1. 先に結論
| よくある思い込み | 研究班の評価 |
|---|---|
| PMSは体質だから仕方ない | 喫煙(受動喫煙を含む)はリスク因子(A)。お酒の飲みすぎを控えることも予防に寄与(B) |
| コーヒーを控えるべき | カフェインの総摂取量や多量のコーヒーは、PMSのリスクと関連していなかった |
| 月見草オイルがいいらしい | 月見草オイルとセント・ジョーンズ・ワートはプラセボと異なる効果を示さなかった |
| 運動しても変わらない | ヨガと有酸素運動はA−。PMSのスコアを改善 |
| 気の持ちようと言われる | 認知行動療法はA−。こころへの働きかけには根拠がある |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
まずたばこをやめる(吸う人の煙を避ける)。そしてヨガや有酸素運動を続ける。それでもつらければ、チェストベリーの市販薬という選択肢があり、さらに日常生活や仕事に支障があるなら婦人科へ。気分の落ち込みが強い場合は、PMSの重症型(PMDD)のこともあります。
2. PMSとPMDD——生理が始まると楽になる
この記事の資料は、AMEDの研究班(代表:東京科学大学 寺内公一氏)がまとめた「働く女性における月経困難症・月経前症候群・更年期障害予防のための非薬物的ヘルスケアサービスガイド」(令和5〜7年度)の、月経前症候群の章です。
研究班は、PMSをこう説明しています。月経が始まる前の黄体期(排卵から次の月経までの時期)にくり返し現れる、
- こころの症状:抑うつ気分、イライラ(易怒性)、不安、情緒不安定など
- 体の症状:おなかの張り(腹部膨満感)、乳房の張り、頭痛、だるさ(倦怠感)など
を特徴とし、「月経開始とともに軽快または消失する病態であり」、働く女性の生活の質を損なうだけでなく、労働生産性を大きく下げるとしています。PMSの重症型が月経前不快気分障害(PMDD)で、特にこころの症状が目立ち、日常生活への影響が大きい病気です。
研究班は、日本では月経困難症とPMSを合わせた月経に伴う症状の有病率が、性成熟期の女性の74%に達し、年間の労働損失は4,911億円と推定されているとも書いています。
3.【核心】10の問いを、レベル順に並べる
エビデンスのレベルは、Mindsの規定に準拠した6段階(A・A−・B・B−・C・D)です。研究班は、セルフケアの試験は薬の試験ほど精密ではないため、「MINDs のエビデンスレベルA 相当であっても、必ずしも医薬品の臨床試験におけるエビデンスレベルA と同等のレベルではないことに留意が必要である。」としています。レベルの詳しい意味は更年期のセルフケアの記事で説明しました。
「植物性タンパク質や魚の摂取」がアスリートのPMSに伴う運動能力の低下と関連するという項目(C)は、一般の方向けではないため省きました。
更年期のセルフケアと同じように、ここでもお金をかけずにできること(禁煙・運動・ヨガ)が上位に並んでいます。
4. 予防——たばこはA、お酒はB、カフェインは関係なし
「喫煙(受動喫煙を含む)はPMS/PMDD の発症に対するリスク因子である。」(A)
「アルコール過剰摂取の抑制はPMS の発症予防に寄与する。」(B)
「PMS/PMDD の予防に対する運動習慣の有効性が示唆されている。」(C)
喫煙がPMSの有病率の上昇と関連することは、複数のメタアナリシスで報告されています。PMDDはPMS以上に喫煙の影響を受けやすく、日本の研究でも喫煙はPMSの重さと関連していました。過去に吸っていた人、受動喫煙にさらされたことがある人でもリスクが上がることが示されています。
お酒は、飲むことでPMSのリスクが中等度に上がり、多量の飲酒では大幅に増えることがメタアナリシスで示されました。お酒の量の目安はお酒とγ-GTPの記事で書いています。
一方で、よく言われるカフェインは、総摂取量やカフェイン入りのコーヒーを多く飲むことが、PMSのリスクと関連していないことが、大規模な研究で示されています。コーヒーを我慢する必要は、少なくともPMSのためにはなさそうです。
運動については、日本の女子大学生で身体活動量が少ないほどPMSの症状が強いという調査、女子高校生で運動不足がPMSによる欠席と関連していたという調査などがあり、予防の効果が示唆されています(C)。
