1. 先に結論
ガイドラインから読み取れることを、先にまとめます。
| よく聞く話 | ガイドラインが書いていること |
|---|---|
| 歩くと脚が痛む=脊柱管狭窄症 | 足の血管の病気(閉塞性動脈硬化症)との見分けが重要。6.7%は両方を合併 |
| 腰が痛くないから違う | 診断の基準では「腰痛の有無は問わない」 |
| 放っておくと必ず悪くなる | 軽度〜中等症では50〜60%が10年以上、満足のいく経過 |
| 痛み止めを飲んでおけばいい | 型によって「提案する」と「行わないことを提案する」に分かれる |
| ビタミンB12や漢方でしびれがよくなる | 研究の質が高くなく、推奨文への記載は見送り |
| 杖をつけば楽に歩ける | 研究では杖の有無で差がなかった |
| 高齢だから手術は無理 | 80歳以上でも手術を「行うことを提案する」 |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
「歩くと脚が痛む」ときは、前かがみで楽になるのか、立ち止まるだけで楽になるのかを、受診のときに伝えてください。それが背骨の病気と血管の病気を見分ける最初の手がかりです。そして、市販薬やサプリを続ける前に、型を確かめることが先です。
2. どんな病気か——歩くとしびれ、前かがみで楽になる
背骨の中には、脳から続く神経の通り道(脊柱管)があります。加齢などで骨や靱帯が変化してこの通り道が狭くなり、神経が圧迫されたり血流が悪くなったりして症状が出るのが、腰部脊柱管狭窄症です。ガイドラインは正直に、「現在のところ,腰部脊柱管狭窄症の定義について完全な合意は得られていない.」とも書いています。ひとつの病気というより、症状の組み合わせで捉える症候群なのです。
日本整形外科学会と日本脊椎脊髄病学会の「腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021(改訂第2版)」は、診断基準として次の4つを提案しています。
① 殿部(お尻)から下肢の疼痛やしびれを有する
② 殿部から下肢の症状は、立位や歩行の持続によって出現あるいは増悪し、前屈や座位保持で軽減する
③ 腰痛の有無は問わない
④ 臨床所見を説明できるMRIなどの画像で変性狭窄所見が存在する
注目していただきたいのは③です。「腰の病気なのに、腰は痛くない」ことがあります。主役はお尻と脚の症状なのです。
間欠跛行(かんけつはこう)
しばらく歩くと脚が痛んだりしびれたりして歩けなくなり、休むとまた歩けるようになる。この症状を間欠跛行といいます。ガイドラインは「間欠跛行は腰部脊柱管狭窄症に特徴的な症状であるが,血管性間欠跛行との鑑別が重要である.」としています。
腰部脊柱管狭窄症の手がかりとして、国際的な専門家の調査では「ショッピングカートや自転車を使用すると症状が楽になるか」も挙げられています。また、夜間のこむら返りが多いという報告もあります。
ただし、画像だけでは決まりません。ガイドラインは、MRIを含む画像の所見は「必ずしも症候性を意味しない」とし、「診断には症候学を最も優先すべき」としています。画像で狭く写っていても、症状がなければ治療の対象にはならないということです。
3. 3つの型——馬尾型・神経根型・混合型
この病気には、歩いたときに出る症状による型があります。型によって、勧められる薬が変わります。
腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021 Background Question 3・Clinical Question 1をもとに作成
- 馬尾型:お尻、脚、会陰部(股のあいだ)の感覚の異常を特徴とする型。複数の神経が障害されます
- 神経根型:お尻と脚の痛みを特徴とする型。1本の神経根が障害されます
- 混合型:両方が合わさった型
馬尾型では、神経の障害によって膀胱や直腸の働きに異常が出ることがあります。ガイドラインは、膀胱の障害は自覚しにくい症状だとしています。尿が出にくい、残る感じがする、漏れる、といった変化があるときは、この病気が関わっていることもあります。ガイドラインも、男性では前立腺肥大、女性では腹圧性尿失禁などとの見分けが重要だとしています。
4.【内科医から】同じ症状が、血管の病気のことがある
この章は、内科医としていちばんお伝えしたいことです。
