1. 先に結論
| よくある思い込み | 資料の記述 |
|---|---|
| 人にうつる皮膚病 | 決してうつりません。学会は、うつらない病気であることを常に啓発している |
| 日本人にはめったにない | 人口のおよそ0.1〜0.3%。増加傾向にあり、決してまれとはいえなくなった |
| 皮膚だけの病気 | メタボリック症候群を合併しやすい。10人に1人くらいは関節炎を伴う |
| 一生よくならない | 治療で発疹が完全に消える経験は30〜70%の患者さんにみられる。長く出ない、自然に消える人もまれではない |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
乾癬はうつらない病気です。そして、カロリーのとりすぎや肥満で悪化し、メタボリック症候群を合併しやすい病気でもあります。皮膚の治療と一緒に、血圧・脂質・血糖にも目を向けてください。
2. 乾癬とは、どんな病気か
皮膚科Q&Aは、乾癬の典型的な症状を次のように説明しています。
- 銀白色の鱗屑(りんせつ、皮膚の粉)をともなう、境界のはっきりした盛り上がった赤い発疹が全身に出る
- 患者さんの90%くらいがこの症状(尋常性乾癬と呼ばれる最も多いタイプ)
- 発疹の大きさ・数・形はさまざまで、くっついて大きくなることもある
- 青壮年期に発症することが多い。ふつう内臓をおかすことはない
- かゆみは約50%の患者さんにみられる
- 爪の変形や関節炎を伴うこともある
このほか、かぜで喉が痛んだあとに雨のしずくのような小さな発疹が出る滴状乾癬、まれに発疹が全身に広がる乾癬性紅皮症、発熱やだるさとともに全身に膿をもったポツポツが出る重症の汎発性膿疱性乾癬(乾癬の1%程度・入院治療が必要)があります。
原因はまだ完全にはわかっていませんが、乾癬になりやすい遺伝的な素因に、不規則な生活や食事、ストレス、肥満、感染症、特殊な薬剤などの環境の要因が加わって発症すると言われています。日本では、家族の中で発症する割合は4〜5%で、欧米(20〜40%)よりずっと低いとされています。
3.【核心】決してうつらない。こすれる場所に出やすい
「決してうつりません。」(日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「乾癬」Q4)
皮膚科Q&Aは、乾癬の患者さんは発疹を見られることで周囲の視線を意識して生活していること、その意味で乾癬はきわめて社会的な病気で、生活の質が下がっていることを書いています。「うつらない」という情報はきわめて重要だとしています。家族や職場の方にも、ぜひ知っておいてほしいことです。
紫外線で逆に悪化する患者さんもいるため、日光浴は「過度に」ならないようにと書かれています。
乾癬の発疹は全身のどこにでも出ますが、こすれる場所に出やすいのが特徴です。頭も、毛が伸びるときに皮膚をこするため、出やすい場所とされています。皮膚科Q&Aは、入浴のときに硬いタオルでこすらないこと、細いジーンズのような体を締め付ける衣類も好ましくないことを挙げています。かゆみでひっかくことも、悪化につながります。
4. 悪化させるもの・よい影響のあるもの
| 項目 | 資料の記述 |
|---|---|
| 食事・体重 | 食べ物はバランスよく、規則正しい生活を勧める。カロリーのとりすぎや肥満は乾癬を悪化させる |
| ストレス | ストレスも発疹を悪化させるので、できるだけ避ける工夫を。治療への不満もストレスになるので、納得がいくまで治療方針の説明を受けるとよい |
| 日光(紫外線) | 乾癬によい効果がある。日光浴を勧める。ただし紫外線で悪化する患者さんもいるので、過度な日光浴は避ける |
| かゆみ | 入浴、アルコールや香辛料の強い食事などで体が温まるとかゆくなることがある。かゆみ止めの飲み薬を使うこともある |
なお、乾癬のかゆみはふつう、それほど強くないとされています。かゆみがあまりに強い場合は、別の皮膚病の可能性もあるので医師に相談してください。かゆみ全般については乾燥肌とかゆみの記事で書いています。
5. 治療は4つ。組み合わせて選ぶ
乾癬は慢性で、よくなったり悪くなったりを繰り返すため、一律の治療方針はなく、病気の程度や状況に応じて治療を選びます。
| 治療 | 資料の記述 |
|---|---|
| 外用療法(塗り薬) | ふつうは塗り薬から始める。ステロイド外用薬、ビタミンD3外用薬、その両方の配合薬が主に使われる |
| 内服療法(飲み薬) | レチノイド、シクロスポリン、メトトレキサート、アプレミラストが主なもの |
| 光線療法 | ナローバンドUVB(311nm付近のごく狭い範囲の紫外線)は、手間が少なく照射時間も短く、急速に普及。ふつう週2〜3回から始める |
| 抗体療法(生物学的製剤) | 炎症物質(サイトカイン)をピンポイントで抑える注射薬。現在11種類。ほかの治療で十分でない場合などに使う。初めて使うときは学会が定める医療機関を受診する |
皮膚科Q&Aは、医師が治療を選ぶときは、慢性の病気であることを考え、患者さんの希望も聞きながら、治療効果と副作用(短期・長期)、薬剤費の負担のバランスで選んでいる、と説明しています。
