合に限って再投与するとしています。
薬をやめたらまた薬、ではないのです。結局のところ、土台にあるのは食事と運動だということが、制度の設計そのものに表れています。
12. 広告の見分け方
厚生労働省の安全性情報には、広告の規制についても書かれています。ここは知っておくと役に立ちます。
医療に関する広告については、患者等の利用者保護の観点から、広告可能事項以外の国内未承認や適応外の医薬品等を用いた自由診療に関する広告は原則禁止されています。
一定の条件を満たし、広告可能な場合であっても、例えば、
・一般人が広告内容から認識する「印象」や「期待感」と実際の内容との間に相違があると言えるもの
・科学的な根拠が乏しい情報であるにもかかわらず、特定の手術や処置等の有効性を強調することにより、その手術等の実施へ誘導するもの
については、誇大な広告として禁止されています。
この物差しを当てはめると、次のような表現は注意して見るべきものになります。
| 見かける表現 | 考えるべきこと |
|---|---|
| 「打つだけで痩せる」「何もしなくていい」 | 正規の治療は6か月以上の食事・運動療法が前提です |
| 「オンラインで完結」「来院不要」 | 施設要件(常勤の管理栄養士・専門医・教育研修施設)と整合しますか |
| 「医師が処方するから安全」 | 処方されても適応外なら救済制度の対象外です |
| ビフォーアフターの写真 | 「印象」や「期待感」と実際の内容に相違はありませんか |
| 費用だけが大きく書かれている | 副作用と救済制度の説明は、どこにありますか |
なお厚生労働省と消費者庁は、「美容医療を受ける前にもう一度」という説明用資材を共同で作成しています。自由診療を検討されるときは、こうした公的な資料に一度目を通してみてください。
13. では、どうすればいいのか
この記事は「痩せたいと思うこと」を否定するものではありません。体重が健康に影響することは事実で、このサイトでも何度も扱ってきました。
そのうえで、順番の話をさせてください。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 健康障害があるかを確かめる。血圧・血糖・脂質・尿酸——健診の数値が出発点です(→健診結果の読み方) |
| 2 | 食事と運動を、正しい形で。極端な制限は筋肉を削り、かえって戻りやすい体をつくります(→代謝と筋肉/たんぱく質) |
| 3 | それでも難しいときに、医師と相談する。肥満症の診断がつくなら、正規の治療の対象になりうるかを内科で確認できます |
このサイトの代謝と筋肉の記事に、こう書きました——「体重という1つの数字を最速で落とす方法は、たいてい筋肉を削る方法で、それは基礎代謝を下げ、髪や肌にも影響し、結果的に戻りやすい体をつくります」。
薬でも、この原則は変わりません。だからこそ最適使用推進ガイドラインは、投与中も食事療法と運動療法を続けることを求めているのだと思います。
14. 🚨 相談の目安
内科で相談する価値があるとき
| 状況 | 理由 |
|---|---|
| 健診で血圧・血糖・脂質・尿酸を指摘されている | 肥満症の健康障害に当たる可能性。治療の対象になりえます |
| いびきを指摘される・日中の眠気が強い | 閉塞性睡眠時無呼吸症候群も健康障害の一つです(→睡眠時無呼吸) |
| 膝や腰が痛い | 運動器疾患も健康障害の一つ(→変形性膝関節症) |
| すでに自由診療でGLP-1を使っている | 自己判断でやめる前に相談を。使用中の薬として正確に伝えてください |
| 🚨 使用中に強い腹痛・背中の痛み・嘔吐 | 急性膵炎の可能性。すぐに受診してください |
| 🚨 冷汗・動悸・強い空腹感・手のふるえ | 低血糖症状の可能性。すぐに受診を |
診察で伝えること
- 使っている(使っていた)薬の名前——自由診療で受け取ったものも、必ず伝えてください
- いつから、どのくらいの量を
- 体重の変化と、そのときの食事・運動
- ほかに飲んでいる薬・サプリメント
すでに使っている方へ。
責めるつもりはまったくありません。広告は巧妙で、費用も明示されていて、医師が処方するとなれば、安心だと感じるのが自然です。
お願いしたいのは2つだけです。自己判断で急にやめないことと、かかりつけの医師に「使っている」と正確に伝えること。ほかの薬との関係や、検査値への影響を知っておく必要があります。
そして——もし何かあったとき、救済制度の枠外にいるかもしれないということだけは、頭の片隅に置いておいてください。
15. よくある質問
ダイエット目的でGLP-1を使うのは、何が問題なのですか?
