1. 先に結論
| よくある思い込み | 資料の記述 |
|---|---|
| 腕が上がるなら、腱板は切れていない | 運動痛はあるが、多くの患者さんは肩を上げることができる |
| 肩が痛くて夜眠れないのは五十肩 | 腱板断裂でも、夜間痛で眠れないことが受診のいちばんの理由。五十肩と違うのは、関節の動きが固くなることが少ないこと |
| けがをしていないから断裂ではない | 明らかな外傷によるものは半数。残りははっきりした原因がなく、日常生活の動作の中で断裂が起きる |
| 切れたら手術しかない | 断裂部が治癒することはないが、70%は保存療法で軽快する |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
腱板のすべてが断裂することは少ないので、学会は残っている腱板の機能を働かせる腱板訓練は有効だとしています。まず注射と運動療法を行い、それでも肩の痛みと運動障害がよくならないときに手術を行います。
2. 症状——いちばんの受診理由は夜間痛
日本整形外科学会によると、肩腱板断裂では次のような症状があります。
- 肩の運動障害、動かしたときの痛み、夜間痛。夜間痛で睡眠がとれないことが、受診するいちばんの理由
- 動かすと痛むが、多くの患者さんは肩を上げることができる
- 上げるときに力が入らない
- 上げるときに肩の前上面でジョリジョリという音(軋轢音)がする
3. 五十肩との違い
学会は、違いを次のように書いています。
「五十肩と違うところは、拘縮、すなわち関節の動きが固くなることが少ないことです。」(日本整形外科学会「肩腱板断裂」)
五十肩については五十肩の記事で書いています。
4. 原因——腱板の老化と、肩の使いすぎ
学会によると、腱板断裂の背景には次のことがあります。
- 腱板が、骨と骨(肩峰と上腕骨頭)にはさまれているという体のつくり
- 腱板の老化。そのため、中年以降の病気といえる
- 明らかな外傷によるものは半数。残りははっきりした原因がなく、日常生活の動作の中で断裂が起きる
- 男性の右肩に多いことから、肩の使いすぎが原因となっていることが推測される
断裂には完全断裂と不全断裂があります。パンフレットは、不全断裂だからといって症状が軽く回復しやすいということはないとしています。若い年齢では、投球肩で不全断裂が起こることがあります。
年齢とともに腱がいたんで起こる病気には、肘の外側が痛むテニス肘もあります(→テニス肘の記事)。
5. 診察と検査
| 資料の記述 | |
|---|---|
| 診察 | 肩が上がるか、拘縮があるか、肩を上げて肩峰の下で軋轢音があるか、棘下筋の萎縮があるかを調べる。軋轢音や棘下筋の萎縮があれば、腱板断裂を疑う |
| X線(レントゲン) | 肩峰と骨頭の間が狭くなる |
| MRI | 骨頭の上方の腱板部に、断裂の所見がみられる |
出典:日本整形外科学会「肩腱板断裂」をもとに整理。
6.【核心】治療——70%は保存療法で軽快
学会は、保存療法について次のように書いています。
「断裂部が治癒することはありませんが、70%は保存療法で軽快します。」(日本整形外科学会「肩腱板断裂」)
| 資料の記述 | |
|---|---|
| 急なけがで始まったとき | 三角巾で1〜2週間安静にする |
| 注射療法 | 五十肩(肩関節周囲炎)を併発して夜間痛があるときは、水溶性副腎皮質ホルモンと局所麻酔剤を肩峰下滑液包内に注射する。夜間痛がなくなれば、ヒアルロン酸の注射に変える |
| 運動療法 | 腱板のすべてが断裂することは少ないので、残っている腱板の機能を働かせる腱板訓練は有効 |
| 手術 | 保存療法で肩の痛みと運動障害がよくならないときに行う。関節鏡視下手術と通常の手術(直視下手術)がある |
| 手術のあと | 約4週間の固定と、2〜3か月の機能訓練が必要 |
出典:日本整形外科学会「肩腱板断裂」とパンフレット「整形外科シリーズ16」をもとに整理。
関節鏡視下手術は体への負担が少なく、手術後の痛みが少ないので普及してきています。ただし学会は、大きな断裂では縫合が難しいので、直視下手術を選ぶほうが無難だとしています。
7. 似た病気——石灰沈着性腱板炎
同じ腱板の病気でも、40〜50歳代の女性に多いのが石灰沈着性腱板炎です。学会によると、腱板の中にたまったリン酸カルシウムの結晶によって急性の炎症が起こります。
| 資料の記述 | |
|---|---|
| 症状 | 夜間に突然生じる激しい肩の痛みで始まることが多い。痛みで眠れず、関節を動かせなくなる |
| 型 | 急性型(発症後1〜4週、強い症状)、亜急性型(中等度の症状が1〜6か月)、慢性型(動かしたときの痛みなどが6か月以上) |
| 診断 | 五十肩の症状とよく似ていて、X線撮影で腱板部分の石灰を確認して診断する。CT検査や超音波検査も行う |
| 治療 | 急性例では、腱板に針を刺して石灰を吸引する方法がよく行われる。三角巾などでの安静、消炎鎮痛剤の内服、滑液包内の注射など。ほとんどは保存療法で軽快する。痛みが強く運動に支障があれば、手術で摘出することもある |
出典:日本整形外科学会「石灰沈着性腱板炎(石灰性腱炎)」をもとに整理。
8. 受診したいとき
資料にあるもの
・夜間の肩の痛みで眠れない
・肩を上げるときに力が入らない。肩の前上面でジョリジョリと音がする
・けがのあとから肩が痛む、動かしにくい
・夜間に突然、激しい肩の痛みが始まった
最後に、この記事の要点をもう一度。
① 肩腱板断裂は40歳以上の男性の右肩に多く、発症のピークは60代
② 受診のいちばんの理由は夜間痛。多くの人は肩を上げることができる
③ 五十肩と違い、関節の動きが固くなることが少ない
④ 外傷によるものは半数。残りは日常生活の動作の中で断裂が起きる
⑤ 70%は保存療法で軽快する。よくならないときは手術
9. よくある質問
肩腱板断裂はどんな人に多いですか?
日本整形外科学会によると、40歳以上の男性(男62%、女38%)の右肩に多く、発症年齢のピークは60代です。腱板の老化が背景にあるので、中年以降の病気といえます。
腕が上がれば、腱板断裂ではないのですか?
学会によると、動かすと痛みはありますが、多くの患者さんは肩を上げることができます。上げるときに力が入らない、肩の前上面でジョリジョリと音がするという訴えもあります。
五十肩とはどう違いますか?
学会によると、五十肩と違うところは、拘縮、すなわち関節の動きが固くなることが少ないことです。
けがをしていなくても切れますか?
学会によると、明らかな外傷によるものは半数で、残りははっきりした原因がなく、日常生活の動作の中で断裂が起きます。男性の右肩に多いことから、肩の使いすぎが原因となっていることが推測されています。
手術は必要ですか?
学会によると、断裂部が治癒することはありませんが、70%は保存療法で軽快します。保存療法では注射療法と運動療法が行われ、肩の痛みと運動障害がよくならないときに手術を行います。
手術のあとは、どのくらいかかりますか?
学会によると、関節鏡視下手術でも直視下手術でも、手術後は約4週間の固定と、2〜3か月の機能訓練が必要です。
参考にした主な資料
- 日本整形外科学会「肩腱板断裂」「石灰沈着性腱板炎(石灰性腱炎)」
- 日本整形外科学会 パンフレット「整形外科シリーズ16 肩腱板断裂」(2025年2月作成)