1. 先に結論
| よくある思い込み | 資料の記述 |
|---|---|
| 背骨は大きなけがをしないと折れない | 骨粗鬆症があると、尻もちや転倒などの軽いけがでも容易に起こる。中腰や重いものを持つ動作で折れることもある |
| 折れたら必ず気づく | 日常の動作の中でいつの間にか起きている場合がある。骨がもろくなって起こるものは、痛みが軽いこともある |
| 背中が丸くなるのは年のせい | 背骨の骨折がいくつも起こると、背中が丸くなり、身長が低くなる |
| くっつけば元どおり | 多くは数か月で骨がくっつくが、少しつぶれた形のまま。中には、つぶれが進んで高度の腰まがりと長引く痛みが残る場合もある |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
日本整形外科学会は、高齢者で腰や背中の痛みがあれば、この骨折の可能性を疑うとしています。原因は、骨粗鬆症という全身の骨の強度が低下して骨折しやすくなる病気です。予防には、骨粗鬆症の治療が重要です。
2. どんな骨折か——背骨の前がつぶれる
日本整形外科学会によると、背骨の椎体(ついたい:背骨を積み木のように作っている骨の、体の前側の部分)が折れる骨折には、いくつかの種類があります。
- 比較的弱い外力でも起こる、骨粗鬆症によるもの
- がんなどが骨に転移して、その部分が弱くなって起こるもの
- 事故などの強い外力で起こるもの
圧迫骨折と呼ばれることもあります。高齢の方に起こるものは、胸の背骨と腰の背骨のつなぎ目(胸腰移行部)のあたりに生じ、ほとんどが骨粗鬆症が原因で、尻もちなどの軽い外力で起こります。
尻もちなどで力が集中したところでは、椎体の前の部分がつぶれて、くさび形になります。骨粗鬆症が原因のものでは、中腰や重いものを持つなどで胸と腰のつなぎ目に力が集中して骨折することもあります。
3.【核心】閉経後の女性に、いつの間にか起こる
日本整形外科学会のパンフレット「骨粗鬆症による脊椎椎体骨折」は、次のように書いています。
「特に閉経後の高齢女性に多く、尻もちや転倒などの軽い“けが”でも容易に発生しますが、日常生活動作中にいつの間にか椎体骨折が発生している場合もあります」(日本整形外科学会 整形外科シリーズ31「骨粗鬆症による脊椎椎体骨折」)
原因は、骨粗鬆症という、全身の骨の強度が低下して骨折しやすくなる病気です。骨粗鬆症そのものについては骨粗鬆症の記事、同じく骨粗鬆症で起こる脚の付け根の骨折については大腿骨頸部骨折の記事で書いています。
4. 症状——寝起きや立ち上がりで痛む
日本整形外科学会によると、胸や腰の背骨が折れると、次のような症状が出ます。
- 腰や背中に痛みが生じる
- 痛みの特徴は、寝起きの動作や立ち上がりの動作で悪化し、じっと安静に寝ていると痛みを感じないこと
- 骨がもろくなって起こるものでは、痛みが軽いこともある。尻もちなど明らかに外力が加わったものでは、通常は骨折した部分が痛む
- いくつもの場所で骨折が起こると、背中が丸くなり(円背)、身長が低くなる
なお、がんの転移による骨折は、体を動かしたときの痛みのほかに、安静にしていても痛むのが普通だとされています。
5. その後の経過——多くはくっつくが、進むこともある
パンフレットによると、骨粗鬆症による背骨の骨折は、たどる経過がいくつかあります。
両脚のしびれや動かしにくさ(神経の麻痺症状)は、骨折後しばらくして現れることがあり、注意が必要とされています。
骨折した部分がくっつくと、痛みは和らぎます。けれども、高度の腰まがりが残ってしまった場合には、腰や背中の鈍い痛みや疲れが生じ、逆流性食道炎のような内臓の病気の原因になることがあると、パンフレットは書いています。背中が丸いことと胸やけの関係は逆流性食道炎の記事でも触れています。
6. 診断——X線とMRI
日本整形外科学会のパンフレットによると、診断は次のように進みます。
- 高齢者で腰や背中の痛みがあれば、この骨折の可能性を疑う
- 診察では、背中の動きや、背中の骨を軽く叩いて痛みを調べる
- X線(レントゲン)検査で骨折しているかどうかを診断する。より精密な診断が必要な場合は、CTやMRI検査を追加する
- MRIは、その骨折が新しいかどうかを診断したり、X線検査ではっきりしなかった骨折を見つけたりすることもできる
また、骨粗鬆症が疑われる場合は骨密度を測定するとされています。骨密度の検査については骨密度の記事で書いています。