「歩くと脚が痛くなり、休むと楽になる」という症状は、足の動脈が動脈硬化で細くなる病気(閉塞性動脈硬化症、末梢動脈疾患)でも起こります。脚の筋肉に届く血液が足りなくなるためです。
腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021 Background Question 3をもとに作成
ガイドラインは、見分け方をこう書いています。血管による間欠跛行は「姿勢と関係せず,立ち止まるだけで下肢痛が軽減する特徴がある.」。前かがみや座ることが必要な脊柱管狭窄症とは、ここが違います。
診察では、足の甲やくるぶしの脈が触れるかを確かめ、足関節上腕血圧比(ABI)という、腕と足首の血圧を比べる検査をします。ガイドラインは、足の脈が弱くABIが低く、神経のブロック注射が効きにくい人では閉塞性動脈硬化症の危険があるので注意を要するとしています。
そして大切なのは、両方を合併している人がいることです。腰部脊柱管狭窄症の患者さんの6.7%が閉塞性動脈硬化症を伴っていて、関係していたのは高齢、糖尿病、脳血管障害、虚血性心疾患でした。また、日本の研究では、50〜69歳の腰部脊柱管狭窄症の人は、そうでない人より高血圧と糖尿病を合併している割合が多かったと報告されています。
閉塞性動脈硬化症は、足だけの問題ではありません。全身の動脈硬化のサインで、心臓や脳の血管の病気とつながっています。糖尿病・高血圧・脂質異常症がある方、たばこを吸う方が「歩くと脚が痛い」と感じたら、整形外科だけでなく、かかりつけの内科でも一度相談してください。糖尿病については糖尿病予備軍の記事もご覧ください。
5. 自分で答えられるチェック項目
医療機関では、「腰部脊柱管狭窄診断サポートツール」という点数表が使われることがあります。ガイドラインは、患者をスクリーニングするためのツールとして「簡便で有用である」としています。
ツールは、病歴・問診・診察の10項目でできています。このうち、ご自身で答えられる5項目を紹介します。
| 項目 | 点数 |
|---|---|
| 年齢 | 60歳未満 0点/60〜70歳 1点/71歳以上 2点 |
| 糖尿病の既往 | あり 0点/なし 1点 |
| 間欠跛行(歩くと症状が出て、休むと楽になる) | あり 3点/なし 0点 |
| 立っていると脚の症状が悪くなる | あり 2点/なし 0点 |
| 前かがみになると脚の症状が楽になる | あり 3点/なし 0点 |
残りの5項目は、前かがみ・後ろに反ったときの症状、ABI(0.9以上で3点)、アキレス腱の反射、脚を持ち上げる検査で、医師が診察して判断します。全部の合計が7点以上で腰部脊柱管狭窄症の可能性が高いとされ、感度は92.8%、特異度は72.0%と報告されています。
ガイドラインは別のツールについて、「本ツールはスクリーニングツールであり,確定診断ではないことに留意する.」と注意しています。上の5項目で点数が高くても低くても、気になる症状があれば受診して診察を受けてください。
6. 放っておくと、必ず悪くなるのか
「いずれ歩けなくなるのでは」という不安は強いと思います。ガイドラインの答えは、こうです。
「軽度~中等症例の 10 年以上の臨床経過は,50~60%の症例で満足のいく結果が得られた」
そしてガイドラインは、「すべての腰部脊柱管狭窄症患者が経時的に症状の増悪を示すとはいえないことは,患者へのインフォームド・コンセント,手術適応の決定のうえからも重要である.」としています。
ただし、注意点もあります。この結果のもとになった研究からは手術が必要な重い人が除かれているため、重い場合の経過はわかりません。また、画像で狭窄が強いことは症状の悪化と関係し、予後を予測する手がかりになりうるとされています。
変えられる要因として、喫煙があります。スウェーデンの33万人以上の研究では、たばこを吸う人は吸わない人より、この病気で手術に至る率が高いという関連がみられ、量が多い人ほどリスクが高くなっていました。
7.【重要】治療の推奨度を並べる
ガイドラインの推奨を、1枚の図にまとめました。
腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021 Clinical Question 1〜5・8をもとに作成
並べてみると、2つのことに気づきます。
