1. 先に結論
| 知っておきたいこと | 消費者安全調査委員会・厚生労働省の資料 |
|---|---|
| HIFUとは | 高密度焦点式超音波。集束超音波の熱エネルギーで体内の組織を高温に加熱する。前立腺がん治療などに使われる技術を美容に転用したもの |
| 報告された事故 | 顔の麻痺、急性白内障などの視力障害、熱傷(やけど)。事故の70%が顔 |
| 事故の原因 | 照射出力が高く安全上信頼性の低い機器を、解剖学や出力・照射方法の調整の知識が不十分な人が使った |
| 2024年の見解 | 機器が医療用かどうかを問わず、医師免許を持たない人が業として行えば医師法第17条に違反(厚生労働省) |
| 承認された機器 | 2023年3月31日時点で、美容目的で使うために国内で承認されたHIFU機器は存在しない(厚生労働省) |
この記事でいちばんお伝えしたいこと。
消費者安全調査委員会は、HIFU施術を「機器の出力や照射方法が適切に行われなければ、特に顔の神経障害を起こすリスクがある難しい施術」としています。厚生労働省は2024年6月、HIFU施術は医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為で、医師による施術は医療提供施設で行うこととしました。
2. HIFUとは——集束させた超音波で、体内を加熱する
HIFUは、High Intensity Focused Ultrasound(高密度焦点式超音波)の略です。消費者安全調査委員会の報告書では、次のように説明されています。
- 集束超音波の熱エネルギーにより、体内の組織を高温に加熱するもの。前立腺がん治療などに用いられ、美容で用いられるものはその治療の技術を転用したもの
- 集束超音波とは、カートリッジ内から出る超音波を、レンズで焦点を合わせるように一定の深さで集束させるもの
- カートリッジの先端部を皮膚に当て、プローブを手に持って動かして行う。先端部と皮膚の間に空間があると適切に照射できないため、ジェルを塗って密着させる
- 美容に用いるHIFUは、主にSMAS筋膜(皮下にある顔面軟部組織を支える筋膜)への照射をターゲットとしている。顔には神経が張り巡らされており、SMAS筋膜の下には多くの神経がある
シワ・タルミの美容医療の指針では、HIFUの副作用として瘢痕形成と神経麻痺が挙げられています(→シワ・タルミの美容医療の記事)。
3. どこで行われてきたか
| 場所 | 消費者安全調査委員会の記述 |
|---|---|
| 美容クリニック | 医療機関。輸入代行業者を通して、未承認の医療機器として医師が個人輸入している |
| エステサロン | エステティシャンが施術する。使われているHIFU機器は、医療機器ではない製品(雑品)として輸入されていると推定される |
| セルフエステ | 店舗に置かれたHIFU機器を、利用者自らが扱う |
| 自宅など | 利用者自らが施術することもある |
出典:消費者安全調査委員会「エステサロン等でのHIFU(ハイフ)による事故」事故等原因調査報告書 概要(2023年3月29日)をもとに整理。
報告書によると、国民生活センターは2017年に、皮下組織に熱作用を加え危害を及ぼすHIFU施術をエステサロン等で受けないよう注意喚起しました。これを受けてエステティック業界の主要団体は、加盟店でHIFU施術を行わないこととしました。しかし、団体の加盟店はエステサロン全体の1割以下と推測され、未加盟のエステサロン等では施術が続き、神経・感覚の障害や熱傷などの被害も報告されていました。
4.【核心】報告された事故——顔の麻痺、視力障害、やけど
報告書によると、事故情報データバンクでは、2015年に初めてHIFUによる事故が登録されてから増加傾向にあり、特にエステサロンでの事故はその傾向が顕著です。
| 項目 | 消費者安全調査委員会の記述 |
|---|---|
| 部位 | 顔への事故が70%。神経・感覚の障害は全て顔で発生 |
