1. 先に結論
| よくある思い込み | ガイドラインの記述 |
|---|---|
| 背中のブツブツはニキビ | マラセチア毛包炎は面皰を伴わない赤いブツブツ・膿をもったブツブツで、胸・背中・肩にできる |
| カビは不潔だからつく | マラセチアは誰の皮膚にもいる常在菌。増えすぎたときに病気を起こす |
| 見た目で分かる | 診断は、膿やかさぶたを顕微鏡で調べて確定する |
| ニキビの薬で良くなる | 治療は抗真菌薬。毛包炎は飲み薬が推奨度A、軽症なら塗り薬も |
| 治ればもう出ない | 癜風は再発率が高い。汗のあとのシャワーなどスキンケアが予防に重要 |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
胸・背中・肩のブツブツが、白ニキビ・黒ニキビ(面皰)のないまま続いているなら、ニキビではない可能性があります。皮膚科で顕微鏡の検査を受けてください。治療の薬が、ニキビとはまったく違います。
2. マラセチアは、誰の皮膚にもいる常在菌
ガイドラインは、マラセチアをこう説明しています。脂質を必要とする酵母のような真菌で、足の裏を除くヒトの皮膚にすむ真菌の主要な構成要素。そのうえで、
「常在真菌であり,基本的に病原性を示さないが,過剰に増殖すると皮膚に病変をつくる」
つまり、マラセチアがいること自体は普通です。不潔だからつく菌ではありません。脂質を必要とする菌で、病気の症状も皮脂の多い胸・背中・肩に出ます。マラセチアの仲間は現在19種類あり、そのうちヒトにすむのは10種類とされています。
どのくらいの人が受診しているのでしょうか。日本医真菌学会の2021年の全国調査では、皮膚科を新しく受診した患者の10.0%が皮膚真菌症で、そのうち5.1%がマラセチア症でした(いちばん多いのは水虫などの皮膚糸状菌症で86.3%)。マラセチアによる病気は、癜風・マラセチア毛包炎ともに男性に多く、10代から40代の患者が多かったと報告されています。
3.【核心】ニキビとの違いは「面皰がない」こと
マラセチア毛包炎について、ガイドラインの記述はこうです。
「マラセチア毛包炎は面皰を伴わない紅色丘疹,膿疱が胸部,背部から肩に出現し,時に痒みを伴う.」
ポイントは「面皰を伴わない」です。面皰(めんぽう)は、毛穴に皮脂がつまった状態で、いわゆる白ニキビ・黒ニキビのこと。ニキビは面皰から始まり、赤いニキビ、膿をもったニキビへと進みます(ニキビの記事で詳しく書いています)。
| マラセチア毛包炎 | 癜風(でんぷう) | |
|---|---|---|
| 見た目 | 赤いブツブツ、膿をもったブツブツ。面皰はない | 丸い茶色・白・赤茶色のまだらが多発し、つながっていく |
| できる場所 | 胸、背中から肩 | 胸、背中から肩 |
| かゆみ | ときにかゆい | ガイドラインに記載なし |
| 顕微鏡で見えるもの | マラセチアの胞子 | マラセチアの太く短い菌糸 |
| 治療の推奨度A | 抗真菌薬の飲み薬(軽症は塗り薬も) | 抗真菌薬の塗り薬(重症・再発は飲み薬) |
皮膚真菌症診療ガイドライン2025の「マラセチア症」の項とCQ19〜21をもとに作成。
胸や背中に、白ニキビ・黒ニキビが見当たらないのに、同じような大きさの赤いブツブツがそろって出ている。ニキビ用の洗顔料や塗り薬を続けても変わらない。そんなときは、マラセチア毛包炎を考える価値があります。ただし、見た目だけでは決められません(5章)。
4. 癜風——茶色や白のまだら
もう一つのマラセチアの病気が癜風(でんぷう。昔は「なまず」とも呼ばれました)です。
「癜風では胸部,背部から肩にかけて円形から類円形の淡褐色斑,白斑,紅褐色斑が多発し,融合傾向を示す.」
丸いうす茶色・白・赤茶色のまだらが、胸や背中、肩にいくつもでき、くっついて広がっていく病気です。白いまだらは、白斑やほかの色素の病気とまぎらわしいこともあります(尋常性白斑の記事も参考に)。
5. 見分けるのは顕微鏡
ガイドラインが示す診断の方法は、皮膚の一部を取って顕微鏡で調べることです。
- 癜風:皮膚の表面のかさかさ(鱗屑)を取り、マラセチアを探す。KOH直接鏡検法で太く短い菌糸が見つかる
- マラセチア毛包炎:赤いブツブツや膿の中身を調べる。マラセチアは胞子の状態でいるため、染色して観察する