ひとつは、「強く推奨する」がついた治療はひとつもないことです。どの治療も「提案する」(弱い推奨)です。万能の治療はなく、症状の重さや型、本人の希望によって組み合わせていく病気だということです。
もうひとつは、根拠のある治療は、どれも医療機関で受けるものだということです。処方薬、ブロック注射、専門家の指導のもとでの運動療法、手術。一方で、自分で買えるもの(コルセット、杖、温める道具、サプリメント)は、どれも明確な推奨がないか、推奨文に載っていません。
「まず市販のもので様子をみる」より、「まず受診して型を確かめる」ほうが、遠回りに見えて近道なのです。
8.「腰・足のしびれに」のビタミン剤と漢方
テレビや新聞の広告で、「腰・足のしびれに」とうたうビタミンB12(メコバラミン)入りの製品や、漢方薬をよく見かけます。ガイドラインはこれらも検討しています。
ビタミンB12(メコバラミン)
152人を対象に24か月追った研究が1つありました。痛みには差がなく、1,000m以上歩ける人の割合はメコバラミンの群で多かったという結果です。けれど、この研究では両方の群で、運動療法や痛み止め、ほかのビタミン剤、注射などが併用されていました。ガイドラインはこう書いています。
「真にメコバラミンの治療効果を判定した研究といえるか否か疑わしい.」
漢方(八味地黄丸)
27人を8週間みた研究が1つで、痛みやしびれが改善したとされています。けれど、症例数が少なく、盲検化(どちらの薬かを伏せること)の記載がなく、評価も主観的だったとして、ガイドラインは「エビデンスは必ずしも高くない.」としています。
結論として、どちらも「研究の質が高くないため参考にとどめ,推奨文への記載は見送ることとした.」とされました。
誤解のないように書き添えると、これは「害がある」という意味ではありません。メコバラミンの研究では、血液や尿の検査で異常が出た人はいませんでした。ただ、効果があるかどうかが確かめられていないのです。長く飲み続けて症状が変わらないまま、型の確認や血管の病気の見落としが遅れることのほうが心配です。
9. 痛み止めは、型によって考え方が逆になる
ドラッグストアで買える痛み止めの多くは、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)です。ガイドラインの推奨は、型によって分かれています。
「非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs) を神経根型もしくは腰痛を有する患者に短期間投与することを提案する.一方,馬尾型の患者には投与しないことを提案する.」
理由は研究の結果です。馬尾型の人を対象にした研究では、NSAIDsより、リマプロストという血流を改善する処方薬のほうが、脚のしびれや歩ける距離、生活の質の改善が優れていました。一方、神経根型では、NSAIDsで腰や脚の痛みが改善する傾向がありました。
そしてNSAIDsは、腎臓や胃腸への負担に配慮が必要で、ガイドラインも短期間の使用が望ましいとしています。高齢の方、腎臓の数値が気になる方は特に注意が必要です(腎臓の数値の記事)。
なお、神経の痛みに使われるガバペンチノイド(プレガバリンなど)は、効果に一貫性がなく副作用が多いとして、明確な推奨ができないとされています。
型は診察で判断します。痛み止めが手放せない状態が続くなら、自己判断で飲み続けず、整形外科で一度相談してください。
10. 運動療法——専門家の指導が、自主トレに勝る
ガイドラインのCQ2の推奨です(推奨の強さ2・根拠の強さB)。
・「運動療法を行うことを提案する.」
・「専門家の指導下に行う運動療法は痛みの軽減や,身体機能や ADL,QOL の改善にセルフトレーニングよりも有効である.」
・「最適な運動療法の種類は明らかになっていない.」
理学療法士などの指導のもとで行う運動のほうが、最初に一度だけ指導を受けて自分で続ける運動より、痛みや歩く力の改善がよかったという研究が複数あります。国内からも同じ結果が報告されています。
運動療法は手術ほどの効果はないものの、有害事象のリスクが低く、費用も安いため、重症例以外では推奨できるとされています。「どの運動がいちばんよいか」は、まだわかっていません。だからこそ、自分に合った運動を専門家と一緒に探すことに意味があります。整形外科で、リハビリテーションを受けられるか相談してみてください。
