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体型と代謝

座りすぎと歩数
——国の目安は1日8,000歩。女性の平均は5,832歩で、3人に1人が1日8時間以上座っています

朝は電車で座り、職場ではパソコンの前、帰宅したらソファでスマートフォン。気づけば、1日のほとんどを座って過ごしている——そんな方に向けた記事です。
厚生労働省は「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」で、成人に1日60分以上の身体活動(1日約8,000歩以上)を勧めています。そして今回から、新たに「座りすぎ」に注意することが加わりました。
ところが、20歳以上の女性の平均歩数は1日5,832歩。平日に8時間以上座っている女性は33%です。
ガイドが示す目安と、忙しい毎日でもできる「少しずつ」の積み重ね方を整理します。

執筆:なぎ先生(内科医) 公開:2026年10月12日 読了:約12分

1. 先に結論

よくある思い込みガイドの記述
1万歩歩かないと意味がない成人の目安は1日約8,000歩以上(1日60分以上の身体活動)。目安を満たさなくても少しでも多くが基本
運動していれば座っていても大丈夫新たに座りっぱなしの時間が長くなりすぎないように注意することが推奨に加わった
20分以上続けないと効果がないありません。短い時間の積み重ねでも健康増進効果は得られる
筋トレはジムに行く人のもの腕立て伏せやスクワットなど自重の運動も筋トレ。週2〜3日が推奨
目安を満たさないとだめ推奨事項はあくまでも目安。望ましい量は人それぞれ

この記事でいちばんお伝えしたいこと。

まず座っている時間を区切ること(例えば30分ごとに立つ)。そして今より1日10分、体を動かす時間を増やすこと。8,000歩はそのあとで目指せば十分です。

2. 国の目安は、5つだけ

ガイドが成人に示している推奨事項は、次のとおりです。

成人の身体活動の目安(2023年のガイド) 個人差を踏まえ、強度や量を調整し、可能なものから取り組む 基本:今よりも少しでも多く身体を動かす 身体活動 歩行などを1日60分以上 1日約8,000歩以上に相当 運動 息が弾み汗をかく程度を週60分以上 週4メッツ・時以上 筋力トレーニング 週2〜3日 自重の腕立て伏せやスクワットも含む 座位行動(新しく追加) 座りっぱなしが長くなりすぎない ように注意する 高齢者は、身体活動を1日40分以上(1日約6,000歩以上)が目安です。 出典:厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」推奨事項一覧・成人版

「メッツ」は活動の強さの単位で、安静に座っている状態が1メッツ、歩行が3メッツに相当します。

根拠は、生活習慣病の発症予防に効果のある身体活動量を調べた研究のまとめです。身体活動量が多いほど、病気の発症や死亡のリスクが低いという関係が見られ、ガイドは特に、推奨値(週23メッツ・時)程度までは大きなリスク低下が期待できるとしています。

ただし、ガイドはこうも書いています。「健康のためには、成人であれば必ず推奨事項を満たす必要がありますか?」という問いへの答えは「ありません」。「推奨事項はあくまでも目安と考えてください。」

3. 8,000歩の中身と、女性の現状

8,000歩という数字の内訳も、ガイドに書かれています。

では、実際にはどのくらい歩いているのでしょうか。令和元年の国民健康・栄養調査では、20歳以上の歩数の平均は男性6,793歩、女性5,832歩でした。そして男女ともに年々低下傾向にあると書かれています。

運動の習慣(1回30分以上の運動を週2回以上、1年以上続けている)がある人も、男性33.4%に対し、女性は25.1%。女性のおよそ4人に3人は、運動の習慣がありません。

4.【核心】「座りすぎ」が新しく加わった理由

2023年のガイドの大きな変更点が、「座位行動」という考え方です。ガイドは座位行動をこう定義しています。

座位行動とは、「座位や臥位の状態で行われる、エネルギー消費が1.5メッツ以下の全ての覚醒中の行動」で、例えばデスクワーク、座ったり寝ころんだりしてテレビやスマートフォンを見ることなど。

なぜ加わったのか。座位時間と死亡リスクの関係を調べた34件のコホート研究のまとめで、座っている時間が長いほど死亡リスクが高くなることが報告されているからです。

そして日本人は、座る時間が長い国民です。平成25年の国民健康・栄養調査では、平日に1日8時間以上座っていると答えた人は、男性38%、女性33%でした。世界20か国の調査でも、日本人の座位時間は世界的にみてかなり長いと報告されています。

女性の平日1日の座っている時間 平成25年国民健康・栄養調査(ガイドの図4から女性の値) 10時間以上 20% 8〜10時間未満 13% 6〜8時間未満 19% 4〜6時間未満 26% 2〜4時間未満 17% 1分〜2時間未満 5% 8時間以上座っている女性は、合わせて33%(男性は38%)。 およそ3人に1人です。 出典:厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」成人版 図4(平成25年国民健康・栄養調査より作図)