マラセチア毛包炎については、「鏡検で多数のMalasseziaの胞子が確認できればマラセチア毛包炎の診断が確定できる.」と書かれています。
見た目で「ニキビだ」「カビだ」と決めて自分で薬を選ぶと、合わない治療を続けることになりかねません。
6. 治療——どちらも推奨度Aの抗真菌薬
出典:日本皮膚科学会・日本医真菌学会「皮膚真菌症診療ガイドライン2025」CQ19〜21。
マラセチア毛包炎
CQ21 推奨度A:「マラセチア毛包炎に抗真菌薬の内服を行うよう強く勧める.軽症例には抗真菌薬の外用を考慮する.」
根拠の一つは、インドで行われたランダム化比較試験です。イトラコナゾールを1週間飲んだグループでは13人中9人で皮疹が消え、偽薬のグループでは消えた人はいませんでした。日本の症例の報告でも、飲み薬で多くの人の皮疹が改善しています。
塗り薬は、ランダム化比較試験はないものの症例の解析で効果が示されていて、軽症なら考慮してよいとされています。ただし「外用抗真菌薬はマラセチア毛包炎に対し保険適用はない」ことも書かれています。また、塗り薬の効果をまとめた解析では、ミコナゾールとエコナゾールはほかの抗真菌薬に比べて皮疹の改善率が悪かったとされています。薬の選択は、皮膚科医と相談してください。
癜風
癜風は「癜風の治療は抗真菌薬の外用が第一選択である」とされ、塗り薬が推奨度Aです。日本ではシャンプー剤は治療薬として承認されていないため、軟膏・クリーム・外用液が使われます。
ケトコナゾール2%クリームを2週間塗った試験では、治癒率は84%(偽薬では10%)でした。ただし、治療後2年間追跡できた31人のうち21人(68%)で再発していました。範囲が広い人や再発をくり返す人には、飲み薬(日本で保険が使えるのはイトラコナゾール)が推奨度Aです。
7. 再発を防ぐ——汗のあとのシャワーと、薬用シャンプー
治っても、また出やすい。それがマラセチアの病気の悩ましいところです。ガイドラインは、予防についてこう書いています。
「癜風の再発率は高く,室温や湿度の調整,発汗後のシャワー浴など,スキンケアが予防に重要である.」
汗をかいたら、そのままにせずシャワーで流す。部屋の温度と湿度を調整する。汗をかいたままにしないことが基本です。
そして、市販の薬用シャンプーについても触れています。
「本邦ではミコナゾール配合シャンプーを医薬部外品として購入できるが,フケ症においてMalasseziaに対する抗真菌活性が証明されており,癜風の予防や治療に効果が期待できる」
ガイドラインは、抗真菌薬の塗り薬や飲み薬にも予防効果はあるものの、確立された投与法はないとしています。日常の予防として取り入れやすいのは、スキンケアと薬用シャンプーです。
この章で紹介したミコナゾール配合の薬用シャンプーです。皮膚真菌症診療ガイドライン2025は、「本邦ではミコナゾール配合シャンプーを医薬部外品として購入できるが,フケ症においてMalasseziaに対する抗真菌活性が証明されており,癜風の予防や治療に効果が期待できる」としています。
※ 当サイトは、記事のなかで根拠を示したうえで推奨したものに限り広告を掲載しています。医薬部外品のシャンプーで、病気を治療する薬ではありません。ガイドラインが予防への期待を書いているのは癜風についてで、マラセチア毛包炎の治療は抗真菌薬の飲み薬が推奨度Aです。ブツブツが続くときは、まず皮膚科で検査を受けてください。ここで紹介しているのは、持田ヘルスケアの「コラージュフルフルプラス シャンプー」です。メーカーによると、有効成分としてミコナゾール硝酸塩、オクトピロックス(ピロクトンオラミン)、グリチルリチン酸ジカリウムを配合していて、効能・効果は「フケ・かゆみを防ぐ。毛髪・頭皮を清浄にする。毛髪・頭皮をすこやかに保つ。毛髪・頭皮の汗臭を防ぐ。」です。同じシリーズでも「センシティブ」にはミコナゾール硝酸塩が入っていないので、選ぶときは成分を確かめてください。傷や湿疹、かぶれのある部分には使わないでください。
8. 頭皮のフケ、アトピーとの関係
マラセチアは、胸や背中だけの話ではありません。ガイドラインは、脂漏性皮膚炎(頭皮や顔の、脂っぽいフケや赤み)について、マラセチアが皮脂から作る遊離脂肪酸や、炎症を起こす物質が発症に関わると考えられている、と書いています。
また、マラセチア由来のアレルギーの原因物質がいくつか報告されていて、アトピー性皮膚炎を悪化させる要因になる可能性も示唆されています(アトピー性皮膚炎の記事)。