そして、治療によって発疹が完全に消える経験は30〜70%の患者さんでみられ、長く発疹が出ない、あるいは自然に消える患者さんもまれではないとされています。症状がよくなったら、悪化させる要因(不規則な生活・食生活、ストレスなど)をできるだけ避けて再発を防ぐよう心がけることが勧められています。
6. 関節の痛みに注意(関節症性乾癬)
「乾癬で関節炎を伴うことがあります(乾癬の患者さんの10人に1人くらい)。」(日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「乾癬」Q14)
- 発疹の程度とは必ずしも一致しない。発疹はたいしたことがなくても、関節炎は強いことがある
- 乾癬が出てから数年後に、関節の腫れ・痛みが出てくることが多い
- 放っておくと関節が変形することもあり、たいていは全身的な治療が必要
- 手足の関節だけでなく、アキレス腱の付け根や足の裏が痛んで腫れたり、腰・背中・首が痛んだりすることもある
皮膚の症状と関節の痛みは一見関係ないように見えますが、関連している可能性もあるので、気になったら皮膚科専門医に相談するよう勧められています。かかとの痛みについてはかかと・アキレス腱の痛みの記事でも書いています。
7.【内科医の視点】メタボと一緒に考える
内科医として、ここはぜひ知っておいてほしいところです。皮膚科Q&Aは検査の説明の中で、次のように書いています。
「乾癬の患者さんは普通の方よりメタボリック症候群を合併しやすいと考えられていますので血圧、コレステロールなどの脂質検査、糖尿病などの検査も行います。」(日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「乾癬」Q10)
しかも、カロリーのとりすぎや肥満は乾癬を悪化させるとされています。つまり、体重や食事の見直しは、皮膚のためにも、血圧・脂質・血糖のためにも意味がある、ということです。乾癬と言われている方は、健診の数値にも目を向けてください(→糖尿病予備軍、家庭血圧)。
また、生物学的製剤による治療を始める場合は、通常の検査に加えて、胸の画像検査、肝炎ウイルス、結核などの検査も行われます。肝炎ウイルスの検査については肝炎ウイルス検査の記事で書いています。
8. 受診・相談したほうがよいとき
皮膚科を受診・相談したいとき
・ひじ・ひざ・頭などに、白い粉をともなう赤く盛り上がった発疹が続く
・乾癬と言われていて、関節の腫れや痛み、アキレス腱の付け根や足の裏の痛み、腰・背中・首の痛みがある
・経過中に、ふだんと違う発疹や症状が出た
・発熱やだるさとともに、全身に赤みと膿をもったポツポツが出た(重症で入院治療が必要とされる型の可能性。すぐに受診)
・今の治療に納得できない、負担が大きい(治療方針の説明を受け直す)
最後に、この記事の要点をもう一度。
① 乾癬は決してうつらない
② こすれる場所(頭・ひじ・ひざ・腰まわり)に出やすい。硬いタオルや締め付ける服は避ける
③ カロリーのとりすぎや肥満で悪化。メタボリック症候群を合併しやすい
④ 治療は塗り薬・飲み薬・光線療法・生物学的製剤の4つを組み合わせる
⑤ 10人に1人くらいに関節炎。発疹が軽くても関節炎が強いことがある
9. よくある質問
乾癬は人にうつりますか?
日本皮膚科学会の皮膚科Q&Aは、乾癬は決してうつらないと明言しています。乾癬の患者さんは発疹を見られることで周囲の視線を意識して生活しており、うつらないという情報はきわめて重要だとして、学会は一般社会に向けて常に啓発しています。
乾癬は、どんな場所に出やすいですか?
皮膚科Q&Aによると、乾癬の発疹は全身のどこにでも出ますが、こすれる場所に出やすく、ひじ、ひざ、腰まわりなどが代表的です。頭も、毛が伸びるときに皮膚をこするため出やすい場所です。入浴時に硬いタオルでこすることや、体を締め付ける衣類は好ましくないとされています。
食事や体重は乾癬に関係しますか?
皮膚科Q&Aは、食べ物はバランスよく、規則正しい生活を勧め、カロリーのとりすぎや肥満は乾癬を悪化させるとしています。また、乾癬の患者さんはメタボリック症候群を合併しやすいと考えられているため、血圧、脂質、糖尿病などの検査も行われます。
乾癬はよくなりますか?
皮膚科Q&Aによると、乾癬は慢性で発疹を繰り返す病気ですが、治療によって発疹が完全に消える経験は30〜70%の患者さんでみられ、長期にわたって発疹が出ない、あるいは自然に消える患者さんもまれではないとされています。症状がよくなったら、悪化させる要因をできるだけ避けて再発を防ぐことが勧められています。
乾癬で関節が痛くなることはありますか?
皮膚科Q&Aによると、乾癬の患者さんの10人に1人くらいに関節炎がみられます(関節症性乾癬)。発疹の程度とは必ずしも一致せず、乾癬が出てから数年後に起こることが多く、アキレス腱の付け根や足の裏、腰・背中・首が痛むこともあります。放置すると関節が変形することもあるため、気になったら皮膚科専門医に相談してください。
参考にした主な資料
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「乾癬」(Q1〜Q16)