女性の「0分」は0%でした。

5. 30分ごとに、立ち上がる

座る時間を減らすといっても、デスクワークをやめるわけにはいきません。ガイドは、具体的な方法についてこう書いています。

「長時間の座位行動をできる限り頻繁に(例えば、30分ごとに)中断(ブレイク)することが、食後血糖値や中性脂肪、インスリン抵抗性などの心血管代謝疾患のリスク低下に重要であることも報告されています」

座っている時間を区切ることに意味がある、ということです。電話は立って受ける、コピーやお茶を取りに行く、30分ごとに伸びをする。そうした小さな中断が積み重なります。

また、ガイドは1日60分以上の中強度以上の身体活動によって、座位行動による死亡リスクの低下が期待できることや、強度を問わず、少しでも身体を動かすことが健康によい影響を及ぼすことも紹介しています。

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この章で扱った身体活動と座っている時間を見える化する機器です。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」は、成人に1日60分以上の身体活動(1日約8,000歩以上)を勧め、座りっぱなしの時間が長くなりすぎないように注意することを推奨しています。

※ 当サイトは、記事のなかで根拠を示したうえで推奨したものに限り広告を掲載しています。ここで紹介しているのは、タニタの活動量計 カロリズムSlim AM-122(税込6,600円)です。立ち上がりを知らせる通知機能はありませんが、メーカーは「1時間ごとの活動量の変化がわかる」グラフを備えているとしていて、座り続けた時間帯を振り返る目安になります。歩数計・活動量計は医療機器ではなく、表示される消費カロリーなどは推定値です。機器を持つこと自体が体を動かすことの代わりにはなりません。心臓や膝・腰に不安のある方、治療中の病気がある方は、9章のチェックを確認し、運動量を増やす前に主治医にご相談ください。

6. 1日10分増やすだけでも

8,000歩と聞くと、遠く感じるかもしれません。ガイドは、もっと小さな一歩の意味も書いています。

ガイドは、運動だけでなく家事(買い物・洗濯・掃除)や通勤(自転車・徒歩通勤)などの生活の場面でも体を動かすこと、家事や仕事のすきま時間に体操をすることも効果的としています。エレベーターの代わりに階段、一駅歩く、買い物は少し遠くの店へ——そうした10分の積み重ねで十分です。

7. 筋トレは週2〜3日——女性で少ない習慣

歩くことと並んで勧められているのが、筋力トレーニングを週2〜3日です。ガイドのいう筋トレは、ジムのマシンやダンベルだけではありません。自重で行う腕立て伏せやスクワットなどの運動も含まれます。

ガイドは、筋トレの実施割合は、高齢者や女性で低い傾向にあり、こうした人々はロコモティブシンドロームやフレイル、骨粗鬆症を特に発症しやすいと書いています。そのため、筋力や身体機能、骨密度の維持・改善が期待できる筋トレを積極的に勧める必要がある、としています。

そして、有酸素性の身体活動と筋トレの両方を行っている人は、どちらも行っていない人に比べて総死亡などのリスクが低く、それぞれ単独で行っている人と比べてもリスクが低い値を示したと紹介しています。「歩く」と「筋トレ」は、組み合わせることで効果が重なるということです。筋肉と骨についてはサルコペニア、骨粗鬆症、40代からの代謝と筋肉の記事でも書いています。

8. 職場と家で、座る時間を減らす

ガイドには、働く人向けの参考情報もあります。そこでは、労働者の研究から仕事中の座位行動が多いほど健康リスクは高まることが示唆されているとしたうえで、日本の職場での取り組みの例が紹介されています。

職場の環境はすぐには変えられなくても、自分の動線は変えられます。プリンターや給湯室は遠いほうを使う、打ち合わせは立って行う、昼休みに少し歩く。家では、テレビやスマートフォンを見る時間(ガイドのいう「スクリーンタイム」)が長くなりやすいので、番組の合間やCMで一度立つだけでも区切りになります。

9. 🚨 始める前の安全チェック

ガイドには「身体活動・運動を安全に行うためのポイント」があり、運動を始める前の健康チェックシートが載っています。次のような項目に当てはまる場合は、運動の前に医師に相談してください。

運動を始める前に確認したいこと(ガイドの健康チェックシートから)

・医師から「心臓病」または「高血圧」と指摘され、運動制限があるか分からない

・安静時、日常生活時、運動中などに「胸の痛み」を感じることがある(→ 医療機関を受診)

・めまいでバランスを崩すことがある、この1年間に意識を失ったことがある

・運動で悪化しそうな骨・関節・筋肉の問題がある

・慢性の病気で薬を飲んでいて、運動時に注意が必要な薬か分からない

ガイドは、運動を始めて胸の痛みや不快感、めまいや失神、動悸、くるぶしのむくみ、ふだんの活動での異常な疲れや息切れなどが出たときも、注意すべき兆候として挙げています。また、インスリンやインスリンの分泌を促す薬を使っている方は低血糖、利尿薬を飲んでいる方は脱水に注意が必要です。腰痛や膝の痛みがある方は、あらかじめ医師に相談し、低い強度・短い時間から始めてください(腰痛の記事も参考に)。高血圧・糖尿病・脂質異常症・膝の痛みがある方の運動の目安と注意点は、持病がある人の運動にまとめました。