| 長引く障害 | 傷病の程度が1か月以上の事故の割合は、「神経・感覚の障害」が15件中8件(53.3%)と最も高い |
| きっかけ | HIFUによる施術のあと、顔の一部にしびれや引きつれが生じ、三叉神経の麻痺と診断されたという申出 |
出典:消費者安全調査委員会「エステサロン等でのHIFU(ハイフ)による事故」報告書概要(2023年3月29日)をもとに整理。
報告書には、事故情報データバンクから次のような事例が抜粋されています。
- 3か月前に施術を受け、顔面の一部に麻痺症状が残った。右の上唇、口角が伸び切った感じで麻痺していた
- 4か月前に9回目を受け、いつもより痛みがあった。しびれで下を向くとよだれが垂れる。2か月たっても右口角の麻痺が消えない
- 5回目の施術直後から顔面に違和感。鼻の脇に直径1.5センチほどの水膨れができ、II度の熱傷と診断。皮膚が陥没し、紅斑となり色素沈着して跡が残っている
- 目の上側と下側にもプローブを当てた。施術の3〜4時間後に左目にもやがかかったような違和感があり、翌日には目の中心部がかすんで白くぼやけた。大学病院で受診し、手術を受けた
- フェイスラインがやけど跡のように細かいシワのたるみになり、時間がたっても消えるものではないと言われた
報告書は、顔の施術で長期間の麻痺や視力障害が発生したり、跡が残って精神的ショックを受けたりするとまとめています。
5. なぜ事故が起きたのか
消費者安全調査委員会は、実際の機器を使った照射実験、利用者1,000名・施術者269名へのアンケート、シミュレーション解析を行いました。
| 調べたこと | わかったこと |
|---|---|
| 機器(照射実験) | エステサロン、セルフエステ、美容クリニックの機器の間で、照射能力に差は確認できなかった。エステサロン等で使う機器に照射出力の高い機器があった。同じ箇所に照射し続けると焦点周囲の温度が上がった |
| 施術(アンケート) | 施術者への機器や施術の教育が十分でない。利用者への説明が十分でない。利用者の約6割がHIFU施術のリスクを認識していない。利用者の約1割が、施術後に痛みや違和感があった |
| 体への影響(解析) | 適切な出力や照射方法で施術しないと、体への熱影響が大きくなる可能性。プローブを固定して照射を繰り返したり、動かす速さが遅かったりすると、熱影響が指数関数的に増加する。SMAS筋膜の周囲にも熱影響を及ぼし、神経障害を起こすリスクがある |
| 施術者 | エステティシャンには資格規制がなく、人体の解剖学的知識を持たない人が施術を行っていると推定される |
| 機器の信頼性 | 超音波の照射状況や機器の故障を施術者が把握できないものがあり、本来推奨される出力より高い出力で照射してしまうリスクがある |
出典:消費者安全調査委員会「エステサロン等でのHIFU(ハイフ)による事故」報告書概要(2023年3月29日)の「実態調査」「生体への影響」「事故等の原因」をもとに整理。
報告書は、事故の直接原因を、照射出力が高く安全上信頼性の低い機器を用い、施術に必要な解剖学や、出力・照射方法の調整に関する知識の不十分な者が行った結果、熱傷や神経障害などに至ったものと認めています。また、体への熱影響を抑えながら有効性を期待するには、機器の設定出力や照射方法を狭い範囲で適切に行わなければならない難しい施術だとしています。
6. 2024年、厚生労働省の見解
報告書は、HIFU施術は施術者を法規制により医師などに限定することが必要だとして、厚生労働大臣、経済産業大臣、消費者庁長官に意見を述べました。これを受けて厚生労働省は、次の通知を出しています。
| 通知 | 内容 |
|---|---|
| 2023年3月31日 (機器の監視指導) | HIFUを照射して、しわ・たるみの改善や痩身の効果を得られると標ぼうするなど、人の身体の構造・機能に影響を及ぼすことを目的とする機械器具は医療機器に該当する。この時点で、美容目的で使うために国内で承認されたHIFU機器は存在しない |