5. 体を動かす——ヨガと有酸素運動(A−)
「ヨガはPMS/PMDD の症状軽減に対する有効性が認められている。」(A−)
「有酸素運動はPMS/PMDD の症状軽減に対する有効性が認められている。」(A−)
ヨガは、PMSの全体の症状・体の症状・こころの症状のいずれにも、一貫して有意な改善を示しました(ただし試験の異質性は高い)。有酸素運動を中心とした運動も、PMSのスコアを有意に改善し、頭痛や不安を改善したランダム化比較試験が複数あります。
運動の始め方は座りすぎと歩数の記事で書いています。生理前に頭痛が強くなる方は、片頭痛の記事もあわせてご覧ください。
6. こころへの働きかけ——認知行動療法(A−)
「認知行動療法はPMS/PMDD の症状軽減に対する有効性が認められている。」(A−)
「マインドフルネスに基づく介入はPMS/PMDD の症状軽減に対する有効性が示されている。」(B−)
心理社会的な働きかけは、PMSの重さに対して有益であることがメタアナリシスで示され、特にストレスや困難な状況に対処する技術を学ぶ「コーピングスキルトレーニング」の効果が高かったとされています。認知行動療法は、オンライン・グループ・パートナーと一緒に受けるものなど、いずれの方法でもPMSの症状の改善をもたらしました。
「イライラするのは性格のせい」と自分を責めがちですが、こころへの働きかけで軽くなる症状だということは、知っておいてよいと思います。
生理が始まってからの痛み(月経困難症)については、同じガイドの評価を生理痛のセルフケア、どれに根拠がある?にまとめました。
7. チェストベリー——日本では市販薬になっている
「チェストベリーはPMS/PMDD の症状軽減に対する有効性が示されている。」(B)
チェストベリー(Vitex agnus-castus)は、PMSの症状スコアを改善することが3件のメタアナリシスで示されました。14試験のメタアナリシスでは13試験がPMSの全症状に有意な効果を報告し、プラセボと比べた効果は大きかったとされています。ただし、ほとんどの試験はバイアスのリスクが高く、異質性も極めて高いため、研究班は解釈に注意が必要としています。
日本では、チェストベリーのエキスが市販の医薬品になっています。研究班のガイドは、18〜44歳の日本人のPMSの女性69人を対象に、プレフェミン®の有効性を調べた前向きの試験を紹介しています。最初の月経のあとから症状のスコアが有意に下がり、その後2周期にわたって下がり続け、イライラ・抑うつ気分・怒り・頭痛・おなかの張り・乳房の張りなど10の症状がいずれも有意に軽くなりました。3周期目の反応率は91.0%でした。
この章で扱ったチェストベリーの市販薬です。AMED研究班のガイドは、チェストベリーのエビデンスレベルをBとし、日本人を対象にしたプレフェミン®の試験を紹介しています。
※ 当サイトは、記事のなかで根拠を示したうえで推奨したものに限り広告を掲載しています。ガイドのレベルBは、研究班自身が医薬品の臨床試験のレベルと同等ではないとしていて、多くの試験はバイアスのリスクが高いとされています。ここで紹介しているのは、ゼリア新薬の「プレフェミン」(第2類医薬品)です。PMDAの添付文書によると、1錠にチェストベリー乾燥エキス40mg(チェストベリー180mg)を含み、効能は「月経前の次の諸症状(月経前症候群)の緩和:乳房のはり,頭痛,イライラ,怒りっぽい,気分変調」です。18歳以上の女性が1日1回1錠を毎日服用します。授乳中の人は服用しないでください。医師の治療を受けている人、うつ病と診断された人、漢方製剤を服用している人、月経不順の人、月経周期に関係なく乳房のはりやしこりがある人は、服用前に医師・薬剤師に相談するよう書かれています。妊娠中の安全性は確立していません。1か月程度服用しても症状がよくならない場合は服用を中止し、3か月を超えて続ける場合は定期的に医師に相談してください。
8. ビタミン・ミネラル——ビタミンBと亜鉛はB
「ビタミンB の補充はPMS の症状改善に対する有効性が示されている。」(B)
「亜鉛の補充はPMS の症状改善に対する有効性が示されている。」(B)
「ビタミンD・カルシウムの補充はPMS の症状改善に対する有効性が示唆されている。」(C)