一方で、頭皮の赤みやフケがカビの一種でも別の病気のことがあります。頭部白癬(しらくも)は、脂漏性皮膚炎と間違えられてステロイドを塗り、悪化することがある病気です。詳しくは頭部白癬の記事にまとめています。
9. 皮膚科で相談するときに
皮膚科で伝えたいこと
・ブツブツやまだらがいつから、どこに出ているか(胸・背中・肩など)
・白ニキビ・黒ニキビ(面皰)があるかないか、かゆみがあるか
・これまで使った薬(ニキビの薬、市販の塗り薬など)と、その効き目
・以前にも同じ症状が出たことがあるか(再発かどうか)
マラセチアによる病気は、顕微鏡の検査で確定します。抗真菌薬の飲み薬は、ほかの薬との飲み合わせ(併用禁忌)に注意が必要な薬です。飲んでいる薬があれば、必ず伝えてください。
最後に、この記事の要点をもう一度。
① マラセチアは誰の皮膚にもいる常在菌。増えすぎると病気を起こす
② マラセチア毛包炎は、胸・背中・肩の面皰のない赤いブツブツ
③ 癜風は、胸・背中・肩の茶色・白のまだら
④ 診断は顕微鏡。見た目だけでは決められない
⑤ 治療は抗真菌薬。毛包炎は飲み薬、癜風は塗り薬がそれぞれ推奨度A
⑥ 癜風は再発しやすい。汗のあとのシャワーと、ミコナゾール配合シャンプーが予防の選択肢
10. よくある質問
背中のブツブツがニキビかマラセチアか、自分で見分けられますか?
手がかりはありますが、最終的には検査が必要です。皮膚真菌症診療ガイドライン2025によると、マラセチア毛包炎は面皰(白ニキビ・黒ニキビ)を伴わない赤いブツブツや膿をもったブツブツが、胸・背中・肩に出るもので、ときにかゆみを伴います。ニキビは面皰から始まるのが特徴です。ただ、診断は膿などの中身を顕微鏡で調べ、多数のマラセチアの胞子を確認して確定するとされています。ニキビの治療を続けても変わらないときは、皮膚科で相談してください。
マラセチア毛包炎は、市販の塗り薬で治せますか?
ガイドラインで推奨度A(強く勧める)とされているのは、抗真菌薬の飲み薬(イトラコナゾール)です。軽症なら塗り薬も考慮するとされていますが、抗真菌薬の塗り薬はマラセチア毛包炎に保険適用がありません。また、塗り薬の効果をまとめた解析では、ミコナゾールとエコナゾールはほかの抗真菌薬より皮疹の改善率が悪かったと報告されています。まず皮膚科で診断を受け、薬を選んでもらうのが確実です。
マラセチアは人にうつりますか?不潔にしていたからですか?
マラセチアは、足の裏を除くヒトの皮膚にもともとすんでいる常在真菌で、ガイドラインは「基本的に病原性を示さないが,過剰に増殖すると皮膚に病変をつくる」と説明しています。誰の皮膚にもいる菌が増えすぎて起こる病気なので、不潔にしていたからつく、というものではありません。ガイドラインは再発の予防として、室温や湿度の調整、汗をかいたあとのシャワー浴を挙げています。
癜風は治ったのに、また出てきました。
癜風は再発率の高い病気です。ケトコナゾールのクリームで治療した試験では、治療後2年間追跡できた31人のうち21人(68%)で再発していました。ガイドラインは、室温や湿度の調整、汗をかいたあとのシャワー浴など、スキンケアが予防に重要としています。また、ミコナゾール配合シャンプー(医薬部外品)は癜風の予防や治療に効果が期待できるとされています。再発をくり返す場合は、抗真菌薬の飲み薬が推奨度Aで選択肢になるので、皮膚科で相談してください。
ミコナゾール配合のシャンプーで、体を洗ってもいいですか?
ガイドラインは、ミコナゾール配合シャンプー(医薬部外品)について、フケ症でマラセチアに対する抗真菌活性が証明されており、癜風の予防や治療に効果が期待できると書いています。ただし、市販のシャンプーの効能・効果は頭皮と毛髪についてのものなので、体への使い方は製品の説明書を確認し、迷ったら皮膚科医に相談してください。傷や湿疹、かぶれのある部分には使わないでください。マラセチア毛包炎の治療そのものは、抗真菌薬の飲み薬が推奨度Aです。
参考にした主な資料
- 日本皮膚科学会・日本医真菌学会合同皮膚真菌症診療ガイドライン策定委員会「皮膚真菌症診療ガイドライン2025」日本皮膚科学会雑誌 135(13): 2511-2566, 2025(皮膚真菌症の疫学、マラセチア症の定義・症状・診断・治療、CQ19 癜風の外用療法、CQ20 癜風の内服療法、CQ21 マラセチア毛包炎の治療)