| 2024年6月7日 (医師法の適用) | 用いる機器が医療用かどうかを問わず、HIFUを人体に照射し、細胞に熱凝固を起こさせ得る行為は、医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為で、医師免許を持たない人が業として行えば医師法第17条に違反する。熱凝固には、熱傷、急性白内障、神経障害などの合併症だけでなく、施術が目的とする顔・体の引き締めやシワ改善なども含む |
| 実施場所 | 医師による施術は、医療法に規定する医療提供施設で行うこと |
出典:厚生労働省「HIFUに関する監視指導の徹底について」(2023年3月31日)、「医師免許を有しない者が行った高密度焦点式超音波を用いた施術について」(2024年6月7日)。消費者安全調査委員会の第1回フォローアップ資料(2024年6月20日)に参考資料として掲載。
7. 施術を考えている人へ
資料からわかることを、施術を受ける側の目線で並べます。
- 2024年の厚生労働省の見解では、エステサロンやセルフエステで、医師以外の人がHIFU施術を業として行うことは医師法違反にあたる
- HIFUは、出力や照射方法が適切でなければ、特に顔の神経障害を起こすリスクがある難しい施術とされている
- 2023年3月31日時点で、美容目的で承認されたHIFU機器は国内にない。美容クリニックで使われる機器も、未承認の医療機器として医師が個人輸入しているもの
未承認の機器や薬を使う美容医療で、施術前に確認したいことはシワ・タルミの美容医療の記事、契約のトラブルと相談先は美容医療のトラブルの記事で書いています。
最後に、この記事の要点をもう一度。
① HIFUは、集束させた超音波で体内の組織を高温に加熱する。顔にはSMAS筋膜の下に多くの神経がある
② エステサロン等で、顔の麻痺、急性白内障、やけどの事故。事故の70%が顔
③ 原因は、出力の高い信頼性の低い機器と、知識の不十分な施術者
④ 2024年から、医師免許のない人が業として行えば医師法違反
⑤ 美容目的で国内承認されたHIFU機器はない(2023年3月時点)
セルフエステで自分で機器を当てて起きた危害や、契約・解約のトラブルについては、セルフエステの記事で国民生活センターの資料を整理しています。
8. よくある質問
エステサロンでHIFUを受けてもいいですか?
厚生労働省は2024年6月、用いる機器が医療用かどうかを問わず、HIFUを人体に照射して細胞に熱凝固を起こさせ得る行為は、医師免許を持たない人が業として行えば医師法第17条に違反するという見解を示しています。医師による施術は医療提供施設で行うこととされています。
HIFUでは、どんな事故が起きていますか?
消費者安全調査委員会の報告書では、顔の麻痺、急性白内障、熱傷(やけど)などの事例が報告されています。事故の70%が顔で、神経・感覚の障害は全て顔で発生していました。
セルフエステで自分でHIFUを当てるなら大丈夫ですか?
消費者安全調査委員会の照射実験では、エステサロン、セルフエステ、美容クリニックで使われている機器の間で照射能力に差は確認できませんでした。報告書は、HIFU施術は出力や照射方法が適切に行われなければ、特に顔の神経障害を起こすリスクがある難しい施術だとしています。
美容クリニックで使われているHIFU機器は、国内で承認されていますか?
厚生労働省によると、2023年3月31日時点で、美容目的で使用されるために国内で承認されたHIFU機器は存在しません。消費者安全調査委員会の報告書では、美容クリニックでは輸入代行業者を通して、未承認の医療機器として医師が個人輸入しているとされています。
参考にした主な資料
- 消費者安全調査委員会「エステサロン等でのHIFU(ハイフ)による事故」事故等原因調査報告書 概要・意見(2023年3月29日)
- 厚生労働省「医師免許を有しない者が行った高密度焦点式超音波を用いた施術について」(2024年6月7日)、「HIFUに関する監視指導の徹底について」(2023年3月31日)(消費者安全調査委員会 第1回フォローアップ資料に掲載)