- ビタミンB6:毎日の摂取でPMSの症状全般が改善したメタアナリシスがある。1日100mgまでの投与で有意な効果を示した解析もある。ただし、いずれも小規模で、試験の質が十分でなく、エビデンスとしては高くない。マグネシウムとの併用で月経前のストレスが軽くなったという報告がある一方、それぞれ単独では有意な効果はなかった
- 亜鉛:PMSの女性を対象にしたプラセボ対照のランダム化比較試験で、12週間の亜鉛の投与により体とこころの症状が有意に減り、別の試験では中等度〜重度のPMSの発生率が下がった
- ビタミンD・カルシウム:補充や、これらを多く含む食事で改善する可能性がある。ただし血中のビタミンDの濃度とPMSの症状に関連は示されなかった
この章で扱った亜鉛のサプリメントです。AMED研究班のガイドは、亜鉛の補充についてエビデンスレベルをBとしています。
※ 当サイトは、記事のなかで根拠を示したうえで推奨したものに限り広告を掲載しています。根拠となった試験は2件の比較的小規模な試験で、研究班のレベルは医薬品の臨床試験のレベルと同等ではありません。ここで紹介しているのは、大塚製薬の「ネイチャーメイド 亜鉛」(栄養機能食品・1日1粒で亜鉛10.0mg)で、PMSのための製品ではありません。女性の耐容上限量は1日35mgです。食事からの分と合わせて考え、ほかの亜鉛入りのサプリメントやマルチビタミンと重ねて飲まないでください。とりすぎると銅欠乏による貧血などが起こることがあります(→亜鉛の記事)。持病の薬を飲んでいる方、妊娠中・授乳中の方は、飲み始める前に医師・薬剤師にご相談ください。
9. 鍼・指圧・アロマ・ハーブ・アプリ
- 鍼治療(A−):PMSの症状スコアの改善と関連したメタアナリシスがある。ただし試験の質が低く、規模も小さいため、慎重な解釈が必要。指圧はC
- アロマテラピー(B):ローズ(ロサ・ダマスケナ)は頭痛・疲労・おなかの張りを改善した一方、月経に関連する痛みと不安には有意な効果がなかった。ラベンダーやローズなどの単一のオイルで、PMSの重さや不安・疲労が改善したメタアナリシスもある(いずれも異質性あり)
- ハーブ(B):レモンバームはPMSの重さを改善(小規模な3試験のメタアナリシス)。サフランは抑うつや不安に一定の効果(ただし慎重な解釈が必要)。一方、月見草オイルとセント・ジョーンズ・ワートは、プラセボと異なる効果を示さなかった
- アプリなど(B−):月経・リプロダクティブヘルスのアプリで、PMSの症状の負担や欠勤・欠席が減ったランダム化比較試験がある。インターネットを使った認知行動療法も、PMSの重さと生活の質を改善した
10. 🚨 セルフケアで様子を見ないほうがいいとき
研究班は総括で、ガイドで評価したセルフケアの対象は原則として軽症や、症状が比較的安定している人だとし、次のような場合は速やかな医療機関の受診が必要だとしています。
セルフケアより先に受診したいとき(研究班の総括から)
・抑うつ・不安が顕著に悪化している(PMSの重症型であるPMDDのこともあります)
・日常生活や仕事が著しく妨げられる症状がある
・強い月経痛や過多月経がある
・器質的疾患(体のどこかの病気)が疑われる症状がある
研究班は、「非薬物療法は薬物療法や専門医療を代替するものではない。」とも書いています。PMSやPMDDには婦人科などで受けられる治療があります。症状が月経周期と関係しているかを確かめるために、症状と月経の記録をつけて受診すると、相談がスムーズです。40代以降の体の変化全体は40代からの体の変化にまとめています。
最後に、この記事の要点をもう一度。
① PMSは月経前にくり返すこころと体の症状で、月経が始まると軽くなる。重症型がPMDD
② 最上位のAは喫煙(受動喫煙を含む)がリスク因子という項目。お酒の飲みすぎを控えるのもB
③ ヨガ・有酸素運動・鍼・認知行動療法はA−
④ チェストベリー・ビタミンB・亜鉛・アロマ・ハーブはB。チェストベリーは日本で市販薬がある
⑤ カフェインはPMSのリスクと関連なし。月見草オイルはプラセボと差なし
⑥ セルフケアは軽症向け。気分の落ち込みが強い・生活に支障があるなら受診を
11. よくある質問
PMSのセルフケアで、いちばん根拠があるのは何ですか?