7. 治療——コルセットからセメント治療まで
日本整形外科学会の解説とパンフレットにある治療は、次のとおりです。
| 治療 | 資料の記述 |
|---|---|
| 軽い骨折(骨粗鬆症による圧迫骨折) | 簡易コルセットなどで外から固定し、前かがみ(お辞儀する動作)を禁じ、比較的安静にする。安静にすることで、3〜4週ほどでほとんどが良くなる |
| 基本の治療(保存療法) | コルセットやギプスなどで胴体を外から固定する治療に、鎮痛剤やリハビリテーションを組み合わせる |
| セメント治療 | 保存療法が効かない場合に手術を考える。最近は、小さな皮膚の切開から、折れた骨の中にセメントなどの補強材料を詰めて骨折部を固め、痛みを和らげる、体への負担が少ない治療法も行われる。すべての骨折に有効なわけではなく、骨折の状態と保存療法の経過をみて判断する |
| 神経の麻痺を伴う場合 | 金属スクリューなどの器具を使った背骨の再建術が行われる。骨がもろく、いくつもの病気を抱えている高齢者では、さまざまな工夫と準備が必要 |
8. 予防——骨粗鬆症の治療が重要
パンフレットは、予防には骨粗鬆症になった骨の治療が重要だとしています。全身の骨を丈夫にして、骨折が起こりにくいようにすることを目的に、次の3つを組み合わせます。
- 食事療法
- 運動療法:背中や脚の筋肉を鍛えて、転倒しないようにする
- 薬物療法
転倒と筋力の衰えについてはフレイルの記事で書いています。
9. 受診したいとき
資料にあるもの
・高齢の方で、腰や背中の痛みがある(この骨折の可能性を疑う)
・寝起きや立ち上がりで痛みが強くなり、じっと寝ていると痛まない
・背中が丸くなってきた、身長が低くなった
・骨折のあと、両脚がしびれて動かしにくくなってきた(神経の麻痺症状。注意が必要)
・安静にしていても痛む
最後に、この記事の要点をもう一度。
① 高齢の方の背骨の骨折は、ほとんどが骨粗鬆症が原因。特に閉経後の高齢女性に多い
② 尻もちなどの軽いけがでも起こり、いつの間にか起きていることもある
③ 寝起きや立ち上がりで痛む。いくつも折れると背中が丸くなり、身長が縮む
④ 多くは数か月でくっつくが、つぶれが進んで腰まがりと長引く痛みが残ることも
⑤ 予防は骨粗鬆症の治療(食事・運動・薬)
10. よくある質問
背骨の圧迫骨折とは、どんな骨折ですか?
日本整形外科学会によると、背骨の椎体が折れる骨折で、圧迫骨折とも呼ばれます。高齢の方に起こるものは、胸の背骨と腰の背骨のつなぎ目のあたりに生じ、ほとんどが骨粗鬆症が原因で、尻もちなどの軽い外力で起こります。力が集中したところで椎体の前の部分がつぶれ、くさび形になります。
なぜ閉経後の女性に多いのですか?
日本整形外科学会のパンフレットによると、原因は骨粗鬆症という、全身の骨の強度が低下して骨折しやすくなる病気で、特に閉経後の高齢女性に多いとされています。尻もちや転倒などの軽いけがでも容易に起こります。
転んでいなくても、背骨が折れることはありますか?
あります。日本整形外科学会のパンフレットは、日常生活の動作の中でいつの間にか背骨の骨折が起きている場合もあるとしています。中腰や重いものを持つなどで、胸と腰のつなぎ目に力が集中して折れることもあります。
どんな痛みが出ますか?
日本整形外科学会によると、腰や背中が痛み、寝起きや立ち上がりの動作で痛みが悪化しますが、じっと安静に寝ていると痛みを感じません。骨がもろくなって起こるものでは痛みが軽いこともあります。いくつも折れると、背中が丸くなり身長が低くなります。
骨がくっつけば、元どおりになりますか?
日本整形外科学会のパンフレットによると、一般に数か月で、少しつぶれた形を残したまま骨がくっつきます。中にはつぶれがどんどん進み、骨がくっつかないまま高度の腰まがりと長引く痛みが残る場合もあります。腰まがりが残ると、腰や背中の鈍い痛みや疲れ、逆流性食道炎のような内臓の病気の原因になることがあります。
どんな治療をしますか?
日本整形外科学会によると、コルセットやギプスで胴体を外から固定し、鎮痛剤やリハビリテーションを組み合わせるのが基本です。これが効かない場合は手術を考え、折れた骨の中にセメントなどを詰めて固める、体への負担が少ない治療法も行われています。ただし、すべての骨折に有効なわけではありません。
参考にした主な資料
- 日本整形外科学会「脊椎椎体骨折」
- 日本整形外科学会 パンフレット「整形外科シリーズ31 骨粗鬆症による脊椎椎体骨折」(2025年2月作成)