歩く量を急に増やしたあとに、かかとやアキレス腱が痛むこともあります。理学療法ガイドラインは「急激な運動量の増加」と「靴の不適合」を危険因子に挙げています(→かかと・アキレス腱の痛み)。

最後に、この記事の要点をもう一度。

① 成人の目安は1日60分以上の身体活動(約8,000歩以上)。高齢者は40分(約6,000歩)

② 女性の平均は5,832歩。平日8時間以上座る女性は33%

③ 新たに座りすぎに注意が加わった。30分ごとに区切るのが一つの目安

④ 1日10分増やすだけでもリスクは約3%下がると推測。短い時間の積み重ねで効果あり

⑤ 筋トレは週2〜3日。女性で少ない習慣で、自重の運動でもよい

⑥ 目安はあくまでも目安。胸の痛みなどがあれば、始める前に医師へ

10. よくある質問

1日1万歩歩かないと意味がないのですか?

厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」が成人に勧めている目安は、1日60分以上の身体活動(1日約8,000歩以上に相当)です。高齢者は1日40分以上(約6,000歩以上)です。ただしガイドは、成人であれば必ず推奨事項を満たす必要があるかという問いに「ありません」と答え、推奨事項は「あくまでも目安と考えてください」としています。1日10分身体活動を増やすだけでも、生活習慣病の発症や死亡のリスクが約3%下がると推測されています。まずは今より少しでも多く歩くことから始めてください。

運動しているので、デスクワークで長く座っていても大丈夫ですか?

運動に加えて、座りっぱなしの時間にも注意してください。2023年のガイドでは、新たに座りっぱなしの時間が長くなりすぎないように注意することが推奨に加わりました。34件のコホート研究のまとめで、座っている時間が長いほど死亡リスクが高くなることが報告されています。一方で、1日60分以上の中強度以上の身体活動で、座位行動による死亡リスクの低下が期待できることも紹介されています。また、長時間座る場合は、できる限り頻繁に(例えば30分ごとに)中断することが、食後の血糖値や中性脂肪などのリスク低下に重要という報告もあります。

まとまった時間が取れません。細切れの運動でも意味がありますか?

意味があります。ガイドは、「20分以上継続しなければ効果がない」などの最短の持続時間や、「週3回以上実施しなければ効果がない」などの最低限の頻度は「ありません」としています。短い時間の積み重ねでも健康増進効果は得られ、週に1回でも健康増進効果があることが報告されています。家事(買い物・洗濯・掃除)や通勤(自転車・徒歩)、すきま時間の体操なども身体活動になります。

筋トレは、どのくらいすればいいですか?

ガイドは、成人に筋力トレーニングを週2〜3日行うことを勧めています。マシンやダンベルを使うものだけでなく、自重で行う腕立て伏せやスクワットなども含まれます。特定の部位だけでなく、胸・背中・腕・お腹・お尻・脚などの大きな筋肉を全身まんべんなく鍛え、少しずつ負荷を高めること、休息日をとることが大切とされています。筋トレをしている人の割合は高齢者や女性で低く、こうした人はロコモティブシンドロームやフレイル、骨粗鬆症になりやすいため、積極的に勧めるべきとされています。

持病がありますが、運動を始めても大丈夫ですか?

病気によっては注意が必要です。ガイドの運動開始前の健康チェックシートでは、心臓病や高血圧で運動制限があるか分からない場合、慢性の病気で運動時に注意を要する薬を飲んでいるか分からない場合は受診するよう、また安静時や運動中に胸の痛みを感じることがある場合は医療機関を受診するよう書かれています。インスリンなどで治療中の方は低血糖、利尿薬を飲んでいる方は脱水に注意が必要です。腰痛や膝痛がある方は、あらかじめ医師に相談し、低い強度・短い時間から始めてください。

参考にした主な資料

凪
なぎ先生

内科系の臨床に15年ほど携わる医師。生活習慣病・ホルモン・栄養の相談を日常的に受けています。中立性の担保と診療継続のため、ペンネームで執筆しています。→ 運営者について

この記事は健康情報の提供を目的としたものであり、診断・治療に代わるものではありません。本文で紹介した推奨事項と数値は、厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」にもとづくもので、公開時点の情報です。推奨事項は目安であり、望ましい身体活動量は健康状態や体力によって異なります。持病のある方、運動中に胸の痛み・めまい・息切れなどがある方は、運動を始める前・続ける前に医師にご相談ください。掲載内容の誤りにお気づきの際はお問い合わせからお知らせください。