AMED(日本医療研究開発機構)の研究班がまとめた非薬物的ヘルスケアサービスガイドで、最上位のエビデンスレベルAがついたのは、喫煙(受動喫煙を含む)がPMS/PMDDの発症のリスク因子であるという項目でした。次のA−には、ヨガ、有酸素運動、鍼治療、認知行動療法が並びます。たばこをやめる・煙を避けることと、体を動かすことが、根拠のあるセルフケアの土台です。
生理前はコーヒーを控えたほうがいいですか?
研究班のガイドでは、カフェインの総摂取量やカフェイン入りのコーヒーを多く飲むことは、PMSのリスクと関連していないことが大規模な研究で示されたとしています。一方、お酒は飲むことでPMSのリスクが中等度に上がり、多量の飲酒では大幅に増えるとされ、お酒の飲みすぎを控えることは予防に寄与する(エビデンスレベルB)とされました。
チェストベリーはPMSに効きますか?
研究班のガイドは、チェストベリーはPMS/PMDDの症状軽減に対する有効性が示されているとし、エビデンスレベルをBとしました。3件のメタアナリシスで症状スコアの改善が示されていますが、多くの試験はバイアスのリスクが高く、異質性も極めて高いとされています。日本では、チェストベリーのエキスを含む市販薬(プレフェミン、第2類医薬品)があり、日本人69人の試験では3周期目の反応率が91.0%でした。授乳中の人は服用できず、持病がある人などは事前に医師・薬剤師に相談してください。
月見草オイルはPMSに効果がありますか?
研究班のガイドが紹介したハーブの研究のまとめでは、月見草オイルとセント・ジョーンズ・ワートは、プラセボと異なる効果を示しませんでした。ハーブの中では、レモンバームやサフランが症状の軽減に有効性が示されている(エビデンスレベルB)とされ、チェストベリーは複数の試験でプラセボより一貫してPMSを改善したと報告されています。
どんなときに受診したほうがいいですか?
研究班は、セルフケアの対象は原則として軽症や症状が比較的安定している人だとしています。抑うつや不安が顕著に悪化している、日常生活や仕事が著しく妨げられている、強い月経痛や過多月経がある、体のどこかの病気が疑われるといった場合は、速やかな受診が必要です。こころの症状が強い場合は、PMSの重症型である月経前不快気分障害(PMDD)のこともあります。症状と月経の記録をつけて婦人科などに相談してください。
参考にした主な資料
- 日本医療研究開発機構(AMED)予防・健康づくりの社会実装に向けた研究開発基盤整備事業「働く女性における月経困難症・月経前症候群・更年期障害の二次予防・三次予防のための指針策定に関する研究開発」(研究代表者:寺内公一)「働く女性における月経困難症・月経前症候群・更年期障害予防のための非薬物的ヘルスケアサービスガイド」令和5〜7年度(PMS/PMDD HQ1〜HQ10、総括、付録のエビデンスレベル一覧表)
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「プレフェミン 添付文書情報」(広告の注意書きの出典)