この病気の人は、握力で評価したサルコペニア(筋肉の衰え)の割合が高かったという報告もあります。動かないでいると筋肉が落ち、さらに歩けなくなる悪循環には注意が必要です。サルコペニアの記事もあわせてご覧ください。
11. コルセット・杖・温めること
自分で用意できる道具について、ガイドラインのCQ3は次のようにまとめています。
「コルセットは疼痛の軽減と歩行距離の延長に有用な可能性がある.」
「杖,超音波,温熱療法の有用性は示されていない.」
全体の推奨:明確な推奨ができない(根拠の強さD)
- コルセット:104人の研究で、普通のコルセットも、試作された専用ベルトも、つける前より歩ける距離が延びました。ただし、つけない場合と比べた研究はなく、有用性を確かめるにはさらに研究が必要とされています
- 杖:40人に2週間使ってもらった研究で、痛みや生活の質、歩ける距離に杖のある・なしで差がありませんでした
- 温熱・電気刺激・超音波:まとめて行っても、無治療と比べて痛みや歩く力に有意な差はありませんでした
杖に効果がなかったというのは意外かもしれません。ただし、これは脊柱管狭窄症の症状に対する研究の結果です。ふらつきや転倒が心配な方が、安全のために杖を使うことまで否定するものではありません。
コルセットは、腰痛の記事でも書いたとおり、腰痛の予防効果はないとされています。脊柱管狭窄症では「有用な可能性」どまりです。使うなら、受診して型を確かめたうえで、補助としてと考えてください。
12. 手術を考えるとき
薬や運動療法、ブロック注射などの保存治療で良くならない場合、神経の圧迫を取り除く除圧術が検討されます。ガイドラインは、画像と診察で診断が確定し、背骨の不安定性を伴わない人で、保存治療が効かない場合には除圧術を「行うことを提案する」としています。
補足として、次の点が挙げられています。
- 最初の治療としては保存治療を推奨するが、症状が重い人で、漫然と保存治療を続けることは避けるべき
- 手術後2年の成績は、保存治療より優れている
- 手術と保存治療の差は、2年以降は少しずつ小さくなる
- 手術による合併症の可能性を、事前に説明する必要がある
80歳を過ぎていても
ガイドラインは「80 歳以上の超高齢者であっても腰部脊柱管狭窄症に対する手術治療は臨床症状の改善をもたらし,有用であるため,行うことを提案する.」としています。80歳未満と比べても改善の程度は変わらないという報告が多かったとされています。一方で、手術に伴う合併症も報告されていて、根拠となった研究はすべて過去のデータを振り返ったものです。
手術後に残りやすい症状
ガイドラインによると、手術の前から安静時にも脚のしびれがある人は、手術後もしびれや歩行障害が残りやすく、糖尿病がある人も脚の痛みやしびれが残りやすいとされています。「手術をすればすべて元どおり」ではないことも、知ったうえで決めることが大切です。
なお、背骨のあいだに器具を入れる「棘突起間スペーサー」という手術は、除圧術と比べて症状の改善に差がない一方、再手術の率が高く費用対効果が低いとして、「行わないことを提案する」とされています。
13. 🚨 受診の目安
早めの受診をおすすめしたい症状
① 尿が出にくい・残る・漏れる、便の出方が変わった(馬尾の障害の可能性)
② 股のあいだ(会陰部)のしびれや感覚の異常
③ 脚に力が入らない、つまずきやすくなった
④ 安静にしていても脚のしびれや痛みがある
⑤ 歩くと脚が痛み、立ち止まるだけで楽になる/足の冷たさ、足の脈が弱い(血管の病気の可能性)
①②は馬尾型でみられる神経の障害で、ガイドラインも、膀胱や直腸の障害など神経症状が重い場合には手術治療が選択されるとしています。年齢のせいにせず、脚の症状とあわせて伝えてください。⑤は、整形外科だけでなく内科でも相談できます。
この記事のまとめ
① 歩くとお尻や脚が痛み・しびれ、前かがみや座ると楽になる。腰痛の有無は問わない
② 立ち止まるだけで楽になるなら、足の血管の病気も考える。6.7%は両方を合併
③ 軽度〜中等症では50〜60%が10年以上、満足のいく経過
④ 「強く推奨」された治療はなく、根拠のある治療はどれも医療機関で受けるもの
⑤ 痛み止め(NSAIDs)は型によって推奨が逆。自己判断で続けない
⑥ ビタミンB12・漢方は推奨文への記載見送り、杖は研究で差がなかった
⑦ 保存治療が効かなければ除圧術。80歳以上でも「行うことを提案」
14. よくある質問
歩くと脚が痛くなって、休むと治ります。腰部脊柱管狭窄症でしょうか?