厚生労働省が医薬品・医療機器等安全性情報のなかで、はっきり書いています。「適応外で使用された場合の安全性及び有効性については確認されていません」「これまでに知られていない思わぬ副作用につながる可能性も否定できません」。
2型糖尿病治療薬として承認されているGLP-1受容体作動薬は2型糖尿病のみを効能・効果として承認されており、痩身目的での有効性も安全性も確かめられていないということです。日本糖尿病学会も2023年11月の見解で、美容・痩身・ダイエットを目的とした自由診療での処方を宣伝する医療広告が散見されると指摘しています。
もうひとつ見過ごせないのが副作用です。重大な副作用として低血糖症状や急性膵炎、比較的頻度の高い副作用として悪心・嘔吐・下痢・便秘・腹痛などの消化器症状が報告されており、厚生労働省は適応外で使用された場合であってもこうした副作用が生じるおそれがあるとしています。
副作用が出たとき、公的な救済は受けられますか?
受けられない可能性が非常に高いと、厚生労働省が明記しています。
薬の副作用で入院が必要なほど重篤な健康被害が生じた場合、医療費や年金などを給付する医薬品副作用被害救済制度という公的制度があります。しかしこの制度の対象は「医薬品を適正な使用目的に従い、適正に使用された場合に生じた健康被害」に限られます。
厚生労働省の記述は次のとおりです——「GLP-1受容体作動薬を添付文書等に記載の使用対象者でないにもかかわらず、適応外の美容・痩身・ダイエット等の目的で使用して、重篤な健康被害が生じたとしても、適正に使用したと認められず、この制度の救済給付を受けられない可能性が非常に高いため、ご注意ください」。
つまり万が一のときに、国の救済の枠外に置かれるということです。ここは費用や効果の話とは別の次元のリスクとして、知っておく価値があります。
正規に承認された「やせ薬」もあると聞きました。誰でも使えますか?
使えません。肥満症治療薬として承認されたウゴービ皮下注がありますが、厚生労働省の最適使用推進ガイドラインが投与対象を厳格に定めています。
まず高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれか1つ以上の診断があること。そのうえでBMIが27以上で2つ以上の肥満に関連する健康障害があるか、BMIが35以上であること。さらに食事療法・運動療法の治療計画を6か月以上実施しても十分な効果が得られないこと、その間に2か月に1回以上の頻度で管理栄養士による栄養指導を受けていること、そして高血圧・脂質異常症・2型糖尿病に対して既に適切な薬物療法が行われていることも条件です。
施設の要件もあり、内科系を標榜し、日本循環器学会・日本糖尿病学会・日本内分泌学会いずれかの専門医が常勤し、学会の教育研修施設に認定され、常勤の管理栄養士がいる医療機関に限られます。厚生労働省は「肥満症以外での痩身・ダイエットなどを目的に本剤を使用することはできません」と明記しています。
ウゴービはずっと使い続けられるのですか?
いいえ、期間が決まっています。最適使用推進ガイドラインは「日本人を対象とした臨床試験において、本剤の68週間を超える使用経験はないことから、本剤の投与は最大68週間とすること」としています。約1年4か月です。
しかも投与開始にあたって「68週間後までに本剤を中止できるよう適切な指導が必要である」と、やめる前提で計画を立てることが求められています。
効果判定も細かく決められていて、投与開始後は毎月、体重・血糖・血圧・脂質を確認し、3〜4か月投与しても改善傾向が認められない場合は中止すること、十分な減量効果が認められた場合は68週を待たずに中止し食事療法・運動療法のみによる管理を考慮することとされています。
つまりこの薬は、食事と運動をやめてよくなる薬ではなく、食事と運動を続けながら期間を区切って使うものだということです。
個人輸入や、海外から取り寄せるのはどうですか?
おすすめできません。個人輸入した医薬品は品質が保証されず、偽造品の可能性もあります。そして何より、医薬品副作用被害救済制度の対象外です。この制度は国内で適正に使用された医薬品による健康被害を救済するもので、個人輸入品は最初から枠の外にあります。
もうひとつ知っておいていただきたいのが供給の問題です。厚生労働省は、需要増加により一部の製剤で限定出荷が生じ、本来の2型糖尿病治療への供給に支障が生じる懸念があるとして、医療機関・薬局・卸売販売業者に協力を要請しました。
そのなかには、卸売販売業者に対して「薬事承認範囲外の治療目的による使用であることが明らかな場合には納入をしない」よう求める内容も含まれています。痩身目的での使用が、糖尿病の患者さんに薬が届かない事態につながりうる、ということです。
参考資料
- 厚生労働省「医薬品・医療機器等安全性情報 No.406」2023年12月(適応外使用、副作用、救済制度、供給、広告規制の記述はこの資料にもとづいています)
- 一般社団法人日本糖尿病学会「GLP-1受容体作動薬およびGIP/GLP-1受容体作動薬の適応外使用に関する日本糖尿病学会の見解」2023年11月28日
- 厚生労働省「最適使用推進ガイドライン セマグルチド(遺伝子組換え)(販売名:ウゴービ皮下注)~肥満症~」令和5年11月(令和8年6月改訂)(投与対象・施設要件・投与期間の記述はこの資料にもとづいています)
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)「関係学会等からの医薬品の適正使用に関するお知らせ」