可能性はありますが、それだけでは決められません。ガイドラインは、中高齢で殿部から下肢に痛みやしびれがあり、症状が歩行や立位で増悪し、座位や前屈位で軽減する場合は腰部脊柱管狭窄症の可能性が高い、としています。ポイントは「どうすると楽になるか」です。前かがみになったり座ったりすると楽になるなら背骨の神経の問題が疑われます。一方、足の血管が細くなる閉塞性動脈硬化症(末梢動脈疾患)でも歩くと脚が痛みますが、こちらは姿勢と関係せず、立ち止まるだけで楽になるのが特徴です。両方を合併している人もいます。整形外科のほか、糖尿病や高血圧がある方は、かかりつけの内科で足の血圧(ABI)を測ってもらうのも一つの方法です。
テレビでよく見る「腰・足のしびれに」というビタミン剤は効きますか?
ガイドラインの評価は、はっきりしたものではありません。ビタミンB12(メコバラミン)については152人を対象にした研究が1つあり、痛みには差がなかった一方で、1,000m以上歩ける人の割合が多かったと報告されています。ただしこの研究では、両方の群でほかの薬や運動療法なども併用されていて、ガイドラインは「真にメコバラミンの治療効果を判定した研究といえるか否か疑わしい」としています。漢方(八味地黄丸)についても27人の小さな研究しかなく、どちらも「研究の質が高くないため参考にとどめ,推奨文への記載は見送ることとした」とされています。飲み続けるより先に、まず受診して型を確かめてもらうことをおすすめします。
市販の痛み止めを飲んでもいいですか?
型によって考え方が逆になるので、自己判断で続けるのはおすすめしません。ガイドラインは、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を「神経根型もしくは腰痛を有する患者に短期間投与することを提案する」一方で、「馬尾型の患者には投与しないことを提案する」としています。馬尾型では、血流を改善する別の処方薬のほうが、しびれや歩ける距離の改善が優れていたためです。また、NSAIDsは腎臓や胃腸への負担があり、短期間の使用が望ましいとされています。どの型かは診察で判断します。痛み止めが手放せない状態なら、一度整形外科を受診してください。
放っておくと、必ず悪くなりますか?
必ずしもそうではありません。ガイドラインによると、軽度から中等症の人を10年以上みた研究では、50〜60%で満足のいく経過でした。ガイドラインも「すべての腰部脊柱管狭窄症患者が経時的に症状の増悪を示すとはいえない」ことは重要だとしています。ただし、手術が必要な重い人はこの研究から除かれているので、重い場合の経過はわかりません。また、画像で狭窄が強いことは症状の悪化と関係するとされています。排尿や排便の異常、脚の力が入らない、安静にしていてもしびれる、といった症状があれば、早めに受診してください。
80歳を過ぎた親に手術を勧められました。年齢的に大丈夫でしょうか?
年齢だけで手術をあきらめる必要はないとされています。ガイドラインは「80 歳以上の超高齢者であっても腰部脊柱管狭窄症に対する手術治療は臨床症状の改善をもたらし,有用であるため,行うことを提案する.」としています。80歳未満と比べても、改善の程度は変わらないという報告が多かったとされています。一方で、手術に伴う合併症も報告されていて、根拠となった研究はすべて過去のデータを振り返ったものです。持病や体力、本人がどこまで歩けるようになりたいかを含めて、主治医とご家族で話し合ってください。なお、術前から安静時にもしびれがある人や糖尿病がある人は、手術後もしびれが残りやすいとされています。
参考にした主な資料
- 日本整形外科学会・日本脊椎脊髄病学会 監修「腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021(改訂第2版)」南江堂、2021年(Minds掲載・本文公開。Background Question 1〜8、Clinical Question 1〜15)